文化芸術に対する文部科学大臣の国会答弁に寄せて #WeNeedCulture

1月28日に開かれた、参議院予算委員会の小池晃議員の質疑のなかで、国の文化芸術支援の在り方についての答弁がありました。
萩生田文部科学大臣・梶山経済産業大臣が答弁しましたが、
当事者である私たちの意識との乖離が大きくあり、
答弁を振り返りながら、実情を伝えたいと思います。

まずはじめに整理しておきたいことがあります。
萩生田文科大臣は答弁のなかで、支援の予算額を並べながら、
「支援の制度設計は業界団体の皆様とよく相談をしてスタートしたつもり」と話しています。
答弁を聞いた方は、
当事者たちは現状の支援に納得してるのでは?と感じる方もいるかと思いますが、

2度目の緊急事態宣言下の今、一体当事者の誰が支援に納得していると言っているのか、私は理解に苦しみます。

たしかに文化庁や経産省は、財源を確保できていて、一定の支援が出来る状態にあります。

私たちが声を上げ続けている理由は、主にその予算の使い方にあります。
問題としているのは、支援を受けるための条件や制度の中身についてです。

本来、新型コロナウイルスの影響を受けたひとたちを救うための支援であるはずが、困っているひとや場所にせっかくの予算が行き届いてない現状がずっと続いています。

闇雲に言っているわけではなく、文化を存続するために、予算のなかで、実態に即した支援を行なってほしいと。

行政とすれ違っている点は大きく3つあります。

・コロナ収束期を前提とした支援が軸にあること

・制度設計においての現状の認識の不足が致命的であること

・すでに金銭的体力のなくなっている人たちが救われないこと


この3つを頭の隅に置いて読んで頂けたら幸いです。
答弁を振り返っていきたいと思います。


<2021.01.28午後 参議院予算委員会>

小池議員:
それから芸術文化。ここは休業要請ではなく「働きかけ」で協力金の対象にすらなりません。徹底した感染防止対策をやってきた結果、全国の映画館ではこれまで一件の感染事例も報告されていません。劇場やライブハウス・クラブでも昨年7月以降、観客などのクラスターは発生しておりません。
広範な文化芸術団体が参加したWeNeedCultureのアンケートで「上演を企画する際に躊躇する要因はなにか?」(の質問に)81.2%が「観客の感染リスク」だと回答しています。なんの補償もないのに自粛をする。自分の暮らしが困っているのにお客様の安全を優先する。涙ぐましい努力じゃないですか? 大臣、この努力に政治は応えるべきではありませんか? お答えください。

萩生田文科大臣:
文化芸術はコロナウイルス感染症対策を率先して行ってきた分野であり、ご指摘の点については文化芸術関係者における業種別の自主ガイドラインの策定とその遵守、チラシやHP、会場等における観客の方々に対する周知など、これまで徹底した感染症対策にご尽力いただいてきたことの成果の表れであると考えております。
文化芸術の灯を絶やすことがないように取り組んでこられた皆様に、深く敬意表します。引き続き文化芸術関係者における感染症対策の取り組みが充分に実施された上で、文化芸術活動が行われるよう、文部科学省としても出来る限り取り組みを進めて参りたいと思います。


ライブハウス・フェスや映画館・劇場公演は、これまで徹底した感染対策に努めてきました。
お客さん・関係者の安全を確保するために、時には自主的に公演や上映を中止/延期し、ガイドラインに沿いながら、客数の制限や時短営業など苦渋の決断を重ね続けています。
ライブハウスは、感染拡大の当初からクラスターの発生場所として行政やメディアから槍玉に挙げられ、未だそのイメージを世間が引きずっています。
飲食を伴わない映画館や劇場公演は、今回の緊急事態宣言では時短要請の協力金の枠に入っていません。20時以降の外出自粛の呼びかけを受け、補償のない中でレイトショーや夜公演を自粛しています。
クラブに至っては20時以降のオープンがほとんどであり、実質としては休業せざるを得ない状況にあります。

