【2024年度】立命ロー中期入試 答案(憲法第1問)


1 概要

 2024年度の立命ロー中期入試(憲法第1問)を解いてみました。
 以下では、問題文のリンクと、答案、若干のコメントを付けています。例によって答案は1時間測って解いたものではないので、再現性は低いです。あくまで参考程度に。

2 問題

3 答案

4 コメント

 ここにきてまさかの1行問題(上から9行分はただのヒントで、実質問題文はした2行のみ)。しかも、受験生がほとんど勉強したことがないであろう国籍関係からの出題でした。

 人権分野からの出題が多い憲法の第1問で、1行問題が出たのは6年ぶりとかではないでしょうか。

 第1問を選択した受験生はかなり少ないと予想されますが、選択した人の中でも、問題の意図を捉えてしっかり書ききれた人はさらに少ないと予想され、それなりに書けていれば高得点がつく予感がします。

 僕自身、正直何書けばいいのか分かりませんでした。国籍離脱の自由なんて、無国籍になる自由までは保障されていないんだということしか知りませんし、憲法10条なんて一回読んだことあるなくらい…そんな状態の僕がなんとなく無難に耐えそうなことを書いた結果が上の答案です。(京大ロー生でも、底辺はこんなもんです)

 幸いにも、問題文にヒントが色々と書いてあるので、それを踏まえて、あとはお気持ち表明すれば何とかなるのではないでしょうか。

答案の中身について

 国籍離脱をしない自由が22条で保障されているかについて、そのような議論があること自体知らなかったので、それっぽいことをでっちあげるしかありません。
 そこで、国籍離脱の自由の保障の中核を、「離脱についての意思決定(選択の機会の保障)」だとして、その趣旨は離脱しない決定にも及ぶから、権利性は満たすとしました。

 次に、制約の点ですが、ここはミスでした。11条が自己の意思で外国籍を取得した場合に限り適用される条文であることから、意思決定自体を制約するものではなく、制約がないことになります。
 つまり、権利性でこの構成にしたことが根本的な問題なわけですが、もう後戻りはできないので、無理矢理制約を認定しました。

 正当化の段階では、国籍離脱の自由が国籍制度を前提としていることから、制度からくる内在的な制約に服することを指摘して、「公共の福祉」による制約としては構成しませんでした。
 これが筋として適切かどうかはわかりません。

 その後の制約の正当化の段階では、
【22条2項が保障しているのは、離脱自体ではなくて、国籍を選択するという自己決定(意思決定)を保障している。
 国籍法11条は自らの意思で多国籍を取得した場合に限るから、国籍を選択するという自己決定自体は侵害していない→22条2項の直接的な制約はない。】
という構成が思いついたのでそのまま書きましたが、目的手段審査してもよかったかもしれません。

 別の構成として、22条2項で国籍を離脱しない自由は保障されていないとした上で、法10条の委任の範囲を逸脱した(裁量の逸脱濫用)かどうかを問題とする構成もありえると思います。この場合、逸脱濫用をしてはならないことの根拠をどうするかが問題となりますが、国籍というものが憲法上の権利の享有主体にも関わる重要な指針であること(憲法第三章の表題が「国民の」となっていること)を指摘して、比例原則(13条)より、裁量の範囲が必要最小限度に限定されると持っていくかなぁという感じです。
 かなり筋が悪いような気もしますが、本番これしか思いつかなかったとしたら、これを書くより仕方ないですもんね。

追記

 中期試験から約1カ月後の10月初めに、本件の問題と同様の事案について最高裁の判断が出されました。
 上告棄却で、合憲との判断です。おそらく、この事案が素材だと思われます。参考までに。


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