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2021年9月29日岸田総裁記者会見発表内容と各記者の質問に対する回答についての所見

前言

 2021年9月29日、総裁に選出された岸田議員によって、記者会見が行われました。その内容を抜粋し、コメントしていきたいと思います。

動画URL:https://youtu.be/LGHyEZMrIJE

 総評としては、「正直、次の衆院選までに1か月しかないのに、八方美人的な発言を繰り返しており、これで国民からの支持を集めて与党過半数とれるのだろうか」と疑問。
 一ヵ月の限られた中で、一律給付金なども配布する予定がないのか、あるいは、一律給付金をエサに衆院選を行うのか。あまりにも政局のエサとしてニンジンをぶら下げるのであれば、国民はどのような反応をするのか。
 そいういう点を考えても、更に「話をよく聞く」を前面に出している点についても、ちょっと「悠長に構えすぎではないか」「国民のすぐに対応してほしい窮状が本当に届いているのか」疑問である。
 それと、蛇足かもしれないが、書き起こしをしていて、いやに「しっかりと」という言葉を連発する人であることがわかった。意気込みとカラ元気で、「中身がまだない」というのが、そのような言葉を多用する話の節々や話し方などで、逆に鮮明に見えてしまった印象だった。

岸田総裁会見発言内容

今から一ヵ月前、8月26日、私は総裁選挙出馬を表明致しました。
国民の皆さんの中に、「国民の声が政治に届かない」、あるいは、「政治の説明が国民の心に響かない」、こうした厳しい切実な声があふれていました。
今まさに、我が国の民主主義そのものが危機にある強い危機感を持ち、私は我が身を顧みずこの総裁選挙真っ先に手を挙げた次第です。

 即ち、官邸主導、今まで国民の声を無視した政治を否定し、「国民の声をきちんと聴く」という本来の国民主権の政治にするべく総裁になった、という宣誓となる。この点は、所見発表演説でも話をされていた。繰り返して伝える、ということは、殊更強調したいことなのだと推測される。

あれから一ヵ月、河野さん、高市さん、野田さん、こうした素晴らしい素晴らしい総裁候補と共に国民の皆さんに寄り添い、国民の声、国民の皆さんの声に耳を澄まし、積極的な政策論争を行ってきました。このことによって自由民主党が国民政党として国民の皆さんに寄り添い、そして、自由闊達な政党であるということを示すことができたと思っています。

 少なくとも親中派でTwitterで気に入らない意見をブロックしまくった河野議員については、「国民の皆さんに寄り添った」形式はなかったと思われます。

しかし我が国は今、国難と言われる厳しい状況の中にあります。コロナ対策をこれからも必死に取り組んでいかなければなりません。国民の皆さんがコロナによって心をバラバラにされてしまっている、こうした状況に対して是非みんなで頑張ろうという心をしっかりと取り戻し、Oneチームとしてこの国難に取り組んでいく、こうした雰囲気をつくっていかなければなりません。
そしてコロナ対策には国民の皆さんの協力、これは欠くことができません。年内に数十兆円規模の経済対策を策定することによって多くの国民の皆さんにともに協力して頂ける、こうした雰囲気をつくっていきたいと思っています。

 コロナ対策としてちょっと弱さを感じた。それはどこかというと「雰囲気をつくる」という箇所。気になった理由は、
 1.雰囲気では曖昧であり、語尾は「取り組んでいく」と断定口調にならない点
 2.作るのは雰囲気ではなく「体制」であり、空気感ではない
 コロナに協力してもらうために、きちんと説明をすることが必要になると考えているが、「雰囲気」では残念ながら、国民に協力してもらう体制ができあがるとは思えない。数十兆円規模の経済対策を策定する、というが、「適切に必要なところに行きわたらせるのは無理」という判断から出た曖昧な語尾「雰囲気」なのだろうか。
 また「年内」というのも遅すぎる。もう早速、一律給付をこの1か月以内に配り始めないと、1か月後に衆院選挙があり、自民党が継続して与党になるかどうかわからない。「スガはひどかったけど、岸田に変っても同じ」という悪政、あるいは実行力のなさが出た場合、残念ながら連立を組み「(減税で減った分の歳出は)国債に決まってるでしょう」という野党にある程度票を持って行かれる可能性もある。