敬意を表するとか、成果のあらわれであるとか、、

これらは自助努力であり、引き換えに深刻な経営難や離職に追い込まれている今の状況を大臣は理解しているのでしょうか。


<文化庁・経産省の支援策に関する質疑>


小池:
それなのに三次補正予算で、文化庁が示している支援策「ARTS for the future」。なんですかこれ。積極的な活動が条件。ほかの団体とコラボレーションする。新たな専門性を有する実演家の招聘。これまで訪問したことのない地域や文化施設で、これまで実施していなかった客層へアプローチ。いま何故こんなことをアーティストに求めるのか。いままでやってきたことがやれないで苦しんでいる時に、新しいことをやらなければ支援しないってひどすぎませんか?

場内:
そうだ!

萩生田:
文科省としてはコロナ禍に対応するための工夫や文化芸術の充実を図っていただくことが重要であると考え、第三次補正予算案「コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業」において、緊急事態措置の期間中もふくめ、例えば実施する公演などのオンライン配信や、感染リスクも勘案した演出の工夫を行うなど、文化芸術関係団体等による感染症対策を充分に実施した上で、積極的な活動を支援することとしております。また本事業の実施にあたっては、公演の中止に伴う費用等について、関係省庁と連携をしつつ支援を行えるよう検討すると共に、緊急事態宣言の発令時に遡って支援対象とすることを検討するなど、可能な限り事業者の使い勝手の良い制度としていきたいと考えております。
なお、これまでの文化芸術関係団体における取り組みの実績や研究等の蓄積を踏まえ、文化庁において、文化芸術活動の特性を踏まえた適切な感染症対策を講じることで、感染拡大のリスクを最小に抑えつつ、活動を継続・発展させていくため科学的知見に基づく感染症対策についての検討の場を新たに設置をしました。検討の結果について関係大臣と共有しながら、今後文化芸術関係団体にとってどのような有効策を講じることができるか、検討して参りたいと思います。

梶山経産大臣:
イベントの産業につきましては、コロナ禍において大変厳しい経済環境におかれております。今回の緊急事態宣言に伴って一層厳しい開催制限等が課せられることになっておりまして、それらを受けて、このような状況をなんとか乗りきっていただくべく、予定されていた音楽コンサート、演劇、展示会などの開催を延期・中止した場合、開催しなくてもかかってしまう会場費等のキャンセル費用の支援をすることとしております。速やかに申請を受け付けられるよう準備を進め、遅くとも2月中には申請を受付開始したいと思っております。これは上限2,500万円ということであります。


萩生田文科大臣の答弁にあった、文化庁が提案する、新たな取り組みへの支援(ARTS for the future)は、概算払い(先払い)ができません。つまりあらかじめ公演を打つための元手のお金が必要であり、それが用意できない団体やフリーランスは申請すら出来ません。
コロナ禍で現場はすでに瀕死の状態であり、多くの団体や人は新たな取り組みを行う金銭的な体力は残っていません。精神的な意味でも。

梶山経産大臣の答弁にある、公演キャンセルの経費支援(J-LODlive補助金)についてですが、申請者は法人に限られています。
先日WeNeedCultureで行ったアンケート調査では、回答した文化芸術に携わる5,328人のうち、フリーランスが80%であり、大半は申請が困難です。一部の業界団体と握った制度設計なのでしょうか。

また、今回の緊急事態事態宣言にかかる公演だけでなく、コロナウイルスの影響が出始めた昨年2月からの中止公演までを遡りフォローすべきだと思います。

J-LODlive補助金に関しては他にも問題があり、キャンセル公演の経費負担が100%に対して、公演を行う場合に申請できる経費負担の補助率は50%という矛盾が起きています。

これでは、公演をキャンセルにしたほうがダメージが少ないという考えに至りかねない。
開催のリスクが高い今、公演開催の申請に対しても補助率100%の定額給付であるべきです。
ARTS for the futureと同じく、J-LODlive補助金に関しても概算払いは出来ませんので、元手がない場合は申請できません。
どちらの制度も、必ず補助金が出るというわけではなく、これまでの予算に関しても審査や採択の遅れが大きな足枷となっています。

