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出会ったら。。。

 僕が半年前まで住んでた横浜市の白楽はとても好きな街だった。老舗や新しくできた商店が1.5kmほど立ち並ぶ街だった。そこに1年半ほど住んでいた。家から持って来た大学の時に買った本などは殆ど読み尽くしてしまい、新しい本を読もうと思った時に古書店を探した。仕事柄日曜日しか休みが無かったため、今日こそは本を買いに行くぞと寄ったお店は家から1km程の行きやすいところにあった。ジャズがずっと流れており、40いくかいかないかと言う見た目のオシャレな店主がいるお店だった。初めてながらとても気に入った。最初に買った本は何だったろう。確かではないが、萩原朔太郎の『月に吠える』初版装丁と、武者小路実篤の『友情』、三島由紀夫の『金閣寺』だったと思う。「初めてなんですけど、純文学と哲学を大学で学んでいました。」と伝えたところ、「私もなんです。好みに合うと思います。」と言われ完全に好きになってしまった。『月に吠える』が入って来たばかりだとかで、すぐに目を奪われたのを記憶している。

 何回か行っているうちに、岩波のアリストテレス全集を買った。「一生これで楽しめますね。」と言った記憶がある。大学の時に、『ニコマコス倫理学』『形而上学』『弁論術』を読んでおもしろーと思って読んでいたので、すぐに購入した。見れば見るほど楽しめる本なので、今も引越しの時は大変でも売らずに持っている。ある時、店主に聞いてみた。「おすすめの本ってありますか。」店主は「町田康の『どつぼ超然』ですかね。日常の中でこんなに哲学できるんだって気づきました。」と言っていたのを覚えている。そのままその本を購入。合わせて町田康の『テーストオブ苦虫I』を買った。僕は店主にとってはよく本を買ってくれる客だと思われたに違いない。でも買った本に全く後悔していない。買った本の話を店主とできるから。入ってくる給料の余剰なところは飲み会と本を買うのに費やした。白楽での生活は結構充実していた様な気がする。

 『どつぼ超然』『テーストオブ苦虫I』を読み始めると、笑いが止まらなかった。主人公の皮肉たっぷりな姿勢が「なるほど。」と思ってもほぼほぼ笑いがついて来る。『どつぼ超然』は是非ともおすすめの図書である。ネタバレはあまりしたくないが、旋毛曲りな主人公が気分転換に場所を移して執筆活動をすると言う話だ。町田康自身に重ねているのは言うまでもないが、その生活で出会うモノへの素っ頓狂なアプローチ、言われてみれば確かにって思うツッコミ、皮肉を込めた心の中でのヤジが癖になる。変な含み笑いをするところが堪らなく面白いのだが、ぜひ読んで欲しい。読書感想文ではないので、古書店との出会いが殆どになってしまったが悪しからず。小説でこんなに笑うことあるんだってくらい笑ったし考えさせられたのでオススメなのです。わかりやすい日本語で書かれているので是非読んでみてください。

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