そしてその先に経済、新しい資本主義を構築していきたいと思います。経済には成長と分配これがともに求められます。成長なくして分配なし、です。しかしながら分配なくして次の消費、更には需要も喚起されないということです。分配なくして次の成長もない、これもまた偉大な事実であると私は思っています。今こそ成長と分配の好循環を実現し、全国津々浦々、この成長の果実をしっかり届けていきたいと思います。すなわちできるだけ幅広い国民の皆さんの所得・給与を引き上げる。こうした経済政策をとっていきたいと考えています。

 分配が先、という発言はスガ政権までの自民党では考えられなかった。とはいつつ、この1か月の間に「全国津々浦々の所得・給与を上げる」のは厳しいので、まずは即一律給付金を出さないと、国民からの支持は得られないのではないか、と推測している。

更には外交安全保障につきましても、3つの覚悟を訴えさせて頂いています。
1.民主主義をはじめとする基本的な価値観を守り抜く覚悟
2.我が国の平和と安定を守り抜く覚悟
3.環境をはじめとする地球規模の課題に貢献することによって、この国際社会において存在感を示し、以て国益を守っていく
この3つの覚悟のもとに外交安全保障政策を進め、自由で拓かれたインド太平洋を構築していきたいと考えています。

 この覚悟も所見発表の時に発言していた。また、「自由で拓かれたインド太平洋」という言葉には、中国共産党に対抗する下記の意図が含まれていると推測している。
1.自由で拓かれた:抑圧と秘密主義による中国共産党に対する対抗
2.インド太平洋:米国と引き続き手を組みつつ、接近しつつある英国・豪州・印度とも手を組み、中国共産党に対抗する
 親中の河野議員が総裁にならなくて本当に良かった、と思わせられた箇所である。

それ以外にも我が国においては少子化問題、更には人生100年時代を見据えた全世代型の社会保障制度の構築、更にはICTを活用した個別な教育の推進、更には現場を重視し、そして地域に寄り添った多様で豊かな農林水産業の構築・推進、こうした様々な課題が山積をしている。
私の特技は人の話をよく聞くことである。是非こうした課題に対して、できるだけ多くの国民の皆さんの声を聞かして頂きながら、ひとつひとつ丁寧に答えを出していきたいと思っています。丁寧でそして寛容な政治を行い、国民の一体感をしっかりと取り戻していきたいと考えています。国民の皆様方のご理解とご協力を心からお願い申し上げる次第です。
以上です。

 政策の方向性はわかったのだが、やはり所見演説の時と同様、具体性がもう少し欲しかった。

フジテレビ記者質問

本日行われた総裁選は、新総裁が1回目でトップに立ち、決選投票で勝利につなげる形となりましたが、勝因をどのようにお考えか。
一方で党員票では河野氏が上回る結果となりましたが、国民の理解という点でどのようにお考えか併せてお答えください。
また党人事と閣僚人事についてどのような方針で臨まれるか、党人事は明日行われるかどうかについてもお答えください。特に党役員任期を一期一年三期までとする改革案を打ち出していらっしゃていましたが、堅持する考えに変わりはないかについてもお答えください。それらを断行する幹事長ポストの具体的名(?)もあるかもお答えください。
総裁選を戦った他の三候補を処遇するかどうか、支持を受けた派閥や安倍前総理、麻生副総理の手法をどのようにお考えか。若手・女性・民間の登用についてもお考えをお聞かせください。

 フジテレビ記者からの質問は、私の主観も交えながら解釈すると、
1.総裁選の勝因
2.党員票で河野氏が上回ったが、党員=国民の理解を得ているのだろうか、という疑問
3.党人事と閣僚人事の方針
4.党人事は明日行われるかどうか
5.党役員任期を一期一年三期までとする改革案=二階を幹事長から降ろすということを堅持するのか
6.幹事長ポストは具体的に誰か
7.総裁選候補の3候補の処遇
8.支持を受けた派閥や、高市議員に肩入れした安倍前総理、自分の派閥の河野議員を応援しなかった麻生副総理の手法についての考え
9.若手・女性・民間登用について
となる。項目数が多いので、箇条書きにした。