そして、先日のnoteにも書きましたが、キャンセル公演の補助に対する採択の要件に、
”中止・延期になったイベントに関連する内容のPR動画を制作し、配信プラットフォームに配信して海外に動画を配信する“
という、全く意味のわからない要件が付いています。


小池:
いまちょっと、萩生田大臣、答弁なかったので。こういう事細かく、新たにこういうことやらなければ駄目だとか、こんな要件を課すのをやめたらどうですかと、私言ってるんです。端的に答えてください。

萩生田:
あのこれ、経産省と連携して行っている事業で、いま経産大臣からもお話がありましたように、分かりやすく言うと、今回の緊急事態宣言でマイナスになった部分はゼロまでに戻しますと。さらなる上乗せについては、新しいことをやったところに支援をしたいということなので。率直に申し上げて、動ける団体と動けない団体があると思うんです。我々としてはポジティブに動ける団体にはぜひ、このコロナ禍であっても活動を続けてもらいたいということで、従来の形ではなくてですね、ひとつオプションを増やしてもらうということで、応援をしたいと思っているところであります。



萩生田文科大臣は答弁のなかで、”今回の緊急事態宣言でマイナスになった部分はゼロまでに戻す、そして新たな取り組みに関してはプラスになるように支援する”と話していますが、
マイナスは、今回の緊急事態事態宣言下だけにおけるものだけではなく、コロナ禍におけるこれまでの11ヶ月の被害が大半ではないでしょうか。
そして、プラスの支援というのは前述した”弱きは救われない支援”を指しています。
大臣は、動ける団体は救うと言いました。今回の緊急事態宣言の以前から、すでに動けない団体と個人はどうなるのでしょうか。


小池:
従来の活動ができないでいる時に、従来を超えたところしか支援しないって、それで支援にならないでしょって私言ってるんです。お答えください。

萩生田:
従来の活動ができなくなったことについては、補償という言い方をすると誤解を招くかもしれないんですけども、マイナスをゼロにする仕組みを経産省と一緒に行ってます。じっとすればマイナスはゼロになるんですけど、それでは、やっぱり団体は稽古もしなきゃなりませんし動かなきゃならないので、そういうことに対して、言うならばプラスオンをしようということで、今回補正を積ませて頂いたということでございますので。これは団体の皆様ともよく相談をしてスタートしたつもりでおりますので、そんなに先生が思っているほど複雑なことではなく。ぜひ動けるところには動いていただきたい、こう思っております。

何度も言いますが、ダメージはゼロにはなりません。次の手を打つ元手も尽き、じっとしていることしかできない人が沢山います。
じっとしているだけでもマイナスは増えていき、何かを新たに始めるには元手がいる状態です。
そして、ここが最大の不一致なのですが、萩生田大臣が言っている、新たな取り組みへの支援策(ARTS for the future)は、昨年秋から制度設計がはじまり、コロナ収束を見越したV時回復期の政策です。
感染が拡大して緊急事態宣言を発出しなければいけなくなった今、時期尚早だったことを認めて、減収への補償を軸に政策の方向転換をするべきです。

<文化芸術復興創造基金に関する質疑>


小池:
みんなね、これではやれないっていう声をあげてるんですよ。今までは個人も対象にしてたけど、今度は団体だけにしてしまったという問題もあります。そもそも、なんかこういう新たなことをやらないと駄目だって言ってるのは、三次補正予算の枠組みそのものが、コロナ収束を前提としているからこんなことになるんだと思うんです。
もう一つ聞きますが、文化芸術復興創造基金への募金。11月に私質問した時、711万円でした。もう一千万円超えてますよね。

萩生田:
1月27日時点で、約766万円でございます (笑いながら)

笑う意味が全く分からない。

小池:
総理ね、この実態なんですよ。このままでは、一千万円にならないと基金スタートしない。11月に聞いた時、711万円。いま766万円。いつまで経っても基金がスタートしない。日本の文化芸術の灯を消してはいけないというのであれば、自民党も入っている超党派の(文化芸術振興)議連で、民間寄付頼みではなくて国が責任を持つ基金を、国費
一千億円を投入して基金をスタートさせるという提言をしています。総理、決断すべきではありませんか?

