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Fievel Is Glauque / Flaming Swords 軽やかな剣戟

Fievel Is Glauque / Flaming Swords

 徐々に寒さの凍む時期に燃ゆる剣が舞う。M18を除き、2分前後のショートピースが熱を帯びて聴くものの芯を温める。
 リメイクアルバムFiscal, Remote, DistilledをリリースしたBlanche Blanche Blancheでも活躍するニューヨークのマルチアーティストZach PhillipsとブリュッセルのボーカリストMa Clémentを中心にしたJazz~Art Pop~Progressive PopユニットFievel Is Glauqueの2枚目のアルバム。2021年に最初カセットリリースしたGod's Trashmen Sent to Right the Messは荒いモノラル録音のLo-Fiさが際立っていた。それに対して今作はクリアでリッチな音質で前作のイメージを払拭している。
 ロベルト・ボラーニョは2666の中で多くの場合人々が求めているのは、「戦慄させ傷つけ、血と致命傷と悪臭をもたらすもの」との闘いではなく、「完璧な秀作」を見たがっていると書いていたが、今作はまさに作曲やアレンジの精密さと、それを一息に録音した彼らプレイヤー同士のライブ感のある剣さばきが立体的に音像を拡散している。ボラーニョに於いてはそれは嘆きではあったが、今作に於いてその剣舞を見るのはやはり抗えない快楽だと思う。曲とアルバム全体の短さもまた、今作を親しみやすいものにしている。複雑でテクニカルなホーンやキーボード、ドラミングの間を軽やかに通り抜けていくMa Clémentの穏やかなボーカルは、作品にポプリのような独特で香り高い香気を与えた。
 Jazzだけでなく変則的なポップを好む人は是非とも一聴して欲しい。プレイヤー同士の掛け合いによる音遊び的な楽しさが溢れている。


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