(岸田総裁回答)
まず今回の総裁選挙の勝因は何かというご質問に対しましては、国民の皆さんの声を丁寧にしっかり聴く・丁寧で寛容な政治を進めていく、こうした主張に対しまして多くの皆さんのご指示を頂いてきたと思っています。
そうした政治手法の下に具体的な、そして、仲間で練りに練った政策をしっかりと訴えていく。こうした取り組みが少しづつ多くの皆さんにご理解頂き、そしてご指示を頂いてきた。この積み重ねこそ勝因であったと受け止めています。

 勝因については、自身が何度も強調している「国民の声を聴く」であったとし、自分の柱になる方針=勝因と結びつけている。

(岸田総裁回答)
党員票において河野候補が私より大きな票をとられたことについてご質問がありました。私はこの総裁選挙、党の規定に従って、多くの関係者の皆さんのコンセンサスのもとに行われたと承知をしています。このルールに基づいて総裁選挙が行われた。その結果、決選投票において過半数以上の票をいただいた。こうしたことでこの総裁選挙を勝たして頂きました。こうしたルールに基づいてこの結果を頂いた。このことは多くの皆様方にもご理解頂けるものである、と思っております。

 国民=党員であるが、国民の声を聴くという姿勢が勝因なのに、その声は河野議員に流れたのではないか、という痛い所をフジテレビ記者は突いてきた。これに関しては、非常に歯切れが悪く「適正なルールのもとで多くの票を集めた」という茶を濁すような回答となっている。
 個人的な邪推かもしれないが「メディアが散々河野支持を喧伝し、河野に投票する流れを作っておいて、それはあまりにも偏った報道の仕方ではないのか。にもかかわらず、このようにルールに従ってきちんと得票を得たのである。」と言いたいのだろうな、と。

(岸田総裁回答)
人事についてご質問がありました。人事については、早急にたたき台を作り、そして確認をしていきたいと思っています。できるだけ急ぎたいと思いますが、明日一日はかかるのではないかと考えております。いずれにせよ、作業をこれから進めますので、努力をした結果だと思っています。

 勝つかどうかわからなかったから、この辺は具体的に何も考えていなかったのだろうか。最後「努力した結果です」ということなので、本当にこれから大急ぎで審議をして人事を決めるのだと推測される。

(岸田総裁回答)
一期一年連続三期までという取り組みについてですが、そうした自民党改革に対する想い、これは一ミリたりとも後退しておりません。しっかり自民党改革をやっていきたいと思います。
幹事長人事についてもご質問を頂きましたが、幹事長という役職、大変重たい重要な役職だと思っています。今、これからしっかり調整をしたいと思っておりますが、今現在、具体的な名前が確定した、というものではない、ということでございます。

 この点は「二階はしっかり降ろす」という強い意志を感じられて、個人的には好印象。もちろん、次に誰が来るか、というのもまた重要な話ではあるが。

(岸田総裁回答)
三人の総裁候補者についてどう処遇するか。その他の実力者の人事についてもご質問を頂きました。私はこの総裁選挙を通じまして、自民党が多彩な人材を持ち、そして、中堅・若手の皆様方をしっかり登用するということを申し上げてきました。
これは若手だけを登用するという意味ではなくして、やはり老壮青のバランスが大事だということで、現状を考えると、より中堅・若手の思い切った登用が必要であると申し上げてきました。
是非そういった想いで人事に取り組んでいきたいと思いますし、三人の総裁候補の皆様方も、またその他の党の実力者の方々も、素晴らしい才能・能力を持っておられます。特に三人の総裁候補の皆様方は一緒に政策論争をする中で、その素晴らしさを実感させて頂いております。是非党内においてその能力をしっかり発揮して頂けるようなことを考えていきたいと思っております。

 ベテランだけで固めたことで、「国民の声を無視してきた」という反省に立ち返っているのか、幅広く登用する、という姿勢はいいと思う。あとは、実際に誰が登用されるのか、を見なければならないが。
 また、「質問はこのくらいでしょうか」に対して、フジテレビ記者も遠慮してるのか、下記2点が残っているのだが、ある程度主要な部分を聞けたから満足なのか、全部回答してもらうことはなかった。
8.支持を受けた派閥や、高市議員に肩入れした安倍前総理、自分の派閥の河野議員を応援しなかった麻生副総理の手法についての考え
9.若手・女性・民間登用について

