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日本電信電話が抱える「NTT法」問題とは?

最近、NTT法の見直しが話題となっていますが、正直イマイチ理解していません…。

そんな方の為に、今回は日本電信電話が抱える「NTT法」問題について分かりやすくまとめてみました。


「NTT法」問題は、日本電信電話の株に「投資をしている」or「検討している」方だけではなく、通信株に投資をしている方全員が知っておくべき問題です。

NTT法がどのように見直されるかで、通信業界の勢力図は大きく変わってきますので、しっかりとポイントを押さえ、事前に学んでおきましょう。

日本電信電話の「買い時」や「将来性」については、上記のブログ記事で解説をしています。

知らなきゃヤバイ!NTT法とは?

日本電信電話株式会社等に関する法律(通称:NTT法)は、国内の通信市場を独占してきた日本電信電話公社が1985年に民営化されることに伴って作られた法律です。

※NTT法の原文はこちら

1. NTT法の変遷

現在NTT法の対象となっている会社は、「NTT」「NTT東日本」「NTT西日本」の3社だけで、「NTTコミュニケーションズ」「NTTドコモ」「NTTデータ」等はNTT法の対象外です。

ここで気になるのが、「そもそもNTT法はどういった目的で制定をされたのか?」といった点です。

2. NTT法制定の目的

NTT法の前身である公社法では、「公衆電気通信設備の整備及び拡充の促進等による公共の福祉の増進」が目的でした。

NTT法はこの流れを継承しており、
・日本全国における安定的な電話役務の提供の確保
・電気通信技術に関する研究の推進、成果の普及
が「責務」として課されています。

3. 政府がNTT株を3分の1以上保有

NTT法では、NTT株の政府保有義務が規定されており、政府は発行株式総数の3分の1以上を保有することが義務づけられています。(実際には、2023年6月30日時点で32.29%)

これに加えて、外国人の株式取得の制限(合計3分の1以下)も規定されており、「国民に安定した通信環境を提供するための法律」だということが内容からも分かります。

本格化するNTT法の見直し議論

NTT法の見直しを主張している「NTT」に対して、ライバル企業の「KDDI」「ソフトバンク」「楽天」の3社はNTT法の見直しに対して反対をしています。

それでは「なぜ」NTT法の見直しがいま議論されているのでしょうか?

ライバル企業3社は揃って、「NTT法が見直されることで公正な競争環境が損なわれる懸念がある」

新規参入の事業者との間での公正な競争を促すために一定の規制をかけることが目的だった。

1. 光ファイバー問題

携帯基地局と各社の局舎などを結ぶ光ファイバー回線は、NTT東西が国内シェアの74%を占めており、携帯各社はこの回線をNTT東西から借り受けて携帯サービスに利用しています。

現在、NTTグループの再統合はNTT法によって規制されていますが、NTT法が見直され、NTT東西とNTTドコモが統合する余地が生まれれば、光ファイバー回線の提供でドコモが優遇される可能性があり、ライバル企業3社はこれに反対しています。

仮に、NTT法を見直すのであれば、光ファイバー網などの通信インフラを国有化するなどNTTから切り離すことを求めています。

2. ユニバーサルサービス問題

NTT法では、NTTに対して固定電話などのサービスを全国であまねく提供する、いわゆるユニバーサルサービスを義務づけています。

しかし、法律が制定された約40年前と比べると、固定電話が必ずしも生活に必要ではなくなってきているのが現状です。

実際に、オレンジ色の線のNTT東西日本の固定電話契約件数は右肩下がりで推移。

それに対して、赤色の線の携帯電話の契約件数は右肩上がりで伸び続けており、通信環境が大きく変化してきていることが数字でも分かります。

NTTはNTT法で「責務」とされた固定電話や公衆電話などのユニバーサルサービスの提供を続けているものの、老朽化した設備の維持コストなどもかさみ、2022年度の関連事業の赤字額はNTT東西あわせて580億円にのぼっています。

この点に関しては、ライバル企業も「固定電話の全国提供義務は今の時代にはそぐわない」等といった意見も出ており、一定の理解も示されています。

3. 国際競争力がNTT法によって阻害

NTT法では、NTTの責務として「研究開発の推進や普及」が規定され、NTTはこの規定によって研究成果の情報開示義務を負っています。

光の技術を使った次世代の通信ネットワーク「IOWN」に関連する技術をはじめ、世界的にも優位性がある技術を持つとされるNTT。

ですが、このNTT法の規定を根拠に、海外の政府機関や企業などから情報の開示を求められる可能性や、公平な情報の開示義務の観点から、パートナー企業に十分な情報提供ができないケースも想定され、国際競争力を阻害しているとNTTは主張しています。

NTT法の動向には今後も注目

みなさん、NTT法に対する理解は深まりましたでしょうか?

実際にNTT法が見直されることとなると、政府の保有比率を引き下げることで、海外資本が買い占め、国の重要インフラである通信環境を握られる懸念なども存在しています。

また、政府が大量のNTT株を売却する場合、株価に大きな影響を与える可能性もあり、政府はかなり難しいかじ取りを求められています。

今後も議論が深まっていくことが予想されますので、ボクも注目をしていきたいと思います。


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