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俺の60のキーワード【4.マーケティング】

大学時代は国際金融論を専攻、ブレトンウッズ体制とかIMFとかを原書で勉強し、卒業時にはバーゼルにあるIMF見学に行ったりで、そんな流れで1984年にアメックスに入った。(実は今はなき東京銀行を受けたけどあっさり落ちた。)しかし、そんなこと(国際金融論を学んだ)とは全く関係なく、いきなり加盟店営業=1日30件の飛び込み営業を3年くらいやらされた!当時は「ネットで転職」ができるわけではないので泣く泣くやっていたわけだけど、実はこの飛び込み営業こそマーケティングの出発点そのものだったのだ。その後加盟店事業部のマーケティングに配属になり、上司がMBAホルダーやペプシのブランドマーケティングやってた人になり、様々なマーケティングを教えていただき、実践もできた。そもそもアメックスにはマーケティング文化があり、カード事業部のマーケティング部隊とも仕事をする中で、その面白さにはまっていった。営業とマーケティングも組織的に一体化しており、理想的な組織だったの、今も多くの企業が抱える営業とマーケティングの壁問題とかでは苦労をしたことはなかった。写真は入社2年目くらい....

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そこで教わったことの一つはマーケティングは企業と顧客、社会とのインターフェースで物を売る販促手段だけではないということだった。なのでTOPはマーケティング視点(=顧客視点、社会視点)で語り、戦略にその考えがしっかりと反映されていた。在籍中の13年でブランド・マーケティング、ダイレクト・マーケティング、マーケティング・ミックスを学び、実践できたのはその後のキャリアにとってとてもラッキーだった。

とはいえ、NY本社主導のオペレーションが色濃くなり、ローカルはJust Do It!的になり、面白さがなくなってきた時に早期退職プランもあり、36歳でJ.W.Thompsonのダイレクト事業会社=ネット事業会社に転職、そこで代理店としてマーケティングを勉強する機会を得た。JWTはアメリカで最古(?)の広告代理店でマーケティング・メソッドが確立しており、Thompson WAYというフレームワークはとても勉強になった。また、Strategy Plannningの人にはいろいろなことを教わった。そして、まさにネット黎明期にネット事業に飛び込んだので、矢継ぎ早に出るテクノロジーベースのソリューションを活用したネット・マーケティング事業にどっぷりハマった。幸いなことにネット・マーケティングはテクノロジーを活用したダイレクト・マーケティング的な要素がすごく強い側面があるためにアメックスで身につけたダイレクト・マーケティングの知識をベースにそれを進化させるという概念で取り組むことができた。One to Oneマーケティングとかがフォーカスされた時期だ。この頃からパーソナライゼーション、レコメンデーション、データ活用などなど、今も使われている言葉を提案書に打ち込んでいた。笑

その後1999年には今のメンバーズ に入り、自社で全部(システム、クリエイティブ、広告、戦略)完結するSIPSモデル(懐かしい!)に取り組みことになり、以来22年にわたりデジタルでのマーケティング支援業務に従事している。メンバーズは運用を売り物にしているが、これもアメックス時代のモデル=顧客とのエンゲージメントを継続的に高めることによってビジネスを持続可能なものにするモデルをメンバーズのモデルに置き換えたものにすぎない。デジタル・マーケティングにおける重要な意義の一つとして顧客接点創造とその継続だと思う。アメックス時代は紙のDMと電話で顧客とのエンゲージメントを図っていたが、それが容易に、かつ比較的低い費用で可能になったことが大きな意義だと感じていた。なのでメンバーズでは獲得だけのマーケティングや単発のサイト構築は基本撤退し、顧客とのエンゲージメント高めるためのデジタル・マーケティング運用 Engagement Marketing Center(EMC)に特化している。この頃出会った本「コ・イノベーション経営(C.K.プラハラードの)」は以後俺のマーケティングの精神的支柱バイブルで、今後の経営、マーケティングの重要キーワードの本質がすべてこの本で語られている。
-「企業中心のサプライチェーン」から「各消費者中心の経験ネットワーク」
-「セグメント・オブ・ワン」から「エクスペリエンス・オブ・ワン」
-「売り場としての市場」から「フォーラムとしての市場」
-「CRM」から「Co-creation」
-「企業と製品をベースにした価値創造」から「個々の消費者と経験をベースにした価値創造」
-「価値の競争」から「価値の共創」

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2010年には大きな動き、ソーシャル・メディアにも取り組んだが、これは顧客エンゲージメントの文脈での重要性を見出していたからで、顧客とのつながりを強化する手段としてのソーシャル・メディアを全日空、無印良品、サントリーさんなどと取り組み、フェイスブックインパクト(共著)も出すことになったが、一貫して顧客エンゲージメントが我々のマーケティングの目的であった。

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2011年にはメンバーズで子会社エンゲージメント・ファーストを作り、エンゲージメント創出、強化、維持にフォーカスし、アメックス時代からの経験や知見を盛り込んだ顧客とのエンゲージメントを高めていく社名と同じタイトルのマーケティング本を出版したりもした。

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ここ数年メンバーズ が取り組んでいる社会課題をマーケティングで解決するCSV(Creating Shared Value)は、アメックスで教わったこと、すなわち「マーケティングは顧客、社会と企業のインターフェース」として捕まえ、これを解決する商品・サービスを開発し、顧客に訴求することを推進しているが、ある意味新卒時代に教わったことを今実践している感じがする。そんな文脈でSDGsとマーケティングに関する本を書いた。アメックスは1980年代に既にcause related marketing=社会課題解決型マーケティングを実施しており、2010年にはSmall Business Saturdayという中小加盟店やコミュニティを活性化するマーケティングプログラムを立ち上げて今も継続している。

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マーケティングの役割は色々とあるが、日本ではまだまだ販促的な意味合いが強いように感じている。顧客を刈り取る、囲い込むなどの言葉が飛び交うマーケティング会議ではなく、マーケティングを(アメックスで教わった)「顧客や社会と企業とのインターフェース」だと考え、顧客や社会の変化を把握し、自社にしっかりとフィードバック、そしてそのニーズに答える商品やサービスを作り、その本質的な価値を顧客や社会に伝え、共感価値を作り出しことだとすれば、日本でも欧米企業のようにもっとマーケティングの重要性を高め、経営層の重要な役割の一つになっていくべきだと思う。プロダクトアウトな発想でのものつくりだけでリードできる時代はすでに終わっている。

マーケティングに出会うことで私のビジネスキャリアはとても楽しく、刺激的なものになった。マーケティングに感謝である。

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