産経新聞記者質問

間近に迫る衆院選の勝敗ラインをお聞かせください。
自ら衆議院を解散されるお考えがあるのかどうか。

 フジテレビの記者が大分長く多く質問したせいか(笑)、産経新聞はかなり少な目だった。自分がしようとした質問を大分フジテレビが聞いてくれた、ということであろうか。

(岸田総裁回答)
勝敗ラインは与党で過半数と思っています。衆議院選挙、政権選択選挙でありますので、自公政権を選んで頂けるのか、あるいは、野党政権を選ばれるのか、これを決める選挙でありますので、目標は与党で過半数であると思っています。
そして選挙時期の解散については、今後国会が開かれます政治状況もしっかり見極めた上で、総理として然るべき時期を判断していきたいと考えております。

 産経新聞の質問も平和なものであり、総裁回答も結果平和なものであった。産経新聞、あまりコトを荒立てない方針なのかな?

東京・中日新聞記者質問

安倍政権とそれを継承したスガ政権の8年9か月では、国民の反対があっても官邸の判断で推進する一強政治ですとか、説明責任を十分に果たさない・説明しない政治の弊害が数多く指摘されてきました。岸田総理のもとでは、安倍・スガ政治の何を見直していくのか改めてお考えをお聞かせください。
また、特に安倍政権・スガ政権負の遺産の象徴ともいえる森友学園の文書改ざん問題について、岸田さんはこれまでの論戦では再調査について否定していました。岸田さんは先ほどの冒頭発言で国民の声が政治に届かないですとか、政治の説明が国民の心に響かないという声があふれている、ということをご紹介されていました。先ほど行われた両院議員総会でも、生まれ変わった自民党を国民に示す、と決意を述べられていました。過去を清算しないまま新しい自民党・生まれ変わった自民党ということはありえないのではないか、と思いますが、所見をお願い致します。

 東京・中日新聞、かなり斬り込んできた。やはり普段見ても他紙に比べかなり過激に質問している。聞いていて頼もしい。しかもかなり本質を的確に突いた質問と私は感じた。
 「国民の声を聴く」と言う以上、
 1.スガ政権までの国民の声完全無視な政治は反転するんだよね?
 2.国民は再調査を求めているんだから、森友調査もやるんだよね?
 3.そういった過去をきちんと清算しないまま「生まれ変わった自民党」なんてないよね?
と、聞いていて「質問は全部東京・中日新聞だけでいいんじゃないか?」と思うくらい聞いてほしいことを聞いてもらいました。

(岸田総裁回答)
まず最初に、9年近くにわたる安倍・スガ政権についての評価へのご質問がありました。私はまず、評価、という面においても大きな功績はいくつもあったと思っています。
まずアベノミクスという経済政策によって、間違いなく我が国の経済の体質の強化、あるいは成長、これは実現できたと思っています。
またスガ内閣においても、2050年カーボンニュートラルですとか、デジタル庁の発足、それから何よりもワクチン接種の加速。こうした実績は残されていると評価をしています。

 記者の質問・批判は「国民無視してきましたよね」に対して、総裁の回答が「評価すべきものがある」と、回答の論点がズレている、というか、かなり忖度して「誤魔化している」としか思えない。
 党内調整等色々ある為、あまり過激なことは言えないのかもしれないのだろうが、「小泉時代からの新自由主義に訣別」「(今までの総理や閣僚と違って)私の特技は人の話を聞くことだ」と明言した以上、後には引き下がれないのだから、質問者の言う「負の部分」に対してもきちんと「これがいけなかった・あれがいけなかった」と明確に発言した上「国民の声を聴いていく」ということに対する正当性を示してほしかった。これでは、安倍・スガ政権で疲弊した国民の声が本当に岸田総裁に届いているのかどうか懸念が残る。

(岸田総裁回答)
一方、この「説明」についてご指摘がありました。「説明」については、特にコロナ対策等を考えました時に、今の様々な政治課題、国民の協力なくしてこの政治の結果を実現することはできない。こういった時代であると認識しております。そういった点から「説明」ということについては、国民の声をしっかり聴く、更には、丁寧で寛容な政治を行う。こうしたことを私も掲げておりますので、こうした説明を国民の皆さんにしっかりと政治の説明責任を果たしていく。こうしたことはしっかり取り組んでいきたいと思います。

