政治資金問題による閣僚交代は岸田内閣にどのような影響を与えるか

自民党の派閥における政治資金パーティーをめぐる問題では、岸田文雄首相が12月14日(木)に問題の源となった安倍派の閣僚4名と副大臣5名を交代させる方針を決めました[1]。

今回の件では、安倍派の閣僚を交代させ、その後任に安倍派以外の人物を起用すれば少なくとも閣僚の中から安倍派を一層することになります。

また、世論の反発や一層の支持率の低下を踏まえた上で安倍派から1人でも後任の閣僚を起用すれば、同派に対して大きな貸しを作ることになります。

実際、安倍派の若手議員の反発を受けて政務官まで一斉に交代させることを見合わせたことは、すでに同派に対して貸しを作ったことになりますから、今後派内で執行部の一新や若返りが議論される際に岸田首相は自らに借りのある議員たちを同派の幹部に送り込む機会を得ることになります。

一方、政治資金にかかわる問題が安倍派に限らず自民党の各派閥に様々な形で見出される状況は、自民党にとっては痛手ではあるものの、当面は岸田政権そのものが揺らぐことはないでしょう。

何故なら、岸田首相を退陣させて新たな政権を発足させたとしても、新政権の閣僚が政治資金問題と完全に無関係であることが明らかでなければ、同様の批判を受け続け、政権運営が立ち行かなくなるからです。

むしろ、岸田首相に問題の解決を任せ、一連の出来事が終息した後に交代させる方が、次の政権を担当する者にとっては望ましいと言えます。

本来であれば危機的な状況であるにもかかわらず依然として岸田首相が問題を他人事のようにとらえる姿を示すのは、このような事情を反映したものであり、安倍派の衰退と政権運営の主導権の掌握を実現できる格好の機会ということになります。

それだけに、今回の一件によって岸田首相が長期政権への道を歩み出すとすれば、その後の展開がどのようなものになるのか、一層注目されます。

[1]「安倍派一掃」見送りへ. 毎日新聞, 2023年12月13日朝刊1面.

<Executive Summary>
Are the Policital Fund Issues the Path for the Long Term Administration for the Kishida Cabinet? (Yusuke Suzumura)

The Kishida Fumio Cabinet will replace some Ministers by the reason of the LDP's political fund issues on 14th December 2023. On this occasion, we examine this replacement and its meaning for Prime Minister Fumio Kishida.

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