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地域政党の奮闘 ~なぜ無所属でも既成政党でもない選択をするのか~


はじめに

地域政党サミットの参加政党8党の共著で、書籍「情報オープン・しがらみフリーの新勢力」を令和4年11月1日に出版しております。

私は、本編は執筆していませんが、間に挟まっているコラムを執筆しておりますので、出版社のご理解を得て、コラムを転載する形で地域政党が「なぜ無所属でも既成政党でもない選択をするのか」という点をお伝えできればと思います。


地域政党サミット 編「情報オープン・しがらみフリーの新勢力」

地域政党サミット 編「情報オープン・しがらみフリーの新勢力」

本書では、地域政党サミットに参加している地域政党京都党、地域政党ゆがわら、地域政党あしたのかわさき、地域政党ふくちやま、神戸志民党、地域政党情報公開こがねい、地域政党自由を守る会、みらい松山の各党の取り組みを掲載しています。

また、前和光市長の松本武洋氏と琉球大学教授の島袋純氏も「地域政党の存在意義」について、それぞれ執筆されています。


“地域政党”のメリット①(無所属との比較)

“地域政党”は、創立者1人しか議員がいないというケースもよくあります。特に立上げ期は、ほとんどの“地域政党”が1人からスタートです。1人ならば、“無所属”で良いのではないかと思われるかもしれません。そこで、“無所属議員”と比較した場合の“地域政党”のメリットを考えてみたいと思います。

そもそも“政党”というのは、「同じ政治的意見を持つ人々が、その意見を実現するためにつくる団体」のことを言います。“政党”は議員の集まりではありません。“政党”に所属する人を党員と呼びますが、議員も民間の有権者も党員として一緒に“政党”の党勢拡大を行い、政治的目的を実現するのが本来の姿です。“政党”の代表や執行部が民間人でも全く問題ないのです。

“無所属議員”にも、党員とイメージが近い存在として“後援会”があります。“後援会”は「議員の活動を支援あるいは支持する人が集まる団体」です。一緒に政治的目的を実現する党員とは立ち位置が違い、あくまで支援者に留まります。これは、言葉の問題だけでなく、実態としてもそうだと感じます。

つまり、“地域政党”の1番のメリットは、「この指とまれ」の仲間集めができることです。綱領や政党理念・基本政策を掲げ、議員・議員候補・民間人を問わず賛同する仲間を集め、活動の幅を広げていくことができます。“無所属議員”同士で、会派を組むことはできますが、それぞれの“議員”の後援会の方々が結束することはできません。

最後に、戦術的な話です。公職選挙法の規定により、選挙期間外も“地域政党”の街宣車を走らすことができたり、選挙期間中に“地域政党”のチラシを配ることができたりと“地域政党”だからできる戦術的なメリットもあります。

また、複数候補者が立候補することができれば、統一の政策やデザインを活用することで、党のブランディングになり、有権者に存在や政策をより認識してもらいやすくなるという点も大きなメリットです。

<書籍「情報オープン・しがらみフリーの新勢力」より引用>


“地域政党”のメリット②(既成政党との比較)

「自由民主党」をはじめとする“既成政党”が多く存在する中で、何故わざわざ“地域政党”を選択するのか。“既成政党”と比較した場合の“地域政党”のメリットを考えてみましょう。
 
“既成政党”のほとんどは、国会議員を擁する国政政党ですから、テレビや新聞などへの露出度が高く、一般的な知名度では“地域政党”はなかなか及びません。そんな中で敢えて“地域政党”を選ぶのは、“既成政党”では望むような政治活動や政治的目的が実現できないからです。
 
1つは、“既成政党”は、業界団体・労働組合・宗教団体をはじめとする各種の利権団体を支持母体として抱えており、これらの団体の主張を織り込みながら政治活動をしなければいけない点です。特定の団体の代弁ではなく、一般の有権者、一般の納税者の代弁をしていくには、しがらみが邪魔をします。
 
もう1つは、“既成政党”は東京(日本維新の会は大阪)に本部があり、現場の自治体議員だけで判断をさせてもらえないことが多々ある点です。議員間で交渉をしていても、本部の回答待ちなんてことがよく起こります。現場で正しいと思ったことを、現場で判断するという当たり前のことができません。
 
つまり、議員個人の意見が、大きな力で抑えつけられてしまうわけです。自分の信念をもとに有権者のための政策判断をするには、“既成政党”は組織疲労を起こしているのです。
 
また、これは、“地域政党”だからというよりは新興勢力だからという理由が強いかもしれませんが、“既成政党”の議員では経験できないようなポジションを早くから経験することができます。それは政党の執行部としてのポジションや議会での団長や幹事長などの会派を代表するようなポジションです。“既成政党”では、通常4期目や5期目でようやくまわってくるポジションが、1期目・2期目から経験できるケースが多くあるのも大きなメリットです。

<書籍「情報オープン・しがらみフリーの新勢力」より引用>


地域政党あるある 候補者発掘の苦労

地域政党サミットで各党が顔を合わせた時に、よく話題にあがるのが、候補者発掘についてです。“既成政党”には知名度で劣る中、候補者発掘には苦労します。

近年は「なりたくない職業ランキング」の最上位に政治家が入るように、そもそも議員という仕事は極めて不人気です。SNSでの監視が厳しい社会になり、よりその傾向は強くなっています。顔と実名を晒して政治的な主張をすることは、一個人の生活にとってはリスクや不利益が大きいのです。

そんな中、数少ない政治家を志す候補者も、やはり立候補するからには選挙に勝ちたいと思うと、知名度の高い“既成政党”に先ず目がいくのは致し方ない側面があります。

苦労は大前提ですが、悲観するようなことではありません。これは、ビジネスの世界で、上場企業とベンチャー企業が人材確保競争しているのと同じ構図です。必ずしも、皆が上場企業への就職を望んでいるわけではありません。代表者の想いや熱意に惹かれる人もいれば、サービスや商品(理想の社会像や政策)のクオリティ・先進性に惹かれる人もいます。

日ごろの政治活動の中で出会った逸材を口説いて仲間になってもらう一本釣りをしたり、政治塾を開催して母集団形成をしながらじっくりお互いを知って仲間になってもらったり、様々な取り組みで候補者発掘をしています。

“地域政党”の議員は、一度当選すると選挙に強い人が多い傾向があります。それは、良くも悪くも政党の看板に頼らずに個人の力をしっかりつけて当選しているからです。また、“既成政党”では、自分に関係のないところで、国政での失点やその時の世論で逆風が吹くことも多々ありますが、“地域政党”はまさに自分たちの活動のみを評価され、国政の風に左右されることなく選挙を戦えるという点は強みと言えるでしょう。

<書籍「情報オープン・しがらみフリーの新勢力」より引用>


おわりに

全国を見渡せば、既成政党から独立性の高い無所属議員やその集団としての会派が多くいらっしゃいます。こういった方々が、地域政党の設立を選択肢として検討して下さると、地域政党の機運も高まると期待しており、引き続き、地域政党に関して発信して参ります。

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