 安倍・スガ政権の「負の部分」を「しっかり説明」せず、両政権で苦しんだ国民の声が届いているのか疑問のまま、国民の協力を必要とする為、「国民の声を聴いて」「説明をきちんとしていく」、と言われても、本当に国民の声を聴いてくれた上で、説明・政策を行うのだろうか。現時点では、全政権までの忖度が見られる以上、安心して「岸田総裁ならやってくれそう」とは思えない。

(岸田総裁回答)
そしてその上で、モリカケ問題等についてご質問がありました。
この問題については、まず行政において調査が行われ、そして報告書が出されております。
司法において裁判が行われ、そして今、民事の裁判も続けられています。
その判断をしっかり見ていかなければならないと思いますが、こうした行政、あるいは、地方における取組が行われたとして、国民の皆さんがそれでも色々なご意見がある・想いがあるとしたならば、今度は政治の立場からこれはしっかり説明をしていかなければならない。このように思っています。

 ・行政:この問題については報告済みでこれ以上やることはない
 ・司法:民事裁判継続中
 ・立法:司法・行政の結果を見ても国民が納得しないならば政治の立場から説明しなければならない
 として、「再調査する」という名言はさけつつも、「国民の側から要望があれば説明する」という、「再調査しない」スタンスは崩していないような印象を受け取った。

(岸田総裁回答)
そしてやはりこの問題を通じて、何よりも重要なことは、公文書の管理は行政の基本、そして国民の行政への信頼の根幹であると思っています。こうして今回このように指摘されたことが二度と起こらないように公文書管理の適正化、そして再発防止、これはしっかりと政治の責任として行っていかなければいけない・結果を出さなければいけない。こうした課題であると認識をしております。

 モリカケ問題については、総括的には「モリカケ自体はこれ以上追わないけれど、公文書管理については見直す」という、モリカケ問題から公文書管理問題に問題をズラしていると思われた。

朝日新聞記者質問

今の説明にもありましたが、岸田総裁の政治的姿勢を改めてお伺いしたく質問させて頂きます。
先ほど森友問題にて最終的には政治的な立場から説明をしないといけない、とおっしゃいましたけれども、再調査をせずしてどういう納得ができる説明ができるのか教えて下さい。
また参院選の広島選挙区で、これは岸田総裁もご懸念を示されていた問題ですが、先日、自民党の1.5億円の問題について河井夫妻が作成した資料を基に買収に使われていない、という説明をしました。ただ、裏付けの資料も示されず、自民党として主体的な調査もされていません。こうした対応について打倒だと考えらえますか。今後、党独自の調査をして、また説明をされる考えはありますか。
最後に、コロナ禍の中で、国難と言う中で、総裁のメッセージは非常に大きいと思います。その一回目の会見を30分で終わらせることは少なくないですか?

 朝日新聞社も東京・中日新聞並みに斬りこむ。
 1.「国民の話を聴く」という姿勢の割には森友再調査なしには納得がいかない
 2.自分の選挙地区である広島の河井夫妻の問題について、河井夫妻が作成した資料を基に「買収に使われていない」のも納得がいかない
 3.国難の中で初回の会見30分は短くないか?
 東京・中日の森友問題追求に更に被せて追撃した上、更に河井夫妻の問題についても猛追する姿勢。
 また、「30分で終わらせるのは短くないですか」の箇所で、岸田総裁が鼻で笑ったのが気になった。どのような心境で、その「30分に対してコメントをするのか」に注目したい。

(岸田総裁回答)
3点ご質問を頂きました。
まずモリカケ問題についてご質問を頂きました。今、私は、行政において調査が行われて報告がしっかりなされていると認識をしています。そして司法においても、強制捜査権を持つ検察が捜査を行い、そして裁判が行われ、更には民事で今裁判が行われています。こうした国の捜査権を持つ組織が、しっかりとこの問題について判断をする。このことは「大変重たい」と思っています。そうした行政、地方において、そうした取り組みが行われている。それを前提として政治の立場から国民の皆様にしっかり寄り添う立場からも説明が必要であれば、私は説明させて頂きたい、ということを申し上げております。

