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Klub:インドD2Cブランドの爆発的成長を担うRevenue Based Financing

こんにちは、山本と申します。GMO VenturePartnersというベンチャーキャピタルで海外Fintech投資をやっています。

今回、インドでRevenue Based Financingを提供するKlubという非常にユニークなスタートアップへ出資いたしましたので、そもそもRevenue Based Financingとは何ぞや、というところからご紹介したいと思います。

Revenue Based Financingとは

エクイティとデット
スタートアップが資金調達を行う際に典型的なのはエクイティ(株式)による調達ですが、創業者・既存株主の持分希薄化を避ける(Non-dilutive※)等の理由でベンチャーデット(スタートアップ向け融資)を利用する、またはエクイティとベンチャーデットを組み合わせて調達する、といったことが特に欧米では広く行われています。銀行や既存金融機関が直接、創業間もないスタートアップの与信を行い貸付を実施することはどの国でもまだまだ難しいため、新興レンダーやベンチャーデットファンドが活躍しています。
(※転換社債や新株予約権付融資などエクイティの要素も含まれることが多いですが、ここでは割愛します)

Revenue Based Financingの仕組み
Revenue Based Financingはベンチャーデットの一種で、その名のとおり売上高に連動させて返済額が変動する、又は売上高そのものをもって資金を調達する方法です。
前者の返済額売上高連動型の仕組みについて少し触れると、返済額については①売上高(業種によっては粗利)に対する返済割合、②キャップやフロア、を定めることが基本で、例えば①月次売上高の5%を返済する、②返済額の上限は10百万円・下限は2百万円、といった具合です。返済総額については「貸付額+手数料」として合意される場合や、「貸付額+金利」として通常の融資のように提示される場合とがあります。返済期間については返済総額を返済し終えるまで実質無期(ただし一定の年限が設定されることもある)、又は返済期限を定めて期限までに全額返済、とされる場合があります。
後者の「売上高そのものをもって資金を調達する」については、将来的なキャッシュフローをいま現金化する、あるいは売掛金債権を売却する、いわゆるファクタリングに近いものと理解することができます。

Revenue Based Financingのメリット
持分希薄化が起きないデットのメリットはそのままに、Revenue Based Financingは月々の返済額を売上高に連動させ、変動費化できるという特長があります。特に季節性の高い業種(D2C等)や創業間もないスタートアップにとってこれは非常に魅力的で、新たな資金調達の手段として注目を集めています。

Revenue Based Financingの著名スタートアップ

特に北米では既に複数のスタートアップがこの領域で規模を拡大していますので、著名な二社を取り上げます。

Clearco (https://clear.co/)
返済額売上高連動型を提供するフロントランナーで、SoftBank Vision Fund2からも出資を受けて時価総額は2000億円超となっています主にEC事業者向けサービスを提供しています。借り手のShopifyなどのECサイトやStripe・Adyenといった決済サービスアカウントから売上高の推移、FacebookやGoogleなどからマーケティング費用を取得し、24時間以内に資金提供を行います。手数料については使途に応じて6%か12%となっており、既に5,500社以上が利用しているとのことです。

Pipe (https://pipe.com/)
主にSaaS企業と投資家をマッチングして、将来のARRを現金化するプラットフォームで、こちらも時価総額は2000億円を超えています。決済アカウントや会計ソフトのデータからSaaS企業の収益性を分析し、現金化できる上限額をPipeが決定。その上限額内でSaaS企業がプラットフォーム上にSaaS契約情報を提示し、機関投資家が将来的なキャッシュフローを見込んでそれを購入する(SaaS企業に資金提供する)という仕組みになっています。Pipeはこのマッチングに対して手数料を得るモデルです。

Klub:インドのRevenue Based Financing

このような潮流はもちろんほかの国でも広がっており、今回GMO VenturePartnersでは、インドで返済額売上高連動型ファイナンスを提供するKlubに投資を行いました。

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Klubはメガベンチャーで巨大新規事業を複数立ち上げ、シンガポール政府系VCでの投資経験もあるAnuraktと、投資銀行・アドバイザリ、事業会社財務部門と金融サービスへの知見豊富なIshitaからなる創業チームが2019年に起業し、Sequoia CapitalのアクセラレーションプログラムであるSurgeが出資しています。

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ローカルD2Cブランドの勃興
インドではコロナ禍もあいまって2025年までにオンラインECで購買をする人口が3億人を超えると言われています。これに加えてECを主戦場とするローカルのD2Cブランドも次々と誕生しており、既に800社以上が存在、将来的には10兆円規模の市場が見込まれます
ところがD2Cブランドの資金調達については、①VCの投資対象となるのは一握りであること、②創業間もなく既存金融機関が融資困難であること、③季節性が高く毎月返済額の決まっている通常の融資対象とはなりづらいこと、から資金需要のギャップが生じており、これがKlubの解決する課題です。

以下では、Klubのサービスについてその特長をご紹介したいと思います。

KlubのRevenue Based Financing

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Klubは主にD2Cブランドに対して、その規模に応じて150万円~75百万円程度の資金を提供します。返済総額は貸付開始時に明示され、月々の返済額は売上高の10%を上限に設定されています。D2Cブランドは季節性を心配することなく、また思ってもみなかったような手数料も取られずに安心して資金調達をおこなうことができます。
インドでは融資契約が複雑なため、与信や条件交渉に加えて、手続きだけで数か月かかって結局調達できない、というようなこともざらですが、Klubはフォーマット化、自動化を推し進めて申込から着金まで10営業日前後で完結させていることも大きな魅力です。

資金供給源の多様化
Klubが他のRevenue Based Financingと一線を画す大きな要因のひとつはその資金供給源の多様さです。金利が安く、スタートアップへの融資資金の出し手が多数様々存在している欧米と異なり、インドではいかに供給側を確保するかということも、Klubのようなレンディングプラットフォームにとっては非常に重要です。

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そこでKlubは、ノンバンクや銀行といった既存金融機関のみならず、個人投資家を含めた幅広い資金の出し手を束ねてD2Cブランドに資金供給を行っています。Klubは個人投資家のことを「パトロン」と呼び、投資ダッシュボードを通じて選りすぐりのブランドに対する投資機会を提供するとともに、パトロン限定のクーポン発行なども行っています。

与信データのリアルタイム化

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最後に与信について、Klubは銀行口座情報、ECサイトや決済アカウントのほか、ECに欠かせない物流システムとの連携などから得られるデータを用いて行っています。これによって、ある時点のBSや業績だけを見て与信している従来の金融機関ではできない、リアルタイムの業績・収益性評価を貸付後も継続して行うことができます。

最後に

Revenue Based Financingをインドでいち早く持ち込み、D2Cブランドの成長を資金面からサポートするIshita、Anurakt、そしてKlubチームへのご支援を通じて、資金供給ギャップの解消・金融包摂の実現、デジタル消費経済の発展に少しでも貢献したいと考えています。

主に東南アジア・インド・US、そしてヨーロッパのFintechを幅広くカバーしています。この記事の内容にかかわらず、ぜひコメント欄などでいろいろ情報提供・コメントいただければ幸いです!

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