見出し画像

2023年5月に読んでいない本

僕が全然本を読まない/読む体力がない,というのはとりわけ重大な僕の特徴.(もちろんこの発言が自己呈示の内在化を促しているんじゃないかという懸念もある)
文芸・実用書・ビジネス書・教養書など,ジャンル問わず全然読むことがない.人生で一番読んだジャンルは間違いなく教科書・学習参考書である.

ただ,知識を得たり物を考えたりすることは確実に好きで,本を読みたいという気持ちもあるわけだ.正しくは「本を読まずに本の知識を得たい」.その証左として,読みたい本を記録することだってある.

本を手に取ることもある.この1年に言及すると,少しでも読んだ本を数えれば20数冊.ただ基本見開き1ページ,高々15ページ読めれば十分.疲れて終了してしまう.本を読む意欲は完璧,文章を読む体力だけが足りていない.

さて,世の中の話をすると,それはもうたくさんの書評であふれている.書評家や文芸評論家のみならず,Twitterやはてなブログでどんな人でも書評や感想を発表することができる時代だ.読書に参入できない僕を無視して,世界は当然のように本を産み,本を読み,本の感想を言っている.
万人が書評をできるこの時代で,やはり名高いのは「〇〇年〇月に読んだ本をふりかえる」といったタイトルのブログ記事.そこらの一般人がある月に読んだ本の感想がブログになってしまうわけだ.手軽に世界に情報を発信できることのすさまじさが現れている.

一方僕には「〇〇年〇月に読んだ本をふりかえる」ことなど当然不可能.「人生で読んだ本をふりかえる」くらいでやっとちょうどいい文量になる.じゃあもう僕がこの世界に立ち入る方法はないのか,知識は好きでも本は読めないから.
否,読んでない本のでっちあげの感想を書けばよい.

そんなわけで,今回のタイトル,「2023年5月に読んでいない本」.気になっている本について,読んだと仮定して感想を書く.読んでいないので嘘の内容も書くこともあり.とはいえ,フォーマットはしっかりと「2023年5月に読んだ本」.感想を記しておいて「実は読んでない」などと口走るわけにはいかないからだ.

インターネットとかいうおびただしい情報の濁流のなかを生きる時代.僕たち人間にできることは,虚構をつくり,信じ,楽しむこと.
ということで,ここからは,みなさん気持ちを入れ替えて.一般人の読書記録をご覧ください.


2023年5月に読んだ本

2023年も6月に差し掛かった.ちらほらと暑い日が頭角を現し始めている.暑かろうが寒かろうが,知識は年中人の心を満たしてくれるから素晴らしい.

今月は4冊読んだ.以下.

『Self-Reference ENGINE』
『ユリイカ2020年6月号 特集=地図の世界』
『中澤系歌集 uta0001.txt』
『デッドマウント・デスプレイ(11)』

『Self-Reference ENGINE』 円城塔

1つ目はこちら.円城塔という作家の代表的なSF作品.彼は博士(学術)の学位を取得したあとポスドクとして数年間働いていた過去を持つからか,作家としての文体も,学術論文の香りがほのかに感じられるかなり淡白で整然としたものである.表紙に惹かれて手に取った訳だが,内容もかなりスタイリッシュだった.そこそこ難解な部分もあるがなぜか読みやすい嘘のようなつくりだ.僕はSF作品の「理屈で遊んでいる感じ」が好きなのだが,この作品はその要素が多く含まれており,素晴らしい読書体験ができた.
全編を通して主人公は固定,14歳の少女であり,近未来のディストピアを舞台とした物語.ところが,数十ページにわたる抽象的な話だけのモノローグの章が1つだけあり,はじめに読んだときには衝撃を受けたわけだが,読み進めるとこの章の存在がメタ的に効いていることがわかる.ここら辺の快感は是非皆さんも読んで感じていただきたいという意味で,人にも薦められる1冊であった.

『ユリイカ2020年6月号 特集=地図の世界』

ユリイカという,カルチャー全般をいろいろと扱う雑誌.バックナンバーを眺めていて気になったので読んでみた.
今や皆が地図アプリという形で地図を持っているが,「地図をつくる」という課題は数百年前まではとてつもなく大変で重要な課題だったわけだ.地図作りの歴史をザッと辿ることができて結構楽しかった.一方でゲーム内の地図や架空地図の話も取り上げられていて,この徹底した態度こそが雑誌『ユリイカ』の信頼感・安定感の源泉である.

