運転士って

1830年9月15日、イギリスはパークサイド駅。

「絶対に降りないでください!」

案内係がアナウンスを繰り返しているにもかかわらず、線路に降りちゃったヤンチャ系国会議員、ウィリアム·ハスキソン。

彼がロケット号に引かれたのは鉄道の父、ジョージ·スチーブンソンが作り上げた世界初の営業鉄道、マンチェスター·リバプール鉄道開業記念式典の真っ最中でした。

世界初の鉄道人身事故は、世界初の鉄道が開業したその日に起こったのです。


鉄道の歴史は、事故との戦いでした。
列車の衝突を防ぐための信号設備や通信技術の発展。
ヒューマンエラーをカバーするための列車自動停止装置の開発。
更にはシステムが判断して速度を管理する、列車自動制御装置まで登場しました。


ここまで鉄道システムが発達しながらも運転士が存在するのは、システムが予定通りの枠組みでしか機能しないからです。
ウィリアム·ハスキソンのような予期せぬ事態に対処できるのは、人間しかいません。


人間をフォローする機械を、人間がフォローする。
この構造が続く限り、運転士は必要とされ続けるはずでした。


が、ここに来て技術は更なる進化を遂げようとしています。
前回もチラッと書かせてもらいましたが、ドライバレス(運転士が必要ない)運転という新たな次元に達しようとしているのです。


予期せぬ事態に遭遇し、ブレーキをかけるべきか判断し、実行する。
かつて人間しか有していなかった専売特許は、近い将来AIに譲渡されます。


人間をフォローする機械を、機械がフォローする時代。


そのとき、

運転士は必要なくなるのです。



先述の開業記念式典において、世界初の運転士を勤めたのは鉄道の父、ジョージ·スチーブンソンその人でした。
鉄道の創設期から現在まで、電車の運転士とは社会におけるひとつの花形だったのです。


社会の花形が死ぬ日、それはもしかしたらスチーブンソンが築いた鉄道が死ぬ日なのかもしれません。



そして、鉄道は

新たなステージに立ち始めます。

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