見出し画像

インフルエンサー級の影響力が手に入る本『影響力の科学』

本書は一言でいうと「誰でもインフルエンサーなみの影響力を手に入れる方法」を科学的に述べた本です。

より具体的に問いを分解すると

  • インフルエンサーは、なぜあんなにたくさんの人を動かせて、お金を儲けることができるのか?

  • どうすれば、あんなにたくさんのフォロワーを獲得できるのか?

  • インフルエンサーが持っている影響力を、パンピーである我々が手に入れるにはどうすればよいのか?

これらの問いに答えてくれる本。
それが『影響力の科学』です。

『影響力の科学』ってどんな本?

アメリカに、著名人が集う「インフルエンサーの夕食会」を主宰している行動科学者ジョン・レヴィ氏という方がおりまして。
この著者は、昔は借金だらけで太りすぎの大したことない一般ピープルだったそうで。
とりあえず、苦肉の策で、12名の知り合いを集めた夕食会を行ったそうです。

しかも、
・名前はファーストネームのみ共有
・仕事の話はNG
・料理、食事、片づけまでを共に行う(やらされる)
…という謎ルール夕食会なんですよね。

よく聞く「MBA」とか「経済〇〇団体」の集い的な
・名前、会社、肩書が入った名刺を共有しまくり
・仕事の話が中心で
・豪華な料理が用意されていて会話に集中できる
…という、いわゆるネットワーキングの場とは180度違うわけです。

にも関わらず、前者の「謎ルール夕食会」には、次々と著名人が集まってきたそうです。
ノーベル賞受賞者、オリンピック選手、経営者からアーティストまで、名前を聞くとビックリするような著名人がこぞって集まってきたとのこと。

なぜ、パッと見まったく魅力的でない「謎ルール夕食会」に人が集うのか?
この問いに答えながら「影響力を持つ人とつながり、自分の影響力を強くしていく方法論」を科学的に述べているのが、本書『影響力の科学』なわけです。

人生の質は「誰と一緒にいるか」で決まる

ここで、本書の根底にある考え方を先にご紹介しておきます。

私たちの人生の質を決定づける基本的な要素は、私たちを取り巻く人々と、その人々との関係である。

『影響力の科学』p16

これが、本書の土台of土台となる考え方です。
「・・・え、どゆこと?」と思いますよね?

私なりに強引に言い換えると「何をするかより、誰といるかが大事」という意味だと捉えています。
本書にちょうどいい具体例が書かれていたので紹介すると・・・

  • 97kgから64kgに痩せたいと思った女性が取った行動は、「同じく体重で悩んでいる友人たち」と苦悩を打ち明け合うコミュニティを築いたこと。その活動を広げていった結果、彼女は53年間ずっと体重をキープしただけでなく、世界中の何千万人ものダイエットを成功させた

  • 肥満の友人(Aさん)がいる場合、自分が肥満になる確率は45%増加、Aさんのことを知らない自分の友人が肥満になる確率は20%増加する

この事例をはじめ、「誰と一緒にいるか」の重要性を示す例や研究結果を胃もたれするくらい突き付けてくるのが、本書の特徴の一つでもあります。

たしかに、思い返してみれば、私にも「コミュニティに大いに影響を受けた経験」が多々あります。

  • 同じ参考書を使っているはずなのに、1人で黙々と学ぶよりも、浪人仲間と同じ教室で学び合い、悩みを打ち明け合っているときのほうが、学力的にも精神衛生的にも良い影響があった

  • MBAというコミュニティに身を置くと「空き時間はスキルアップや知識補填に充てることが当たり前」という感覚になり、学習習慣が根付いた

  • 起業や独立している知人と出会ってからのほうが、副業?本業?の活動が増えて収入も増えた

などなど、「誰と一緒にいるか」によって人生の質が大きく変わりました。

本書のメインディッシュ「影響力の方程式」

「誰と一緒にいるかが、人生の質を決定づける」
この基本思想に則ったうえで、本書はとある方程式を授けてくれます。

影響力=(信頼×つながり)を共同体意識で累乗したもの

要は「影響力が持つ人とつながって、自分の影響力を高めて行きましょうね」と言っている方程式です。
この方程式に沿って、本書の章立ては展開されております。

詳しい話は本書に譲りますが、私なりにこの方程式についての学びをまとめると、次の1枚のとおりです。

「画像が見づらい」という方向けに、スライドに書いたテキストをこちらに転記すると

■「信頼」を強めるには?