おすすめ


『中澤系歌集 uta0001.txt』 中澤系

難病を患い38歳で世を去った歌人,中澤系の唯一の歌集.この歌集の作品を定期的に投下するTwitterのbotで気になってはいたので一通り読んでみましょうということで.作風は,Wikipedia曰く「ディストピア的なシステム社会を描いた作風」.社会システムを冷めた語り口で描写しながら,時々言葉遊びもある,確かにそんな感じ.
歌集だからテンポよく読み進められる一方で,気になるものがあれば何度も読み返すみたいなことも気軽にできてしまう.Twitterで1首ずつしか摂取していなかった作品たちを200ページにわたって一挙に摂取できて満足.

『デッドマウント・デスプレイ(11)』 成田良悟

昨年12月に銭湯に行ったときにくつろぎスペースで見つけた漫画『デッドマウント・デスプレイ』の最新刊.異世界転生の超能力系.今気づいたことだが,11巻の説明をしようとするとそれ以前の説明をしなければならずかなり面倒だ.全体の話をせねば.主人公が異世界の死神のようなものを討伐するお話といったらそれまでなのだが,異世界と実世界の行き来を死神も行うし,異世界と実世界両方での人間関係が並行して進むので飽きがない.8巻からはサブキャラクターの話が中心だったがこの11巻で主人公に戻ってきて,今にも伏線が回収されようとしている雰囲気.

以上,5月に読んだ本.小説・雑誌・歌集・漫画なので本当に4冊か?という感じもあるが.今月は積読本の消化を頑張ろうかなと思っている次第.気が向いたら,今月も読んだ本をまとめるかも...…


以上,「2023年5月に読んでいない本」.内容は知らないので全くのデタラメもあるでしょう.書名・著者名・Amazonリンク・本の存在くらいが信用できる情報でそれ以外は全て嘘だと思って構わない.というか本当にデタラメなのかどうかの確認もしていないから真実が含まれているかもしれない.
デタラメ感想を書くときは本の内容をどう記述しようかに気を取られがちだが,(それっぽく見せるために)意外と重要なのは,なぜ手に取ったか・以前の読書体験などの本の内容とは直接関係しない情報なんじゃないかと気づき始めたものの,それがまた難しい.デタラメ読書記録をつくるためには,デタラメ人生記録を作らなければいけなくなる.「嘘をついてはいけない」という倫理観のはじまりはこういうことか.皆さんお気をつけて.

ところで,本を読めない僕でも,写真を撮るのは好きだ.嘘をつくのに疲弊したので,「2023年5月に撮った写真」を何枚か提示して,この記事を終わりにしよう.


2023年5月に撮った写真

5月に撮った写真の中から適当に何枚かをピックアップした.特に解説とかはせず,雑に.

頑張るとこういう場所も見つかる,結構うまくいった
まあこれは4月ですけども
長時間露光っていうやつ
道路改修工事とかのあれこれでセンターラインがおかしくなるパターンのやつ
さっきのとこれの2枚はフィルムカメラ

こんな具合で,本腰を入れて準備して究極の1枚を!という感じではなく,雑に撮る態度でやっている.
あっという間に今年も6月になってしまった.今月は雨の写真が増えるでしょうというのはもう毎年恒例.雨は面倒だが雨の日の繁華街とかの写真はとても好きだ.気が向いたら6月写真まとめもやるかも……


本や写真の雑多な陳列を乗り越えてここまでたどり着いたあなたへ、別れの挨拶

本の読めない僕による本紹介と,写真を撮る僕による写真紹介をしてきました.いかがでしたか.やる気とかエネルギーがなかなか持続しないタイプの人間としては,やっぱり読書より写真の方が楽しくなってしまうものです.写真を撮るのには気合いがいらないし一瞬で終わるし.
普段は何もしていない,ダラダラと音楽を聴いたりTwitterを見たりしているだけで,文章も書かない僕ですが,「2023年5月に読んでいない本」というフレーズが脳内にふと現れたので,どうにか頑張ってやってみました.書き始めは,読んでない本だけ紹介してズバッと終える予定でしたが,気の迷いで写真を載せることになり,結局なんだかよくわからない記事になったようです.まあとりあえず僕の試みはこれにて終了.

最後にひとつ.
僕がデタラメ読書記録と称して紹介した本は,本当は全部実際に読んだものかもしれない.実は写真も何枚かはインターネットの海から引っ張ってきただけかもしれない.生成されたものかもしれない.そもそも僕が本を読まない/読めない性格だなんて嘘かもしれないわけです.でもそんなことを言ったって,実際どっちかは確かめようがない.最近の世界のトピックですね.じゃあ世界は嘘だらけになって崩壊していくのかというとそんなことはなくて,多分,真偽がどうでもよくても楽しいコンテンツが増えていくということ.
突然なんなんだとお思いになっていることでしょう.

とろける時代の遊びを少しやってみたのです.果たして,成立しているでしょうか?
それではみなさん,ご自愛専一にて.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?