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Yutaro Kawashima
2020年8月27日 00:51
窓枠を一羽の小鳥が横切ったのを見た。そのことを皮切りに、あとにつづく小鳥たちの数をかぞえてみようと謂われのない遊びをぼくは始めていたが、そのあと一羽も現れなかった。あのはじめの一羽も遊びに含まれることがない。 ライブハウスのお酒を受けとるところで、知り合いのMがぼくと久しぶりに会うなり手を差しだしてきた。一瞬のことだったので、咄嗟にかれの手を握ったが、そういった挨拶の仕方があったことを、ぼく
2021年6月1日 05:20
彼の目は哀しみで敏感になり 草や葉が一瞬一瞬伸びていくのがわかる。 『自殺』[*1]という文庫本の中で、ロバート・グレーヴスという詩人の「失恋」と題された詩が紹介されていた。このとき、この詩をぼくが読んでいた。 映画を見終わったあと、あるいは見ている最中に、その映画の内容から影響を受けたとおぼしき言葉をさりげなく発したり、目を爛々とさせたりするかれが、しかし行為には移さないと決まっ
2020年9月9日 02:46
『ルナアルの言葉』(ジュール・ルナール、翻訳:内藤濯)を読む。そのなかの日記の一節に、「用意周到とは、恐怖を婉曲に言いまわしただけのこと」だと書かれていた。用意周到なもの、これは「死」を意味していると感じたが、ぼくが感じたのか、先ずは五歳なら、五歳でその頃の、ぼくに訊いてください、ぼくには訊けないし、ぼくは死なないのかもしれない。追記:「用意周到なもの」と「死」とを安易に結びつけたと思った。た
2020年8月30日 13:39
電車の座席から、立ち上がっただけの彼が落としたどこかの地図があった。小さく何回も折りたたまれていて、それは皺だらけになっていた。 開こうとして、ぼくの手のかたちは何度か改められた。 まだ内容にはたどり着かない、ただただ、開くとき。展開していくときの、代え難い様相。そんなところでも彼と結ばれた、そのような心地があった。 明日にでも死ねると言う、彼がこれから誰かに似てくることがあってはなら
2020年8月27日 19:14
暑がりな友人の部屋で目を覚ます。この日、ぼくに予定はなかったので、友人が決めた時間に目覚ましが鳴り、窓の外からは工事中の隣家に設けられた足場をぎしぎしと踏み歩く音や、手ほどきをうけるひとたちのやりとりが聞こえてくる。 頭のうえをすばやく向こうのビルのほうへ鳩が飛んでいく。ぼくも体任せ。 道行くひとの後ろ姿をやみくもに目で追っていたりして、その目が木漏れ日や薄日が差すところに気がつけばそのこ
2020年8月27日 12:04
自宅の屋根の上で父と一緒にした日光浴の最中に、血縁を感じた子どもが自分であって、そのとき隣にいた弟では決してなかった。 何もするつもりがないのに、気がつくと目蓋が痙攣している。 今になって思うと催された場所がどの辺りだったかのかがわかる。小さい頃、海の近くで移動サーカスを見た。祖父に連れられて行った。赤と白の縞模様をしたテントが張ってあり、ぼくの隣にいたのがどうして祖父だったのだろうと思