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機械設計技術者試験|4.流体力学 1⃣

令和2年度 機械設計技術者試験 3級 試験問題Ⅰの解説です。
試験問題は日本機械設計工業会(JMDIA)のHPに掲載されています。
試験問題リンク

※本ページの解説はJMDIA公式のものではなく、投稿者個人で作成したものです。予めご了承ください。

1⃣は「流体工学のキーワード」に関する問題です。

【A】の解説

解答:『理想流体』

解説:流体の粘性による分類の問題です。粘性の観点から流体を分類すると次のようになります。(粘性について詳しく学習したい方はこちらを参考にしてください)

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粘度のある流体を粘性流体、粘度がゼロの流体を非粘性流体といいます。実在する流体は全て粘度があり、粘性流体となります。非粘性流体は実在しませんが、理論的な扱いが容易となり流体の性質を知るうえで非常に重要な役割を持ちます。非粘性流体は「理想流体」や「完全流体」と呼ぶこともあります。

粘性流体はさらにニュートン流体と非ニュートン流体に分類されます。速度勾配とせん断応力が線形関係にある流体をニュートン流体、非線形関係にある流体を非ニュートン流体となります。ニュートン流体と非ニュートン流体については、こちらの動画が分かりやすく解説されています。

【B】の解説

解答:『絶対圧

解説:圧力の種類に関する問題です。圧力には「絶対圧」と「ゲージ圧」の2種類があります。「絶対圧」は絶対真空を基準(ゼロ)とした圧力で、「ゲージ圧」は大気圧を基準とした圧力です。「ゲージ圧」=「絶対圧」ー「大気圧」の関係があります。

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【C】の解説

解答:毛管現象

解説:細い管(毛管)を液中に立てたとき、管壁面付近の傾きを持った液面が縮まろうとする力によって管内の液面が上昇したり下降したりする現象を毛管現象(毛細管現象)といいます。壁面付近の液面の傾きは濡れ性によって決まります。また液面が縮まろうとする力は表面張力(表面をできるだけ小さくしようとする性質)です。毛管現象についてはこちらのサイトが直観的に理解しやすいです。

【D】の解説

解答:『アルキメデスの原理

解説:液体中にある物体は物体の体積と同じ液体の体積分の重量と等しい浮力を受ける原理をアルキメデスの原理と言います。アルキメデスの原理について詳しい説明や証明はこちらを参考にしてください。

【E】の解説

解答:『喫水』

解説:浮揚体の液面から物体の最下面までの距離を喫水といいます。よく船舶で使用される言葉で、船首や船尾に喫水マークが描かれています。喫水を計ることでアルキメデスの原理より船舶の重量を計算することができます。どれくらい燃料や貨物を積んだかが一目で分かるようになっています。

【F】の解説

解答:『フルード数』

解説:慣性力と重力の比を表した無次元量をフルード数といいます。移動する船が波を起こす現象(造波抵抗)はフルード数がキーファクターになるようです(参考ページ)。

フルード数を使って「巨人が一般的な人の動きと比べてゆっくりと動くように見える理由」を説明している動画も面白いので参考に見てみてください。

【G】の解説

解答:『ダランベールの背理』

解説:円柱周りの流れにおいて、理想流体を仮定すると円柱は流体から全く力を受けないという結論が導き出されてしまいます。これをダランベールの背理といいます。ベルヌーイの定理を用いて円柱が受ける圧力を全周に渡って積分するとゼロとなってしまいます。このパラドクスは、粘性の影響を考慮し境界層という概念を導入することで解決できます。

【H】の解説

解答:『境界層』

解説:粘性流れにおいて粘性による影響を強く受ける層を境界層といいます。境界層の厚みは主流速度U(x)の99%の流速までの厚みと定義されています。レイノルズ数が大きい領域を層流境界層といい境界層は薄いが、レイノルズ数が小さくなると乱流境界層に遷移し急激に境界層が厚くなります。境界層について詳しくはこちらを参考にしてください。

【I】の解説

解答:『ハーゲン・ポアズイユ流れ』

解説:断面積が一定の円管内をゆっくり流れる層流での流れを、ハーゲン・ポアズイユ流れといいます。円管内の流れは管内部の摩擦によって圧力の損失を引き起こします。この圧力損失は、ダルシー・ワイスバッハの式で求めることができます。ダルシー・ワイスバッハの式の中には管摩擦係数があり、これはレイノルズ数の逆数に比例します。詳しくはこちらを参考にしてください。

【J】の解説

解答:『ムーディ線』

解説:乱流での円管内の流れで、管内壁の粗さを無視できない場合、管摩擦係数はレイノルズ数に加えて相対粗さも変数に加わってきます。この管摩擦係数とレイノルズ数と相対粗さの関係をグラフで表したものをムーディ線図といいます。【I】の解説内の参考ページの後段にムーディ線図があります。

以上

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