 先ほどの質問に対する回答と同様、この話題については一旦「今裁判中」という形で後ろ倒しして、この場を収めようとしている印象。

(岸田総裁回答)
そして2点目、広島のいわゆる「河井事件」の対応でありますが、あの問題については、従来から自民党の総裁・幹事長は、裁判で押収されている書類が戻ってきたならば、それに基づいて説明する、と記憶しています。書類が戻ってきました。膨大な書類を今整理をしている。その中で最終的には総務省に対してしっかりとした報告書が書類も添付した形で出されるのでありましょうから、この書類、しっかりそういった形の説明書を最終的に確認をして、そして説明をするということになると、私は認識をしています。そういった取り組みの中で、今、この場合の説明がどの時点でどういう説明だったのか、これをちょっと今一度確認をし、必要であるならば説明をするということであると思っています。

 こちらもモリカケ同様「今書類整理中」ということを茶を濁して、この場はとりあえず後ろ倒ししてやり過ごそうとしている。モリカケも含め不問にして、再発防止に向けて取り組む、という形に持って行き、党内の軋轢をこの場はひとまず回避しようとしている、と推測された。

(岸田総裁回答)
そして3点目。総裁のメッセージは重要である、30分でいいのか、というご質問がありました。ご指摘はしっかり受け止めたいと思います。できるだけ多くのご質問を受けて、双方向の対話をさせて頂く。私も総裁選挙の際に、記者の皆さんの後ろには国民の皆さんがいるんだ、という意識で、できるだけ時間をとって、出馬表明も含めて全部で6時間、記者の皆さんと記者会見という形で意見交換をさしていただきました。こうしった姿勢は大事だと思います。ただ、現実、総裁、あるいは今後手続きが進んだならば総理という立場になった場合に、全く時間制限なしで対話を続ける、これは現実として難しい部分もあると想像しています。できる限り、こうした記者の皆さん、更には国民の皆さんとの双方向のやりとり、大事にさせて頂きたいとは思っておりますが、是非現実の政治日程の中で記者の皆さんにもできるだけ協力して頂いて、このやりとりもできるだけコンパクトに、そして効率的に行わさせて頂ければ、と願っております。

 総裁選の時から6時間かけてるので、この場は30分でも十分である、という回答。鼻で笑ったのは、記者の「30分は短くないですか」に対して「今まで6時間かけてるのにお前が知らないだけだろ」という失笑だと私は解釈した。
 総裁選前と総裁着任直後では心構え等違うと思うのだが、その6時間も入れて全部で6時間30分、総裁選時の宣言をそのまま継続する意思表明をした、と私は受け取った。
 ただ、岸田総裁の話は、総裁選の時から具体性に欠けており、特に高市候補と比べるとそれが如実に表れているので、具体性を含ませてもう少し時間をとって話してもいいのではないか、と希望する。

日本経済新聞記者質問

経済政策についてお伺い致します。
先ほどお話がありましたように新しい日本型の資本主義を掲げられて分配政策の強化を取り組むと訴えられております。この分配政策の具体策として何をいつ実行するのか、そしてその財源はどう捻出するのか、についてお考えをお伺いします。
また成長と分配の好循環を主張しておられますが、分配政策の強化がどのように成長に結びつくのか、その好循環の理屈というのをもう少しご説明頂ければ、と思います。
先ほどのご発言の中で、人事について明日一日かかる、というご発言がありました。想定としては明後日の1日金曜日に党内手続きをする、とそういうお考えなのでしょうか。

 さすが日本経済新聞。他社が人事・スキャンダルを追求する中で、
 ・新たな資本主義
 ・分配政策
 ・成長戦略
という経済面について突いてきた。それに加え、党内手続きという事務面という現実的な話を質問。この辺は他紙では確かに聞きにくい点であり、経済新聞の得意とする分野、という印象を受けた。

(岸田総裁回答)
まず最初の質問ですが、新しい資本主義・経済対策ですが、先ほども申し上げたように、経済において成長はもちろん大事です。しかし成長の果実の分配、一部の人間にその成長の果実がとどまっている・集中してしまっている。これでは経済の好循環が実現できない。要は、成長の果実、できるだけ幅広い皆さんに享受してもらうことが大事であるということから、大企業と中小企業の格差、所得においても、高所得者層と中所得あるいは低所得の皆さんとの格差、更には大都市と地方の格差、こうした格差を埋めていかなくてはならない。こういったことを申し上げています。

 おおまかには富の一極集中を止め、格差を埋めていく、という方向性はわかった。

(岸田総裁回答)
そして分配。どうやってやるのか。これはまず民間において、大企業と中小企業の格差・下請け関係等において、適切にこの分配が行われているのか、あるいは、ひとつの企業においても成長の果実が株主あるいは経営者だけではなくして従業員他、適切に分配されているのか、これを民間で考えてもらう。

 ん?「民間で考えてもらう」と?
 それ、民間から「労働分配については職務に合わせて適切に配当しています」って言われて今まで通りで終わるのでは?

