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毒親ママに掃除機をかけられる


 「今から掃除機かけるからねー!」

 月に一度の大掃除の日、僕はいつもその声が聞こえると、体がブルッと震えた。
 春から小学校に入学した僕の家では、毎月一回、ママによって大掃除が行われる。いつもは室内に掃除機をかける程度の掃除しかしないお母さんは、月に一回だけは雑巾を使って全体を磨くか、掃除機で物をどかしながら細かくかけていくかの2択がランダムで行う。ただ、どちらの時も共通しているのは、その時に使っていないと判断されたり、もういらないと思われたものは容赦なく捨てられるということだった。たまに僕が学校に行っている間に部屋が片付いていることもあり、その時は必ず何かが捨てられていた。ゴミ箱に捨てている時はまだ拾ってこれるのだが、それ以外でもゴミが多く出たとには、もうゴミ収集車によってゴミ処理場に運ばれてしまっていることが多かった。

(早くしないと、捨てられちゃう!)

 この日も僕はその声が聞こえると、急いでその場で遊んでいたものを片付け始めた。ママによる分別は無条件で行われるものの、床に散らかっていたりするものはどれだけ大事なものだったとしても完璧に片付けられていた(捨てられていた)。

「あとでそっちの部屋も行くからね!」

 ママは自分の部屋にいる僕に向かってそう言った。いつもママは片付けの時間の猶予を少し与えてくれる。時間はそこまで余裕はなく、散らかりすぎているとちょうど片付け終わらないくらいの時間だった。
 あいにく今日は少し部屋の中を散らかしてしまっていたため、床に置いてあるものや机の上のものを中心に、急いで引き出しや棚の中へと戻していった。
 リビングの方ではすでに掃除機がけが始まっていた。いつもは聞こえないシュォオオーーー、シュバッ!!という隙間ノズルで壁際のホコリを吸い取っている音が聞こえてくる。綺麗好きなママは、数少ない忙しくない日であるこの時になんとか綺麗にしようと、徹底的に掃除機をかけるのだった。そして、これを行なってあるということは掃除機をかける日であることも察することができた。

 「掃除機するわよーー」
ガチャッと扉を開けたママは、僕の部屋に入ってくるなりこう言った。

「なんかホコリっぽいわ。一週間掃除してないからかしら。やっぱり工作なんてさせるんじゃなかったわ。」

 僕の部屋では昨日まで学校の作品展で出す物の制作のため、掃除機をかけてもらえていなかった。僕は部屋にあることが多かったため分からなかったが、リビングにいることが多かったママには違いが分かったのだろう。作った作品が出来上がった時にママが複雑な表情をしたのはそのためだったのかもしれない。
 そんなことを考えていると、さっそくコードを引っ張り出しているママは、コンセントの前に立っていた僕に退くように言って、ガチャッとプラグを刺した。そして、なんとかある程度片付け終わった部屋で、ママの操る掃除機は動き始めた。

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