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【西日本豪雨】交通対応最前線ダイアリー:7月12日-離れ業

7月12日(木)晴れ

前日の深夜から,国道31号が通れるようになった.完全回復ではなく,暫定的な開通である.
大きな被害が出ていた,国道31号の水尻地区.山の中腹を通る広島呉道路が崩落し,その裾を走るJR呉線,国道31号を埋め尽くした.3本の動脈が切れていた.
この区間,駅の向かいに人工のビーチがあるのが救いだった.国道31号が通行止めになりながらも,地域の住民や自転車・二輪車はなんとか通っていたようであった.後に国土交通省広島国道事務所の関係者の方に聞くと,「人が通っているなら,なんとしてでも道路を通してしまえ」,という発想で,ビーチの駐車場を通し,超・短期間で整備ができた.

通行が可能となった翌朝10時に,この現場を通過した.ただ,広島市内からここに向かうまでが大変だった.この頃までは,広島と呉との間のルートは,海田大橋から広島熊野道路を経由し,その後県道33号の峠道を経由する.海田地区で道路が大渋滞していた.ただ,海田地区から国道31号のこの現場までは,混んでいなかった.おそらく,国道31号が通れるようになったという情報が,まだ広まっていなかったためだと思われる.公式に発表となったのが夜の23時.翌日の新聞に間に合う時間ではない.「とにかく早く開通させる!」という国土交通省の執念を感じた.

坂駅前を通過し,水尻地区まではスイスイと流れた.現場に近づくと,案内看板が出てくる.どんな様子なのだろうか.
ビーチの駐車場が見えてきた.まず見えたのは,「災害対策基本法」に基づき,然るべき手続きの上で移動された車(←国土交通省広島国道事務所ホームページの資料にリンク)であった.流れでた土砂に埋まり,ドロドロとなった車が留置されていた.

▼右手はビーチ駐車場の北端.土砂に埋もれて,移動された車が留置

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▼国道31号からビーチ駐車場へと差し掛かるスロープ.左側の土は,国道31号に覆い被さっている

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▼駐車場内も大型車も通れるように舗装がしっかりなされている.
左は国土交通省の衛星中継車

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▼崩落した斜面.JR呉線の線路と国道31号を覆い被さるどころか,積み重なっている.

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▼流出部.公園のフェンスをうまく交わすように設計されていた

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この時の対応の様子は,2019年12月に開催された,「日本道路会議」でパネルディスカッションを行い,報告している(報告資料).短期で実現できたポイントとして,設計したコンサルタント,現場で施工された建設会社の方々との連携体制ほかご尽力や,舗装のための合材が確保し,かつ,許される時間内で運ぶことができたことが挙げれれていた.合材プラントは広島から西に離れたところにあったが,広島高速の協力もあり,なんとかその時間内に運ぶことができたという話であった,「土木」の総合力,実力である.

ただ,初めて自分の目で見た,交通のインフラが被災した現場であった.衝撃的であった.この流れ出た土砂を完全に撤去するには,相当の時間がかかるなとも感じた.道路は通ったものの,人々や輸送の確保という面では,長い間時間がかかるのは間違いないとも思えた.もし,この状態で代行バスを運転すると,とんでもなく所要時間がかかり,機能しなくなるだろうなと.
移動中,並行するJR呉線の被災状況も確認しながら行ったが,小規模な土砂崩落はあったが,水尻地区以外は,それほど大規模なものはなかった.使えるところから使う作戦もアリかなあ,とかも考えていた.

呉に行く途中,自宅が被災したという学生の家に立ち寄った.「何か困っているか?」というと,何をしたら良いのかがわからない,と.家によって,保護者ともお会いし,とるべき手続きなどを説明した.また,本人の移動手段がない,ということだったので,自転車を貸した.

▼自宅が被災した学生の家の裏山の様子

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学校に到着し,これまでオンラインで会議などでやりとりを続けていた,有志で活動していた先生方とも再開した.先生方とも情報交換を行った.リアルなミーティングはやはり良い.その日のミーティングは,学生の教育のために,そして,地域の復旧のために,学生のボランティア制度をどのようにするか,というのが主なテーマだった.しかし,クリアすべき課題もそれなりにあった.



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