読んだ:世界はシンプルなほど正しい

確か、昨年末に購入したと記憶しているが、ようやく読み終えた。大体3ヶ月位かかった。

内容は、理論やモデルの重要さ、それらがシンプルなほどツールとして強力であること、理論は必ずしも真理ではない場合でも有用であれば良いことを説いている。

全く正しくないけど、理解には役立つ例え話

時々、物事を分かりやすく例えることに対して異論が出ることがある。それは、〜〜の話であって、この事例や理論とは全く一致していない。

具体的には、自身の経験では空間多重技術であるMU-MIMOやSU-MIMOを寿司と皿と客に例えて以下のように話したことがあった。

  • 寿司の貫数:レイヤ数

  • 寿司職人が一度に握れる貫数:MU-MIMOの最大レイヤ数

  • 一皿に乗せる貫数:ユーザあたりのレイヤ数

  • 客の数:ユーザ数

  • 皿の数:同時多重可能なユーザ数

SU-MIMOは、皿の数は1枚しかなく、そこに幾つの寿司を乗せられるかという例えになる。
MU-MIMOは、例えばお客さんが4人いて、皿が4皿あって、寿司は8貫あって1皿あたり2貫まで乗せる、と言ったように、1ユーザあたり2レイヤを多重し、最大8レイヤのMU-MIMOを行う様子を例えられる。

これは、本質的には全く違っている。思考の補助線の引き方として、ある程度分かり易くなるならば、他の例で例えるというのは有用と言えるかもしれない。

この本自体はシンプルだけど読みづらい

なお、この本を読み終わるのに時間がかかったのは、とても読みづらい点にある。

主張はすごくシンプルに見える。英題の通り、”LIFE IS SIMPLE” を説いている。
何故そう言えるのかを説明することに非常にフラットな歴史的事実を書き連ねている。

話は、地動説よりも前に遡り、いわゆる宗教的な考え方と科学的な考えに境がなかった時代から話が始まる。当然、我々の常識とはかけ離れた世界で起こっていた状況を淡々と述べる。
特に筆者の強い主張もなく、読み手に「それがいかにおかしな事か」を考えさせる文体である。

これまで読んでいる書籍が、いかに主張に基づいた論理的な構造に基づいて「読み易く」なっているかに気付かされる。

読解力の衰え

それでも、最近は読む速度がどんどん遅くなっているように感じる。
おそらく、他者の主張に対して、それを額面通り読解する能力が落ちてきている。それは、自分の経験や知識に引っ張られて新たな知識や考え方を受け入れるのにタイムラグを要しているからのように感じる。

また、ネットでの読みやすい記事やビデオに引っ張られているのもあるだろうし、検索エンジンのアルゴリズムによる「心地いい情報」のみが知らずに取り込まれている事もあるだろう。

たまには、なるべくフラットに事実だけを述べている文章を読み、その中身を吟味して理解するトレーニングをした方が良さそうだと感じた。


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