【中の人の葛藤】全員が毎月1日有給休暇を取得する制度は、本当に「子持ち様」対策なのか?
「ストレススキャン」や「ハカルテ」などのヘルスケアアプリを提供するDUMSCOの加勇田(カユダ)です。
制度設計に関わった「なんとなく休暇」が、ハフポスト日本版にて、子持ち様対策事例として紹介されました。
公開数時間後には、Yahooトピックス入り、コメントは5000件を超え、X(旧ツイッター)でもトレンド入りしました。
ありがたいことに、その反響で、数日でいくつかのメディアから取材依頼を頂いていますが、その度にとても葛藤し、時にお断りしたこともありました。
その背景には、『全員が毎月1日有給休暇を取得する「なんとなく休暇」は、本当に子持ち様対策事例なのか?』を日々悩みながら運用している点があります。
今回は、その葛藤や悩みを公開することで、子持ち様問題が1ミリでも解決に向かうための、叩き台になれればと思っています。
子持ち様とは
この言葉はネットスラングの1種で、子を持つ親が休んだり、早退したりすることで、それをサポートする側に「しわ寄せ」がきているという趣旨の、
子育て世帯に向けた皮肉として使われています。
SNS上では子育て世帯に対する苦言にベクトルが向く傾向にある中、ハフポスト日本版では、一貫して組織制度に対して問題提起しています。
私も同じスタンスで、苦言や問題提起のベクトルは、組織制度や仕組み、そしてそれを構築してこなかった人事部であるべきと考えています。
そのハフポスト日本版では、子持ち様問題解決の糸口として、以下を挙げています。
なんとなく休暇とは
法定有給休暇に加えて、月1日付与される有給休暇です。
法定有給休暇と異なるのは、権利がその月で消滅し、翌月には持ち越せない点です。
これは子育ての有無に関係なく、月に1日休む習慣を促すことが目的で、直近は取得率94%です。
その実績を評価頂いて、「みんなが休める」会社として、ハフポスト日本版で紹介頂いたと解釈しています
制度化のきっかけは生理休暇取得率1%問題
子持ち様対策は「結果論」
制度導入のきっかけは、弊社1人目の女性社員を迎えるに際して、生理休暇「も」含め、誰もが毎月休暇を取得する環境を整備しようとしたことです。
それが「結果的に」子持ち様対策にもなっていたというのが実態で、それも事例として紹介されることに日々葛藤する要因です。
導入経緯について、少し詳しく書きたいと思います。
厚生労働省の発表では、令和2年度に生理休暇を申請した人の割合は0.9%で、申請しない理由として、約50%が「利用している人が少ないので申請しにくい」と回答していました。
このボトルネック解消するためには、「毎月」有給休暇を申請する人が多数派になる必要があると考えた結果、性別も申請理由も問わない、なんとなく休暇の制度化にいたりました
こうした経緯で導入された制度なので、子持ち様対策になっていたのは「結果論」で、少なくとも導入当時は、「子持ち様」という概念を私は認知していませんでした。
子持ち様は「結果的に」解決されるべき問題
前述の導入経緯もあり、子持ち様問題は「結果的に」解決されることを目指すもので、子持ち様対策の制度を議論するのは、必ずしも正しい論点ではないと思っています。
分断を煽る要因にもなるので、あまり例を挙げたくないのですが、子持ち様以外にも、生理痛で休まざる得ない「生理様」、気圧の変化による体調不良で休まざる得ない「気圧様」も可能性としてはあり得る話で、●●様は挙げればキリがありません。
そして、そのすべてに対策を打つことは不可能ですし、仮に子持ち様対策は講じるが、「生理様」「気圧様」対策は講じないとなると、新たな不公平が生じます。
だからこそ、毎月皆が公平に休暇を取得する状態を目指すことが重要で、それが「結果的に」子持ち様対策にも、気圧様対策にも、生理様対策にもつながっていくと考えています。
そうした考えがベースにあるため、子持ち様対策の制度として紹介されることに日々葛藤しています
「なんとなく休暇」は、本当に公平な制度なのか
ハフポスト日本版をはじめ、なんとなく休暇を公平な制度として紹介頂くことが増えていますが、本人は必ずしも100%公平な制度とは思っておらず、それも日々葛藤している要因の1つです
たとえば生理が毎月重い社員は、生理でなんとなく休暇が丸々削られる一方で、他の社員は、旅行に行くために取得するなど、他の理由で取得する余裕があります。
もし上記の生理が毎月重い社員が、旅行に行くために休暇を取得する際は、法定有給休暇を消化することを選択せざる得ません。
上記の状況は、必ずしも公平な状態ではないので、なんとなく休暇が、公平な制度=子持ち様対策の制度として紹介されることに日々葛藤しています。
【長めの余談】有給生理休暇 or なんとなく休暇(≒シックリーブ) の葛藤
制度導入のきっかけが、1人目女性社員の入社である点は前述しましたが、その際に、有給生理休暇を導入したリブセンス・桂さんの考え方を参考に、有給生理休暇or なんとなく休暇(≒シックリーブ)の選択を検討しました
桂さんの公平に対する考え方に賛同しつつも、最終的には有給生理休暇ではなく、敢えてシックリーブをベースにした「なんとなく休暇」を導入しました。
その背景には、人事制度における「公平」とは、「導入」ではなく「取得(利用)」されることで成立するという考えがあったからでした。
申請率1%に到達していない生理休暇に代表されるように、人事制度には、導入されるが取得(利用)されない「幽霊制度」も数多く存在します。
過去に幽霊制度をつくった経験もある自分への戒めとして、あえて厳しい言い方をすれば、「幽霊制度」は設計者のただの自己満足です。
そうした「幽霊制度」にしないために、必ずしも公平な制度ではないことを百も承知で、取得されることにより重きをおきました。
その結果、「毎月」有給休暇を申請する人を多数派にするために、権利がその月で消滅する特殊なシークリーブ「なんとなく休暇」にいたりました。
それでも取材対応するのは「子持ち様」という言葉をなくすため
上に書いてきたように、決して完璧な制度ではなく、制度についてお話する際は様々な葛藤を抱えながら話しています。
それでも話し続けているのは、「なんとなく休暇」が叩き台になり、「子持ち様」という言葉がなくなることを願っているからです。
これに尽きます。決して分断を煽りたいわけではありません。
そして、それはハフポスト・相本さん、私と一緒に取材されたXtalent・上原さん、スパイスファクトリー・流郷さんの総意でもあります。
そのことが分かったことは、私にとって最大の収穫でした。
考えれば考えるほど、決して簡単な問題ではないですが、孤独な闘いではなく、同じベクトルを向いてる人たちがいることが分かったのは、今の私の支えになっています。
そうでなければ、こんなにも複雑で難しいテーマを選んで、わざわざnoteを書かないです笑
最後に、「なんとなく休暇」を制度化する際に、とても参考にさせて頂いたリブセンス・桂さんの問いのスタンスを紹介したいと思います。
導き出した答えは異なりますが、「平等に近づいているか」は、なんとなく休暇を導入する際に問い続けた点です。
PS
上原さんと私はnote書きました。
プレッシャーになるかもしれないので、誰とは申しませんが、note公開お待ちしております笑
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