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水資源に関する研究活動紹介マガジン

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私の行ってきた水循環・水資源の研究活動をまとめたものです。なるべく平易な言葉でわかりやすくまとめていく予定です。
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安部のプロフィール 学術研究編

私は、水資源問題の解決に資する水循環解明を目的とし、湿潤な森林地域から乾燥地の灌漑地域や草原までを対象とした水文研究に従事してきました。 モンゴル東部ヘルレン川流域や中国北西部 黒河流域の半乾燥地においては、広域(100km×100kmぐらい)スケールの地下水がどのように涵養され、その後流動してくるのかをテーマとし、環境トレーサーを用いて研究を行った。 日本国内では、福島第一原発で放出された放射性セシウムが山地森林流域からどのように流出してくるのか、荒廃の進む森林域での森

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シリーズ 水文学・地学(サイエンスイラスト) 2021.10追加

サントリー&神奈川県における森林水文学研究

◆なんの研究をしていたか日本では山地森林でどのような森林整備をすれば森から流出してくる河川水や地下水が変化するのか?ということテーマに研究を行っていた。 ◆なぜそんな研究をするのか○日本の山地の森林:林業の衰退  現在の日本では山は森林の緑に覆われているが、実は戦前から今に至るまで森林環境は刻々と変わっています。戦前は一般市民も薪を日常生活の中を使い、ほとんどの建物が木造であり、特に都市域の周辺に山はハゲ山であったと考えられている(「森林飽和 国土の変貌を考える」, 太田

中国黒河流域において水資源に関する研究

世界中の灌漑農業地域における地下水の過剰揚水による地下水位低下の問題の例に違わず、 研究対象地域である中国甘粛省黒河流域においても、 中流域での灌漑水の利用によって、下流域に河川水が届かなかったり(河川の断流)、 地下水位の低下が報告されている。近年は河川水利用の規制が強化されたことで、河川の断流は改善されつつあるが、 中流域では河川水の代替として地下水の利用量が増えており、地下水位の低下を招きかねない状況となっている。 先行研究では、乾燥地での地下水涵養(地下水が「できる

モンゴル・ヘルレン川流域における地下水流動系の研究

乾燥・半乾燥地域における水資源、特に地下水の現状を把握するための研究には学生時代に興味があり、修士研究でモンゴルで研究する機会を得ました。 モンゴルにおける地下水の利用率は、人口の90%以上と極めて高く、乾燥地の典型的な水利用形態をとっています。 しかし、1990年の市場経済移行後は、管理体制の崩壊し、多くの井戸が破壊され、使用不能になった状態で放置されています。 モンゴルは、今後、水資源問題が顕在化しうる社会情勢にあると考えられるわけです。 この様な状況下で、地下水流動系

まずはじめに:水循環の研究紹介

何が問題?:乾燥地での水資源世界各国において水資源の枯渇・共同体間の配分、安全な水の供給等の水資源問題が大きな社会問題になっています。 特に乾燥・半乾燥地域においては、地表水(河川水、湖水等)が不足しているため、生活・農業・工業用としての水資源を地下水に依存している場合が多く、 無計画な過剰揚水によって地下水位の急激な低下がおこる例が後を絶たちません。雨や川が地下水になって貯留されることを「涵養」といいますが、その地下水涵養が少ない場合・遠い場所から流動してきている場合が多い