見出し画像

「地方創生」という誤解

日本の地方を元気にする。

つまり、人口が減り、衰退していく地方を活性化するため、都市部(特に東京)への人口の一極集中を是正し、比較的出生率が高い地方に移住してもらうことで日本の人口を維持/減少のペースを遅めるということで税収及び国力を担保するということです。

しかしながら、総務省の地域おこし協力隊制度を通じて地方役場で2年間働いていた身としては、地方が衰退していっている現状に対して、「人口減少」をはじめとした表層的な問題にばかり捉われている気がします。

よって、このnote記事では自分が実際に「地方創生」の第一線で活動して感じた根本的な問題とこれから求められる地方創生の考え方について書いていきます。

※地域おこし協力隊:https://www.soumu.go.jp/main_content/000610488.pdf

増田レポート

そもそも「地方創生」が叫ばれ始めたのは増田寛也氏を座長とする日本創成会議が2014年に発表した地方の現状を問題提起するレポートがメディアで取り沙汰されたからです。このレポートにおける「消滅可能性都市」の定義はここで明記しておくべきです。

「少子化や人口流出に歯止めがかからず、存続できなくなるおそれがある自治体。平成26年(2014)に日本創成会議が指摘。平成22年(2010)から令和22年(2040)までの間に20~39歳の女性の人口が5割以下に減少すると推計される自治体で、全国の市区町村の約半数が該当する。」
(デジタル大泉辞典)

スクリーンショット 2019-12-20 1.05.50

言い換えると人口1万人以下で、若い女性がいない(人口の増加が見込めない)地方自治体は行政の機能を維持する事が難しくなり、吸収合併されていく事で全国の市町村が減少の一途を辿るという想定です。この問題提起を起源に総務省を初め、国全体として地方自治体に対する方針・政策を刷新したのが、昨今の「地方創生ブーム」の始まりです。

人口減少が覆い隠す地方の根本的問題

地方が衰退していくのは都市部への人口流出、いわゆる、東京への一極集中による地域産業の衰退や税収の減少にあるというのが一般的な見方だと思います。政府もこのような課題を是正するために、ふるさと納税や地域おこし協力隊といった政策を展開しています。しかしながら、自分がこの目で見て来た地方の現状はもっと根深い問題が潜んでいました。

・主体性が求められなかった構造と利権
・新しい試みを阻害する減点評価:「出る杭は打たれる」文化
・儲ける事が悪いという行政の風習

まずは国と県、県と市町村、そして、市町村内でトップダウンの構造がれっきとして存在しているということです。この構造が明確になるのが予算などを決める際の決済フローです。そのため、長いものに巻かれることを是とすることが良いとされ、利権に支配された組織となっています。

そして、地方自治を司る役場は徹底的な減点評価で成り立っています。
つまり、新しいことに挑戦せずに、黙ったまま前例と踏襲した人間は年齢を重ねると自動的に役職と給与が上がっていくというシステムです。
この仕組みのもとで働く人たちは新しいことに対してアレルギー反応を
示す、「出る杭は打たれる」文化が形成されています。これは、1人の役場職員よりも抜本的な構造に難があります。

最後に、市民や町民のために存在し、公平性を担保しながら公共サービスを提供する立場にある行政は儲ける事が良くないと考え方が根付いていました。地方産品のPRのために出張販売などにも同行しましたが、どのような取り組みにおいても儲けよりも公共性が重要視されていました。無論、行政として公平性を保つことは必要だと思いますが、民間企業のように経営的視点にかける事業運営も求められるようになっています。

個人的は、上記にあるような構造的な要因が現状が地方を衰退させている思っています。しかしながら、表層的に現れる問題は異なり、これらの問題は政府の施策などで解消できるような事ではないです。このような環境下では、たとえどんな秀悦なプランを用意しても実行できなくなっています。

結局はお金のバラマキ

自動的な地方へお金をばら撒く地方交付金というスタイルではなく、各自治体が描いた地方総合戦略を元に補助金を支給する方針転換は一定の評価に値すると思います。しかしながら、前述の通り、主体性や新しい挑戦を今まで求めていなかった行政に対して政策立案と実行を求めるのはとても無理な話だと思います。現に、本来は事業の起爆剤であるべき補助金が事業を維持するための収入源となってしまい、補助金頼りの事業が乱立しています。

これから求められる地方創生のマインド

人口減少は間違いなく確約されたトレンドであり、移住・定住の促進をはじめ、現在の地方創生関連の取り組みの多くは、日本全体で縮小していく人口というパイの奪い合いに過ぎません。言い換えると、マクロ的な視点で見た時には何もプラスの物が生まれない不毛な行為だと思います。

これからの時代は人口、特に生産年齢人口が減ることを認めた上で、どれだけ持続可能的に地方自治体を運営できるかがポイントとなります。そして、官民共にこの共通認識を持った上で政策を考えて、進めることが何よりも重要だと私は考えています。

具体的には今まで地方自治体が行っていた業務を民間の会社に外注し、地方の様々なしがらみに囚われない、収支的に持続可能な自立した形で地方自治を進めていくことです。日本が抱える問題の解決を政府に託すのはもうやめて、経営的思考を持った民間主導による自治体運営が今後の地方のためだけでなく、日本の未来のためにも必要になってくるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?