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懇請の強度(こんせいのきょうど)


本当に、相手に伝わるということ


「娘さんをください」
噛み倒そうが、どもろうが、
なぜ伝わってしまうのか??


こんにちは。
コピーライターの堀田です。


13年ぐらい、言葉を書いて電気代を払っています。
(注:このフレーズしばらく推していきます)


さて、今回は
2回目にしてすでに言葉から少し遠い(笑)
「懇請の強度」というお話です。


いきなりですが、
人間って、翌日には今日覚えたことの
約75%を忘れるそうなんです。

ということは、
明日の自分には、4分の1しか残しておけない
ということですね。
非効率な生きものです。


たまに、
「話すのが上手くなりたいんだけど、
どうしたらいいか」

という相談をされることがあります。

上手いわけでは決してないのですが、
仕事柄言葉を扱っているので、
そう思われることが多いのでしょう。


下手だと思っている理由を聞くと、
「語彙力がないから」と答える人が多いです。

なるほど。単語の数が多ければ、
受け答えに、バリエーションが生まれる。
それはたしかに、そうかもしれません。



ただ、そんなとき、
明日は今日の4分の1しか
覚えておけないとなると、
単語の詰め込みが主では、
非効率かもしれないですよね。

そもそも「相手に伝わるとは何か」
知っておいたほうが、いいのでは。
ということですね。


たとえば、
「まぜるな危険」という注意書きがありますね。
塩素系の漂白剤とかのパッケージにある、
おどろおどろしい、あれです。


あの注意書きがなかったら
人は混ぜていたかもしれない。

混ぜていたかもしれない行動を、
混ぜない行動に変えた。
これを【態度変容】といいますが、
このとき、言葉は「機能した」ということですね。
つまり、伝わったということです。


話すのが上手くなる、ということは
伝わる確率をできるだけ上げる、ということに
近いのかもしれません。


なかなか、面白い話になってきましたね。
(はよ本題言え)


懇請の強度



もう少し考えてみましょう。

「付き合ってください」
もっというと
「娘さんをください」
伝わる確率が高いほうがいい言葉ですよね。
なんといっても、
態度変容の究極ですから。


で、実はこれ、
伝わるかどうかは
すでに玄関先で決まっているんです。


ここでようやく今日の核心、
「懇請の強度」のお話です。
(長くなるクセをやめたい)


これ、「こんせいのきょうど」と読みます。
「懇願する」の「懇」に、
「請求書」の「請」。
どちらも「お願いする」という漢字です。
お願いする強さ……なんでしょうか。


伝わるかどうか、それは
【言葉そのもの+懇請の強度】
によって変わります。


練習して練習して、ド緊張の中むかえた
「娘さんをください」の場面を
想像してみてください。


言葉そのものは、口から発せられますね。
では、ほかの部分はどうでしょうか。

顔は汗をかき、目線は泳ぎ、
両手は震え、拳は握りしめたまま、
足は落ち着かず左右に揺れている。
あんなに練習してきたはずなのに。
でももう、なんとかするしかない。


そう、人間は、
全身から表現をしているんです。
口から出る言葉は、
その表現のほんの一部でしかありません。


「浮気した?」「してないよ」
が、なんだか怪しいときも
言葉ではない部分が、
嘘の表現をしているからです。


言葉は、表現のほんの一部だから



まとめると
「懇請の強度」とは、
全身における表現の強度、である
ともいえますね。


「懇請の強度」を感じたとき、
人は心が動きます。

深く意識し、考えているときほど、
人は全身に表現として現れることを
相手は実体験をもって知っているからです。


そもそも伝わるかどうか。

玄関先で決まっているのは
「懇請の強度」が、本当に強いかということ。

もう全身が「娘さんをください」になっているのなら
究極言葉は少なくても伝わる、ということですね。


ビジネスの話でいうと、
「打合せがなぜ、対面がよいか」
これも言葉そのものだけでなく、
その他の表現から想像できる、
「強度を打合せられる」からですね。

リモート会議でも、
顔が出ていたほうが伝わりやすい、もこれです。


というわけで、


もし話し方にコンプレックスがあって、
話が上手い人を見かけたら、
身振りや目線、声の張り方など、
言葉そのもの以外の部分で、
「懇請の強度」をどこに持って行動しているか
観察してみると、いいかもしれないです。


もちろん、語彙力も
あったほうがいいですけどね。


ちなみに、
コピーライターが「コピーを書く」とは
一人歩きする言葉で
離れた人の心に作用するときに、

書く言葉そのものに「懇請の強度」も入れ込む
そんな作業なのですが、


そのお話は、また別の機会があれば。



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