(岸田総裁回答)
そしてそれに加えて、公的な分配の努力、これも大事であるということを申し上げております。
税制ですとか、あるいは、中間層が大きな負担になっている教育、あるいは、住居費、こうした部分への支援ですとか、こういったことも大事ですが、更に今回私が特に総裁選挙で訴えていたのは、公的価格の見直しという部分です。すなわち、コロナ禍でも大変苦労されておられる看護士の方とか介護士の方ですとか、あるいは、保育士の方々、こうした方々の給料はそもそも仕事の大変さに比べて給与が低いのではないか、こういった指摘がありました。こういった方々の給与は国が決めることができるものです。是非、こうした、従来から、働きに比べて給与が少ないと言われている方々の公的価格は国が率先して適正に引き上げることを考えたらどうか。そのことが民間給与の引き上げにも呼び水となって広がっていくことがある程度できるのではないか。こんなことを申し上げています。

 国が給与水準を決めている職業で、低水準の職について上げることは賛成なのだが、その後が気になる。
 1.各医療・介護・保育組織にて国の言い値で給与を上げられるのか
 2.この人たちの給与を上げたら他の職種の給与が上がるのか
全く以て疑問しかない。
 もちろん、看護士・介護士・保育士の給与負担を実は国がある程度している、というのであれば私の不勉強からくる見当ハズレな疑問になります。

(岸田総裁回答)
財源ということですが、財源は、まずは成長なくして分配なしですから、経済の成長、これをしっかりとこの財源として使っていかなければなりません。先ほど言いました、看護士・介護士・保育士といった方々の給料を考えても、例えば、医療に関する市場は40兆円と言われています。介護の市場は10兆円の市場だと言われています。この市場の中での分配のあり方、そもそも市場自体も大きくすることもしっかり考えながら適正に分配されているかどうか、これを考えるのが財源という意味で重要であると思っています。

 成長と分配については「分配なくして成長もない」と言っていたのだが、国から分配する考えはなさそう。この辺は、安藤裕議員も指摘している通り、岸田総裁はまだ「財源=税金のみ」と思ってるフシがあると推測される。なにより、看護士・介護士・保育士の給与を上げたら、それだけで社会全体の分配になるのか、非常に疑問である。

(岸田総裁回答)
そして好循環についてどういう理屈かということですが、先ほど言いましたように、多くの皆さんの給与・所得を引き上げていく、それも一部の方々ではなくして、できるだけ地域や分野に関わらず幅広い方々の給与を引き上げる。そのことによって経済全体の消費が間違いなく喚起されます。
昭和30年代の所得倍増論、あの時代も皆さんが貧しくて格差があまりない時代でしたが、その中で更に幅広く所得を喚起することによって消費を拡大させた当時の三種の神器、あるいは新三種の神器、電化製品をはじめ、爆発的な消費を喚起した、ああいった実績があります。
是非今の時代においても幅広い方々の給与を引き上げる、このことはひいては格差を解消することになるわけですが、併せて幅広い方々の所得が上がる・給与が上がることによって消費を喚起することになります。
消費を喚起するということになりますと、供給も企業がそれでは投資をしようではないか、それでは研究開発しっかりやろうではないか、こういったことになります。供給側もこうした消費に刺激をされて経済拡大に取り組んでいく。分配が次の成長の呼び水になる、こういった好循環を実現することができるのではないか。こんなことから成長と分配の好循環ということを申し上げています。