  • 「能力」「誠実さ」「徳」が信頼の土台となる

  • 「共通の知人の有無」が信頼を大きく左右する

  • 一緒に労力を費やす体験をする


■「つながり」を強めるには?

  • 「労力を費やしたい」と思える場を提供する

  • 近隣の分野の人々を集める

  • 相手が欲するスキル・機会・リソースを提供する


■「共同体意識」を強めるには?

  • 内側と外側の境界線を引き、心理的安全と帰属意識を与える

  • メンバーと共同体同士で影響力を高め合う

  • メンバーと共同体のニーズが一致している


搔い摘むと、上記のようなエッセンスを学び取ったわけですが、改めて自分の経験と照らし合わせると、思い当たる節がたくさんあるなと。

「同じ釜の飯を食った仲間体験」をいかに作るかが重要

本書の重要な方程式
影響力=(信頼×つながり)を共同体意識で累乗したもの

この方程式の一要素である「信頼」を強めるために有効なのが「一緒に労力を費やす体験をしてみること」だと本書から学びました。

私はこれを「同じ釜の飯を食った仲間体験」と呼んでいます。
大小問わず、この体験をいかに作っていくかが、業務改革においても重要だと考えます。

この話をするときに真っ先に思い浮かべるのが、コンサル時代に関わった「営業部門の数値見える化プロジェクト」です。

東京、大阪、名古屋、福岡、北海道、それぞれ地域最適なロジックで作りこまれた営業数字Excel。
これらを、経営層はじめ誰もが同じロジック同じツールで参照できるようにするプロジェクトでした。

経営層もGOサインを出してくれ、現場スタッフからも「待ってました。これでExcel更新業務から解放される」と歓喜の声をもらっていました。
「お、こんなに大歓迎ムードなら、楽勝じゃね」と思ってのぞんだプロジェクトでしたが、1つだけ大きな障壁が。

大阪の営業リーダーであるAさんが大いに難色を示していました。
元々、別プロジェクトでの会議体でも、Aさんとは何度かバトルを繰り広げていました。
Aさんが僕のことを良く思ってないことも周囲から聞いていたので、正直やりづらいのなんの。
ある会議では「君は、私たちの業務をやったことないから、そんなことが言えるんだ」なんて嫌味を言われ、それに対して私も「いい加減にしてくれ」とキレるなんてこともありました。

ただ、しつこく何度も「営業数値のロジックを全国でそろえる目的」「Excelを撤廃して、分析ツールに移行するメリット」を説明するにつれて、少しずつAさんも耳を傾けてくれるように。

で、「あ、これが分岐点だったな」と思うエピソードがあって。
Excelから分析ツールに移行するときに、「Excelで見ていた数値と、新しい分析ツールの数値とで、ズレがないか」をチェックする作業があったんですよ。
これが大変で大変で。
お手製かつ複雑に作りこまれたExcelが、全国分存在するわけです。
それらのExcelの数値と、新分析ツールの数値に差分があった場合は「Excelと新ツールどちらに間違いがあるのか」を毎回クリアにしていく必要があります。
Aさんも私も他業務を掛け持ちしつつ、業後に夜な夜な、この数値チェック作業をやっていくわけです。
このやりとりが超しんどくて、1ヵ月はかかりました。

ただ、この「同じ釜の飯を食った仲間体験=一緒に労力を費やす時間」があったおかげで、Aさんとはそれなりに信頼関係が芽生えました。

そのあとは、苦労して一緒に作り上げた分析ツールについて、Aさんが率先して全国の営業チームに説明してくれて、無事プロジェクトの目的が達成されました。
それだけじゃなくて、別のプロジェクトでご一緒したときも、Aさんのチームに負担をかけるような作業であっても、Aさんが自分からチームの説得を買って出てくれるまでに。この瞬間は、マジで感動したのを覚えています。

今回の『影響力の科学』を読んだあとに、改めて↑のエピソードを振り返ると「Aさんに信頼してもらったおかげで、Aさんの影響力を借りることができた」んだと気づかされました。

キーパーソンの力を借りてプロジェクトを円滑に進めたい。
そのためには、早めに「キーパーソンと一緒に労力を費やす時間=同じ釜の飯を食う仲間体験」を作るのが成功のカギである。
この学びは、今も業務改革やDXを進めるのに役立っています。


以上、最後は私事の話に逸れてしまいましたが、本書の1~2行を読むだけで、これだけ語れてしまう。
それくらい、学びの濃い一冊でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?