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シェアド・リーダーシップ開発の実際—  「著者に聞く」(2)

インタビュー記事テキストの公開

『シェアド・リーダーシップ入門』の発行元である国際文献社より、発行記念のインタビューをうけました。以下で紹介する記事PDFは、国際文献社のWebサイトで全文公開されています。国際文献社の公開ページはこちら
国際文献社の許可を得て、記事テキストを紹介いたします。今回はVol.1の後半部分です。

著者 経営情報学博士 最上雄太

シェアド・リーダーシップの開発とは

――ここから、話題を変え、シェアド・リーダーシップの開発に関連した内容をうかがいます。シェアド・リーダーシップの開発をすでに進めていると聞きました。実際どのように行われているのでしょう?

最上氏 シェアド・リーダーシップ開発は、なんらかのチームのプロジェクトと並行して行ないます。たとえば、『入門』に出てくる挑戦者の会では業務改善プロジェクト、現在教育支援が進行中の株式会社コンピュータシステム研究所 (CST社)では後継者育成と新事業開発です。チームの取り組みを進めながら、一人一人にリーダーとしての自覚を促し、主体的かつ自律的に個人が躍動するチームを作り、それを全社組織に波及させていくスキームを埋め込んでいきます。

――従来の教育との違いは?

最上氏 従来の人材教育は、成果を念頭に置き、成果を実現する人材として不足点を改善・教育していきます。一方、シェアド・リーダーシップ開発では、成果を念頭に置きますが、個人の主体性や自律性を養成するため、ダイアローグの関係構築を重視します。ダイアローグの関係とは、モノローグ組織と相反し、あるテーマについて、忖度や遠慮をせずに言うべきことを言い合える人間関係を指します。ダイアローグを通じて、自分で何が必要かを考え、自分でやってみることを推奨していきます。講師はトレーニーの個人としての自立をただサポートするファシリテーター的な存在になります。


――難しい点は?

最上氏 個人が本当の意味で自律的に動く状態をつくることです。これが、実に難しい。指示を出されれば素直に動きますが、指示を出さなければ動かないというのがよくある状況ではないでしょうか。指示を待ち、余計なことはしない。組織のなかで長く働いていると、どうしても、個人の考えがどんどん小さくなっていきます。そういう人たちが、何かをやってみたいと思えるように、様々な仕掛けを投じていきます。

――『入門』では、「シェアド・リーダーシップをつくる5つの戦略」として仕掛けが紹介されていますね。重要な仕掛けの一つがSNSということでしょうか?

最上氏 そうです。しかし、ただ単にSNSを導入しただけではうまく行きません。あくまでツールに過ぎないので。SNSに書き込みやすくする、という支援も必要だし、まず、文字で書いて、自分の意思や心情を表明したいという意欲をかきたてる支援もあらためて必要です。

 最初はほとんどの皆さんが率直に自分を語ることを躊躇します。自分を主語にして語ることに慣れてないからです。これを、時間をかけてときほぐし、言うべきことをフラットに言える状態に持っていく、そのためにいろんなことを試してみる、そういう支援のやり方になります。


――シェアド・リーダーシップ開発について今後の展望は?

最上氏 現在『入門』が出て一カ月経ったところですが(取材時)、シェアド・リーダーシップがよくわかった、という反応をたくさんいただいています。シェアド・リーダーシップがどんなものかを正しく広めていく、入口に立てたかなと思っているところです。Z支社やCST社など、これから実績を出して行く中で、同じような取り組みをしたいという方が増えていくといいなと思います。この取り組みが確かに個人を変える、組織を変える、という手応えを感じたら、それができる人たちを作っていく、支援する仕組みを作っていく、それを広げていく人たちを育成する、ということをやりたいと思っています。


――普及に力を入れていくということですね?

最上氏 そうです。開発の実際はこうあるべき、というものはまだ示されておらず、研究もまだ少ない状態です。日本で事例を蓄積しているというのはまだないはず。そういう意味では、最先端の開発をやっているという自負はあります。まだ、わからないことだらけで、今後やって行くことが開発の実績になって行くのだろうな、という風に考えています。


――ありがとうございました。『入門』を通じシェアド・リーダーシップに関心を持つビジネスパーソンが増え、理解が深まっていくことを願っております。次回Vol.2「顧客に聞く」では、シェアド・リーダーシップ開発を行っている組織の代表者、担当者に、シェアド・リーダーシップ開発を行うに至る背景や苦労話をうかがいます。どうぞお楽しみに。


著者 経営情報学博士 最上雄太

『シェアド・リーダーシップ入門』Amazonにて販売中


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