 正直絶句した。政府が「給与をあげて」と民間に言えば、民間の給与が上がり、続いて消費があがるというのなら、安倍政権時代に安倍総理自ら経済団体に同様に昇給のお願いをしていているので、とっくに従業員給与は上がっている。結果的・現実的に、殆どの会社で給与を上げなかったことを知らないのか、この人は。
 「新自由主義からの脱却」とか聞こえの良いことを言っているが、現時点では経済対策については「非常にお粗末」で具体的実現策が見えない、としか思えない。
 また、この箇所の回答が冗長で非常に長い。立憲民主党・枝野党首の「そんなの国債に決まってるでしょ」の方がどんなにスッキリしてわかりやすいか。この冗長さは、財源については「自分もよくわかってない」という自信のなさの表れにしか思えない。

(岸田総裁回答)
最後に人事についてご質問がありました。人事は大変重要でありますし、今から色々とたたき台を作り全体を作り上げていかなければならない、ということを考えると、そう簡単ではないな、ということで、明日一日かかるのではないか、と申し上げました。
ただ具体的に着手しておりませんので、実際どれくらいかかるのか、というのは、やってみないとわからない、とは思っております。できるだけ急ぎたいとは思っています。

 野田候補の「閣僚の半分を女性にし、そのリストは私の心の中にあります」に比べると非常に遅い。岸田総裁、「国民の話に耳を傾ける」という良い人なんだろうけど、その八方美人さが政治決定の遅さを加速するのではないか、と懸念している。
 負けた場合は、高市氏に投票する、という発言が総裁選中にもあったように、自分が決まるかどうかわからなかったから、あまり具体的なところまで話をせずにここまで来てしまった感が否めない。

日本テレビ記者の質問

岸田総裁は先ほど特技について「人の話をよく聞くことだ」とおっしゃいました。一方で昨日、スガ総理は記者会見で、官房長官と総理大臣の違いについて最終的な判断者であるかどうかと述べ、総理としての決断の重みというものを強調しました。特に新型コロナ対策のような「感染抑制か経済か」と意見が分かれる問題やスピードが求められる問題においては、総理として決断する力というものが求められる場面が増えると思いますが、このあたり、どのような姿勢で臨まれますでしょうか。

 早速、私だけでなく、記者側から「具体的な方策もないし、これから決めるものが多そうだし、その上話を聞いていては、間に合わないのでは?」という懸念を記者が聞いてくれた。
 もちろん、スガ前総理の場合は、本人も話を聞かなすぎの上、周囲のブレーンが悪いのか、あるいはブレーンの箴言を無視し続けたのか(あるいは両方か)、あまりにも現実を無視した失政が相次いだので、慎重にしてほしいことはあるものの、国民に有益になるものはすぐ着手してもらいたい、と強く望む。

(岸田総裁回答)
おっしゃる通り、政治にとりまして、決断力は大変重要だと思います。やはり政治が学術的な意見・評論家的な意見と違うのは、結論を最後出すかどうか。これが政治の違いであると思っています。
決断は大変重たいと思います。ただ、決断をするにあたって、色んな手法があると思います。
トップダウンで、いきなり自分がもう結論を皆さんに飲んでもらうという決断もあれば、丁寧に多くの皆さんの声を聴き、でも最後は自分で決断する、こういった決断の仕方もあります。
これは場面場面で、どっちが良いというものではなくして、必要な場面で必要な決断の仕方を判断する。これが政治にとって大事だと思っています。
私の場合はできるだけ多くの皆さんの声も聴いた上で、決断をする。こういった手法をできるだけ大事にしていきたいとは思っています。
いずれにせよ、おっしゃるように、決断するのは政治でありまして、そして総理である、と認識をしています。丁寧で寛容な政治、これを進めながらも、決断すべき時はしっかりと決断をしていきたいと思っています。

 スガ前総理と違って、独りよがりで国民の状況を無視した決断はしない、という表明であると私は受け止めた。
 一方、記者も総裁本人も懸念している通り、決断のスピードについては状況によって即断してほしいものがあるのだが、話を聞く限り、人事から経済対策からしてまだ詳細が決まっておらず、これから決めるという状況である為、この1か月で自民が引き続き与党のまま居られるかどうかは微妙なところだと推測している。
 「分からず屋」のスガに代わって、国民に必要な給付等がこの一ヵ月の間に行われ、「岸田総裁になって良かった」とならなければ、次の衆院選は「やっぱり自民は変わらない」となって終わるだろう。
 人事含め、どうなるかこの一ヵ月も目が離せない。引き続き、よく見させてもらいます。

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