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小説同人誌が作りたいけど作れない人へその5/印刷屋さんに頼む事が不安

件の投票が終わった後、リプやマシュマロで設定した項目以外での不安を感じた事について教えて下さった方がいらっしゃったので今回はそれについての体験や聞いた話などをまとめてみます。教えていただいた問題は細かいポイントに別れますが大雑把にまとめると「印刷屋さんに依頼する事で発生するだろう未知の事象に対する不安」って感じかなと思います。

15.印刷屋さんのと交渉が怖い

やや大げさな見出しのような気がしますが、複数のコメントで「印刷屋さんの交渉が自分にできるかどうか不安」というご意見いただきました。初めて本を作るに当たってまずぶち当たる一つに予算の壁がありますがそれと合わせて「本の作り方がさっぱりわからないから出来ない」という問題があります。この点の解決策の一つに「知り合いが作る本に参加する事で同人誌作りを体験」するがあります。

アンソロや合同誌など、名前によって進め方や個人の負担が色々と違って来るんですが要するに「原稿の提出と場合によっては参加費を払うだけ」「入稿データの作成や印刷屋さんへの支払いや在庫管理は主催の人がやってくれる」形式です。実際初めて自分の書いた物が本になったのはこのパターンという方も少なくないようです。

コメント下さった方の中には「この手の他人が作る本に参加させてもらった事はあるが自分一人では本を作った事がない」という方もいらっしゃいました。このケースの方が複数おっしゃっていたのが「印刷屋さんとの交渉が大変そうで自分一人でできるか不安」というご意見です。

この不安って突き詰めると「利用した事がないシステムのお店に初めて一人で入る不安」なのかなと思います。例えばスターバックスを一度も利用した事がない人がメニュー見たらグランデとかベンティってなんだよってなるみたいな奴。(これは私もあんまりスタバ行かないので値段見て判断してます)

特に本作りってやったことないとページ数のカウントとかもさっぱりわかんないですよね。価格表の詳細見たとして「ページ数は表紙4ページ分を含みます」とか言われても「表紙が4ページってどういう事?表紙って一つだけじゃないの?」みたいな。※ちなみに「表紙1~4」についてはポプルスさんのこのページが詳しいです。

この点についての体験談としては「一回やってみるしかない」という回答に落ち着きます。いや、本当に。

だって想像だけして「こんなかなあんなかな」「難しそう……」って妄想してる状態だと「自分は何がわかってないのか」という問題自体がわかんないじゃないですか。その状態で誰かが「何がわからないの?」って言ってくれても「全部」じゃ話が始まらない。アルファベットすら覚えてないのに「英語で文を書いてみたい」って言ってるのと同じです。まず、原稿というか中身が用意出来たら取るべき手段は一つ。本を作った事がある人に聞くか、それが無理なら印刷屋さんのマニュアルを読みましょう。

小説同人誌の場合、基本的に必要な入稿データは二つ。本文データと表紙データです。

本文データは大半の所が「pdf」形式なので基本は完成したらこの形式で保存し直す前提だと考えて下さい。小説本プランがある所などではWordのデータで入稿できる事もありますが非対応の所も多いと考えて下さい。表紙データは形式が色々ありますが無料アプリを使う場合は「psd」形式の物が第一の選択肢です。※この二つについての説明は別の記事でやります。

三番目の記事でも軽く紹介してますが、Wordか一太郎、縦式などがあれば本文データを作るのはさほど難しくありません。表紙データも凝らなければテンプレのデータに文字を入れればわりと簡単です 。※これも別の記事で解説します。

しかし、見積もりを見る上で「ページ数の数え方」がわからないと自動見積もりシステムがあっても、価格一覧表があってもどうにもなりません。それをまず解決して本を作るのにどれくらいお金がかかるか自分で調べられるようになれば印刷屋さんへの発注の第一関門はクリアです。

この点の解決のために必要なマニュアルがめちゃくちゃ親切でおすすめなのがポプルスさん

トップページから「原稿作成について」のページに行ってそこから読めるページは全て読んで下さい。意味がわからなかったらそこは飛ばしていいので概要が理解できるまで読んで下さい。こちらのマニュアルは本当に親切なので有料で紙媒体で売ってもいいんじゃないの?っていうレベルです。とりあえず「用語がわからない」という疑問の大半はここで解決すると思います。

