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ベストアルバム2023上半期 30選

上半期ベスト30選

 上半期はちょっとコンスタントに聴いていたと言うよりは、積んだり一気に聴いたりとムラのある音楽生活を送っていました。ゲームや小説を触っている時間によって生じたムラですね。私はデジタル版を購入してインポートしてから聴く、という生活をしているので、インポートの時間が取れないとどんどん音源が積まれて行ってしまい、リリースしたての新鮮ホヤホヤの状態で聴けないこともままあるので、その辺りは自分の怠惰を反省しています。

 さて今回は2023年の上半期のよく聴いたアルバムを30枚だけ紹介しようと思います。順位は付けずアルファベット順表記で記載していきます。プレイリストも用意しましたので、それを聴きながら皆さんの新しい出会いや再発見などできたら嬉しい限りです。それではやっていきましょう。

a.s.o. / a.s.o.

ベルリンベースのSSWとプロデュサー二人組によるDream Pop~Trip-Hopプロジェクトのデビュー・アルバム。リヴァーブがかった幽玄な女性ボーカルにTrip-Hopを思わせるオケが乗って印象的。

amaarae / Fountain Baby

ガーナ系アメリカ人のamaaraeの2nd、モダンなR&B~Popを鳴らす。中にはオルタナティブ・ロックを思わせるような曲もあり思いの外多様な表現力に驚かされる。

Bianca Scout / The Heart of the Anchoress

サウスロンドン拠点の作曲家、振付師によるExperimentalなプロジェクト。捻れたAmbient的音響から彼女の歌声によるBedroom Popの要素が混ざり合って熱に浮かされた夢のような甘みを味わうことができる。

Caroline Polachek / Desire, I Want to Turn Into You

アメリカのSSWによる4枚目。一作ごとに十分な時間を置いて制作する彼女だけれど、その出来は時代ごとに決して浮くことのない皮膚感覚を持ち合わせている。

feeble little horse / Girl with Fish

アメリカはペンシルバニアのNoise~Shoegaze~Popバンドの2nd。歪んだギターフレーズにポップセンス抜群のボーカルラインがクセになる。脱力と暴力をないまぜにしたサウンドが素晴らしい。

Fever Ray / Radical Romantics

The Knifeのボーカリストとしても知られているKarin Dreijerによるソロ・プロジェクト、6年ぶりの3rd。彼女特有の呪術的な歌唱にフロアとベッドルームの融合。そう言うとちょっと100%Silkの作風を思い浮かべるけれど、もっとゴシックでパワフルだ。

Interbellum / Our House Is Very Beautiful at Night

レバノンはベイルートのSSW、Karl Mattarによるプロジェクト。多重録音で分裂するヴォーカルとビンテージな耳障りのギターが特徴的。少しの寂しさと暖かさを感じさせる良質なモダンなFolkアルバム。

Jackie Mendoza / Galaxia de Emociones

カルフォルニアのSSWの1st。そのキャリアのスタートはブエノスアイレス。Latin MusicとElectronic Music のミュータント、更にはウクレレが鳴るという自由ぶり。ラテン音楽をベースにした実験精神とPop感覚が非常に良い。クィアアーティストがクィアであることでなにかのアピールになるのが時代遅れとなるカラフルな時代が来ることを願う。

Jess Williamson / Time Ain't Accidental

ロスアンゼルス拠点のSSWの5thアルバム。Country Musicのモダナイズ一つの完成形。近年、Countryはちょっと昔のAltanative Countryとはまた別の視点から再構築されている。その密かな潮流を汲む作品の一つと言えそう。

JPEGMAFIA & Danny Brown / Scaring the Hoes

アメリカの二人のRapperがまるまる一枚コラボレーションしたアルバム。サンプリングネタの遊びとトラックの出来の良さに驚かされる。ブリッブリのサウンドからメロウなナンバーまでないまぜになった贅沢盤。

Kali Uchis / Red Moon In Venus

コロンビア系アメリカ人のポップスターによる3rdアルバム。その活動で一貫してきたラテン音楽とR&Bの境界線を融解させるセンスや方向性はそのままで、コアな音楽ファンにも届く強度の音楽を今回も聴かせてくれた。

Kate NV / WOW

ロシアのプロデューサー兼SSWによる4作目。食品まつりの作詞で幕を開ける一曲目からからしてストレンジなポップさで脳をバグらせてくる。今までの作風に加えて、こうしたデジタルサイケデリックなコミカルさが目立っている。

Kelela / Raven

アメリカのSSWによる2ndアルバム。クラブミュージックに対する広い趣味嗜好、あるいは造詣から展開されるR&Bは最新鋭のブラックミュージックのあり方の一つを定義している。

Liv.e / Girl in the Half Pearl

ロスアンゼルスベースのR&B、SSWによる2ndアルバム。メンフィスラップとブルーズがクロスオーバーする、心地よい作風で、腰を落ち着けて音楽に向き合うことに喜びを感じさせる作品。

Mandy, Indiana / i've seen a way

マンチェスター拠点のIndustrialなNoise Rockバンドによる1st。ショッピングモールや洞窟などで録音されたというこの作品は、攻撃的なのに横ノリさせる稀有な音楽。注目の新人。

