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詩「雨」

雨が一滴、空から降ってくる
まだ上空千メートル、地上では
誰も気づいていない
 
しばらく一滴のまま落ちてきた雨は
上空八百メートルぐらいで風にあおられて
二滴に分裂する
 
一滴はそのまま風に乗って横向きに
移動していく
もう一滴は身軽になったから
まっすぐ下へ落ちていく
 
落ちていきながらまたあおられて
また分裂する
上空五百メートル
今度は二滴とも並んで
同じ速度ですすんでいく
 
最初に分かれた子はどうなったのだろう
風にのって遠くへ行ってしまった
 
上空三百メートル
また強い風が吹いて
雨は二滴、三滴と分かれていく
 
小さくなって耐久力を失った雨は
風の力に耐えきれずに霧散する
 
上空百メートル
雨は無数の目に見えない粒子となって
最初の子もわからなくなって
地上に到達する
 
人々は笑っていた

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