そしてWordのページサイズ設定やpdf変換についてがシンプルでわかりやすいのがプリントオンさんの解説

pdf原稿のカテゴリーの所をしっかり読んでみて下さい。画像での詳細が詳しいですが、字が薄い部分の解説に「フォントの埋め込み」についてなど大事な事が書いてありますのでそこも熟読して下さい。※これも本作った事がないと意味がわからないと思うので別の所で解説します。

「なんか勉強する事がいっぱいで面倒臭そう」と思うかもしれませんがぶっちゃけ本を作るのが最大に面倒臭いのは最初の一回だけです。多分、1回目は多数の人が原稿の不備で失敗する可能性が高いですが一回本を作って流れがわかれば案外簡単です。最初から完璧にやろうと思うとハードルがガン上がりです。刀剣男士だってチュートリアルで中傷を負います。それと一緒。本を作って部分的に失敗するまでがチュートリアルだと思えば怖くありません。※自ジャンルを引用した解説ですみません。

印刷屋さんは大体「完全原稿でお願いします」と表記されていて「原稿不備の指摘は印刷屋の仕事じゃありません」という免責事項になってますがさすがに製本出来ないレベルのやらかし(保存形式を間違えたとかそういうの)についてはデータ不備で連絡が来るはずだと思いますので必要以上に怖がらなくても大丈夫です。

あんまり多くの印刷屋さんを利用した事がないのですが、他の人の体験も聞くに付け、印刷屋さんの中の人は丁寧で親切な対応をして下さる方が殆どです。イベント参加した事ないんですが仕事とはいえ、深夜に送られたデータを徹夜で作って納品してくれる業界って同人印刷くらいのもんじゃないでしょうか。そこまで無茶な要求に応じてくれる業界が初心者の無知からくる失敗にいきなりぶち切れて来るという事はまずあり得ないと思うので「印刷屋さんがなんか怖い」というタイプの人、そこは安心していいと思います。※但し印刷屋さんによってはレスポンスの速度に差があるので「問い合わせしたのに即レスが来ない!」みたいな理由でプンスカしたり不安になったりしない事をおすすめします。

経験者による「印刷屋さんの交渉が大変」というのは大体が「既存のプランにない仕様が可能かの問い合わせ」「この日に入稿しますという予約していたのが出来なくなったのでスケジュール変更を依頼」などイレギュラーなケースの問い合わせがメインとなるかと思いますが、初心者の場合は「原稿に不備があって訂正するよう指示が来たけれど言われている事の意味がわからない」パターンかと思います。私自身がやらかした中ではテンプレの使い方がわからず自作した表紙データのサイズが合ってなくて「指定どおりに訂正したはずのデータを何度作っても背に入れたタイトルがズレるのと塗ってあるはずの部分の幅が微妙に足りない」というパターンでした。※この時は最終的に印刷屋さんが見るに見かねて私の作ったデータを少しだけ拡大する事で対応可能なのでそれで修正していいかと言ってくれたけど本来それは印刷屋さんの仕事じゃない

これについても経験者に助けを求めるなり、印刷屋さんの指示を何度も読んで理解するなど経験でカバーしていくしかない部分はありますがGoogleで検索すれば打開策が見つかるパターンも多いので経験者としては「とりあえずやってみよう」という結論に至ります。

あんまり印刷屋さんに負担をかける事は推奨したくないのですが、イベントが中止、縮小になる中で印刷屋さんの手が比較的空いているのがまさに今です。イベント直前の繁忙期に些細なミスや質問で手を取らせる事を考えると印刷屋さんに余裕がある今こそが初心者の始め時ではないかと思っています。ともかく自動見積もりできる所まで自分のスキルを進めて「いくらで自分の本は作れるのか」までやってみましょう。これについては印刷屋さんに問い合わせしなくていいので誰にも迷惑はかかりません。

