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詩「川」

空の穴から川が流れ出ているのを見た

ちょっとした丘ぐらいの高さに黒い穴が開いていて
そこから下の方に水が落ちていく

そして途中でカーブしながら
こちらに向かって流れている

川はぼくの横を過ぎて
そのまま見えなくなるまで真っすぐ進んでいく

水をつかもうとして
川に向かって腕を振り下ろすのだけれど
何も当たらないまま空振りする

川にはいろんなものが流れている

ぼくの帽子とか服とか
大事な本とか
家族とか
心とか

そういうものを捕まえようと
ぼくは必死に腕を振り下ろすのだけれど
何もつかめない

太陽がじりじりと照りつけてくるころ
川はすこしづつ干上がっていく

完全に干上がったところで
ぼくは目を覚ます

そしてすべてが夢の通りであることを知る

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