Marlene Ribeiro / Toquei no Sol

Gnodのメンバーとしても活動するMarlene Ribeiroによるソロプロジェクト、その1stアルバム。サイケデリックでドリーミィーな曼荼羅的Drone Pop。様々な地域で作曲されたこのアルバムは彼女の旅行記としても読み解ける。

Melati ESP / hipernatural

Asa Toneのメンバーの一人であるMelati Malayによるソロ・プロジェクトのデビューアルバム。Asa Toneにも見られたNew Age的な質感を継承しつつサイバーパンクに足を踏み入れている奇妙で非常に今っぽい作風。好みど真ん中。

Neggy Gemmy / CBD Reiki Moonbeam

ロスアンゼルス拠点のElectronic Musicプロデューサーによる1stアルバム。Negative Geminiの名前で活動していたところ改名。Vaporwaveで世界に生まれた独特の仮想現実的世界観を継承しつつ独自のダンスミュージックに辿り着いている。

파란노을 (Parannoul) / After the Magic

韓国のShoegazeソロプロジェクトであるParannoulによる3rdアルバム。孤独の中で鳴らされる音はどうしようもなくエモーショナルでいて、寂寞を掻き立てる。このアルバムの後にリリースされたライブアルバム、After the Nightもオススメ。どちらもNYP。

U.S. Girls / Bless This Mess

Meghan Remyによるソロ・プロジェクトの8th。もう8枚目。70~80年代風のFunkやR&B、Discoなどのエッセンスをふんだんに盛り込んだポップアルバム。今までの作品の中でも特にフレンドリーな内容。

Unknown Mortal Orchestra / V

ニュージーランドのPsychedelicなバンドによるタイトル通りの5枚目。彼ら特有の抑制され独特のミニマリズムに貫かれたリフレインに強い郷愁感はそのままに70~80年代のAORなど要素を強く反映させた陽炎のようなアルバム。

Wednesday / Rat Saw God

アメリカのCountry~Shoegazeバンドによる5thアルバム。ただでさえ、CountryとShoegazeという混ざる筈もなかった音楽性を一つにまとめ上げて、そこで感情を爆発させるような破壊的な作品を作り上げた。Bull Believer、かっこよすぎる。

Yaeji / With a Hammer

アメリカのSSW、プロデューサーの1stアルバム。若々しいポップセンスとクラブサウンドの解剖台の上の美しい会合。韓国語と英語が入り交じる歌も非常に特徴的。

Yikii / The Crow​-​Cyan Lake 鸦​青​湖​畔

中国を拠点とするソロアーティストによる、数えきれないリリース数の中の最新作。ゴシックで病的な世界観が特徴的な彼女による2年ぶりのアルバム。アジアの幽玄な地獄で彼女と出会うのも良い。

Yo La Tengo / This Stupid World

アメリカIndie Rockの至宝、Yo La Tengoの17枚目のアルバム。最初から最後まであの頃のYo La Tengo、青春を感じさせる暴れるギターのFalloutから、メロウなMiles Awayまで、最初から最後までずっとYo La Tengo。最高。

You Can Can / You Can Can

カナダはトロントの実験的デュオの1st。フィールドレコーディングと様々なノイズのブリコラージュを背景に鳴らされるAmbient~Folk。美と怪奇さがないまぜになった21世紀のExperimental Country。

Youth Lagoon / Heaven Is a Junkyard

アイダホ拠点のTrevor Powersによるソロ・プロジェクトによる8年ぶり4枚目のアルバム。当時、彼の登場は私の周りの音楽ファンたちを湧かせたのを覚えている。それが音沙汰なくなってほとんど忘れかけたときに届いたのがこの作品。様々な悲劇の先にあるとても美しいアルバム。

Yves Tumor / Praise a Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)

アメリカのExperimental Electronic Popアーティストによる5th。ヴィジュアルのインパクトもそのロックスターぶりを後押しするが、音楽は実に感情に誠実で暴力的。そのキャラクター、音楽性が私を踊らせる。

Zoë Mc Pherson / Pitch Blender

ベルリンを拠点とするフランス系アイルランド人による3枚目のサウンドアート作品。複雑に蠕動するリズムが私の腰と脳を揺らす。ポリリズミックで重層的なトラックだけれど、どこか耳に残る。

100 gecs / 10,000 gecs

アメリカのHyperpopデュオによる4年ぶり2ndアルバム。ブリブリ陽キャなHi-Fi超ポップアルバム。とりあえず踊れば良いんじゃないか、というあっけらかんとした雰囲気がとにかく強い。

最後に

上半期は個人的に豊作でした。ここに挙げた以外にも様々な良作アルバムに出会えて非常に幸福な上半期だと思います。個人的にはPost-Rock、Electronicaの20年選手たちが精力的なアルバム発表を行っていてなんとも奇妙な郷愁感に襲われて情緒不安定になり、良い体験をしているな、と感じたりしています。他の人の上半期ベストなども見て、あー、これ良かったよなぁ、と思ったりと色々と楽しめましたので、これを見たどなたかも同じように楽しめてくれると嬉しいという気持ちです。それでは下半期もガンガン聴いていきましょう。

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