とりあえず原稿があるならどこかの印刷屋さんからテンプレをもらうなりしてWordなどでページ数を出して、それに4を足した数(前と後ろの表紙の表と裏で4ページなので)があなたの本のページ数です。「4の倍数で作ってね」という印刷屋さんもありますが偶数なら「22ページしかない場合は24ページ分のお値段で対応します」って所もあるし空白ページいれて対応できるので見積もり時点では大雑把でOKです。それで値段をチェックできるようになって下さい。

16.在庫を抱えるのが不安

印刷屋さんに発注する上で自動見積もりや価格表を見ると大体の人が驚くのが「10冊と30冊の価格だと30冊の代金は10冊の印刷代の三倍より全然安い」パターンではないかと思います。印刷ってたくさん刷ればするほど安くなるんですよね。なので「10冊だけだと大手さんの同じページの本の倍くらいの値段になっちゃう…」というお悩みが発生したりします。

これについては「少部数は割高になる」という点についてはあきらめるしかないというのが結論です。「たくさん刷れば安く頒布できるけど在庫が」という迷いがあれば個人的には「割高でも少部数での印刷」をおすすめします。もしフォロワーさんが多くてpixivのブクマもそれなりにつく、という人であればいきなりたくさん刷っても捌けるかもしれませんが普通は「思ったより売れない」と思っておいた方がいいかと思います。特にイベントであればお祭り感覚で「目に留まったから買う」という方も多いのですが通販の場合「好きな作家さんの本を厳選して買う」パターンが多くなります。

また、自家通販する場合、慣れないと梱包資材の準備の時点で相当疲れます。書店委託やBOOTHなどの倉庫発送サービスを利用する方法もありますが手数料と時間がかかるデメリットもあります。

一番確実なのはTwitterで相互さん中心に予約を募ってその冊数に一番近い所で発注した後匿名配送サービスを利用するなどして送付する方法です。

正直な所、よほど人気がある作品でもない場合、初めて同人誌を作る場合、印刷代を全て回収するのは無理という前提で決断する事をおすすめします。作った本を全て売り切ろうという目標を設定すると、その分未知の作業で発生するストレスが大きくなります。

以前の記事に書いたように通常の同人誌印刷は大体が最低10冊程度からになるのでその最小ロットでも在庫が出るリスクがあってそれを回避したい場合はオンデマンドで一冊だけ作れるサービスや一冊だけ作れるプランを利用するのが確実です。

オンデマンドで受注印刷できる所は基本的に装丁に凝れません。そういう意味では選択肢の多いプリントオンさんが一冊だけからの注文OKにしている今はボーナスチャンスです。装丁にこだわりがある人はこの機会を逃す手はありません。ぜひチェックしてみて下さい。

ちなみに私がこの記事を書き始めた理由が「自分では大した支援の発注できないので印刷屋さんデビューする人を増やして同人印刷屋さん業界の支援がしたい」という他力本願な物なのでコピー本の解説はしてないのですが一応コピー本の作り方の記事も紹介しておきます。

コピー本で自作を本の形にする事を体験して印刷屋さんに発注するステップを踏んで下さるから増えればと思います。

後、私が利用している印刷屋さんが「一冊無料キャンペーン」やってますのでデータ登録だけでもぜひどうぞ。「作者のみ公開」でも一冊もらえるようです。

pixivの小説の再録が欲しいとリクエストいただいたので300p超えの文庫5冊を一度に作るという暴挙をやらかしましたが印刷屋さんの送料負担で5冊もらってしまったので申し訳なくもありましたがお得なのでぜひ。※オンデマンドの委託印刷形式での頒布はジャンルによってはNGだったり禁止されていない界隈でも人によって判断が分かれます。その点が不安な方は「作者のみ」の公開範囲にしておけば注文できるのは作者のみとなりますので必要数だけ注文して自分に送って貰って自家通販という方法をおすすめします。

質問はコメントかマシュマロをご利用下さい

※なんかこの記事、空白が下部にめっちゃ入ってて削除ボタン連打してもどうにもなんないので放置してます。スクロールしたらおまけデータとかはないです。ごめんなさい。

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