眠れない時の小話

眠れないので文字を書くことにした。僕は星を見るのが好きだ。暗い空を埋め尽くすほど賑やかにしてる、みんな同じに見えるけどみんな違う星。何年も何光年もかけて僕らの目に飛び込んできた光たちに魅了されたのは半年前のことだ。

仕事で新聞配達もしていたため、週3回ほど深夜早朝外に出て、YAMAHAのギアやホンダのカブを走らせていた。栃木配属だったが、茨城の配達に行くことが多かった。車を25分ほど走らせて茨城のお店に向かう。とても眠いのでオーディオを流し車内で大声で歌った。お店に着くと早速折り込みを新聞に入れる。入れた後しっかりトントンしないと綺麗に積めない。不着や誤配の配達ミスを無くすために、前カゴと後ろの荷台には工夫をして積む。秋あたりから夜の気温がグッと下がってくる。10月から半年間やったが、寒さに慣れるということは結局無かった。凛と澄んだ空気が心地よいのは最初の30分だけだった。終わり頃になると寒さでつま先が悲鳴をあげる。鼻水が凍っていて、耳は取れちゃうじゃないかという程にじくじく痛んだ。これは防寒着、耳あて、ネックウォーマーをしていても、の話だ。滅茶苦茶に辛い仕事だった。

山に囲まれた地域の配達だったので街灯は無く、しんと静まり返っていた。3時間ほどの配達はとても寂しいものだった。ただ、楽しみが1つ出来た。夜空に張り巡らされた星々が堪らなく綺麗だった。そしてよく見えた。街灯もなく、高い建物もなく星々を映えさせる条件が整っていた。星の1つ1つがそれぞれの光を放つのがはっきり見えた。1軒1軒がとても遠い田舎道は、ただバイクを走らせている時間がとても長かった。星を眺める時間は十分だった。

知っている星座は、オリオン座と北斗七星しか無かった。中学校の頃に図書室から借りてきた、重松清の『カシオペアの丘で』という本が印象に残っていたため、カシオペア座も名前は知っていた。後のことはさっぱりだった。初めはオリオン座と北斗七星ばかり見て感動していた。原理は分からないけど今まで見ていたのより、大きさが3倍ほどに見えた。星と近いなと思った。大きさと光の強さが格別だった。誰かと共有したいけどスマホの写真じゃ厳しいし、朝刊だし、結局ずっと1人で楽しんでいた。流れ星なんかも3時間の間で2.3回は見ることが出来た。この地域ではとても長く空を舞っていたので、余裕でお願い事を3回言えた。流れ星を2つ連続で見た時は、ありがたみみたいなのが薄れたりした。後、至って普通のことなのに感動したことがある。流れ星が僕から見て上の方に流れて行ったこと。上とか下とか左右とか星には関係ないよなーと思った。小さなことだったけど、世界のスケールとか自分を縛ってる枠とかそこから考えた。自分一人の時間が満たされていた。

星座を覚えようと思った。同僚に「星学べるアプリでオススメありますか。」と聞いて、シンプルな星座表のアプリをダウンロードした。オリオン座を基準にして近隣の星座を覚えた。おおいぬ座、こいぬ座、アンドロメダ座、ペルセウス座等々。現地に行った時にアプリと照らし合わせて覚えていった。カシオペア座がとても覚えやすくて笑ってしまった。オリオン座は砂時計みたいな形だと思っていたらちゃんと腕の部分もあることにも気づいた。双子座の威圧感で恐怖を感じた。半年間で見える景色も変わった。星はずれていき大きさも変わっていった。辛い時間が楽しい時間となった。ただでさえ嫌な雨の日、曇りの日は星が見えないからもっと嫌いになった。こんなに星、星と書くのは勿論、人に話したこともなかった。話は逸れるが、文章書くのとても好き。僕は話したいことあるけど上手く喋れないことが多いタイプだ。文章に書くと整理されたり、話したいことがもっと増えたり、丁寧に時間をかけて自分と向き合えたり、そういう時間が僕には必要かもしれない。眠れずに書き始めて、長くなっちゃった。二時間近く文字打ってる。

閑話休題。星座を最初に考案した人はよく共有できたなって思う。星に命を吹き込んでくれてありがとう。一人の時間がとても賑やかで楽しかった。もう仕事は辞めたけど、星を見に行きたい。眠くなってきたので布団を被ります。おやすみなさい。

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