基金への国費の投入に関して、菅総理は答えませんでした。

萩生田:
先生のご指摘の通りで、一千万円にもまだ達していないというのは本当にあの、基金をつくった担当所管としては恥ずかしく思ってます。ただこういう厳しい経済状況の中で、なかなか寄付が集まりづらいということもご理解いただきたいと思います。前国会の時にもですね、国費も考えた方がいいのではないかというご提案があって、それに対して私もある意味、同意をしているところでございます。
従って、この間ですね、様々な文化芸術団体の皆様ともお話をして、この第三波が来ない前提で、事業が復活できるときにですね、皆で力を合わせて稼ぎ出していこうじゃないかと。自ら、しっかりこういう基金をこの機会に、次のために積んでいこうじゃないかということで、色んな企画をはじめたところでございます。多くの団体の皆様がご協力いただいて、一千万円どころじゃなくてですね、もっと大きなお金を基金として積めるようなイベント等も、今後コロナが終わったあとにはしっかりやっていきたいと思います。
しかしながら現段階でですね、残念ながら寄付が集まっていないのは事実でございますので、このため文化芸術関係団体の活動継続や収益力強化の取り組み等の支援に加えて、団体の活動を継続し雇用を維持するため、雇用調整助成金について、日額上限15,000円の特例措置、政府系民間金融機関による、実質無利子・無担保かつ、元本返済据え置き最大5年の融資について、実質無利子の上限額6,000万円引き上げの実施を行って参りました。更に第三次補正予算において、コンテンツ関連事業者が収益力基盤の強化に資する取り組みなどを実施する公演などへ、総額456億円(経産省「コンテンツグローバル需要創出促進事業」)の支援。文化芸術関係団体が、感染防止対策を充分に実施した上で行う積極的な公演等へ、総額250億円(文化庁「ARTS for the future」)の支援を行う予算を計上しております。まずはこうした国費による支援を着実に実施して参ります。その上で、文化芸術復興創造基金について、日本芸術文化振興会とも協力の上、チャリティイベントの実施など、寄付額の増加に向けた策を講じて参りたいと思います。

小池:
色々言ったけども、基金に国費を入れるのか、入れないのか、はっきりしてください。

場内:
答えてない

萩生田:
いま申し上げたような様々な支援策を国費として使わせて頂いた上で、コロナが落ち着いたところでですね、ぜひチャリティイベントなどで、自らお金をしっかり作っていきたいと思っています。それでも足りないということであれば、国費を使うことも含めてですね、今後しっかり関係省庁とも検討していきたいと思っていますが、幸いにして団体の皆さん、苦しいながらも前向きな様々な提案を頂いておりますので、ぜひですね、しっかりその活動の機会、それを支えることによって更なる利益を生み出す、そういうスキームを作って参りたいと思います。

小池:
私はこういうところにこそ、公助がいま求められていると思います。本当、大変なんですから。大変になったらじゃない、大変なんですから。決断をすべきだと、申し上げます。


小池議員の言っている、文化芸術復興創造基金というのは、文化庁が民間に対して寄付の募集をしている、クラウドファンディングのようなものです。
国のコロナ政策のひとつとして掲げられたこの基金は、驚くべきことに、昨年五月から始めて、まだ約776万円しか集まっていません。
さらに驚くべき事実は、国費が投入される予定がないということです。文化芸術復興創造基金の創設などという言葉が踊れば、なんだ支援があるじゃないか、と思うかもしれませんが、実情は全く違います。
萩生田大臣は、業界団体と共に基金を集めるチャリティーイベントを開催すると言ってます。コロナ禍において、カルチャーを支えるためにこれまで、クラウドファンディングやオンライン配信への課金などでユーザーはどれだけ共助をしてきたと思っているのでしょうか。
萩生田大臣は、基金への国費の投入に関しての答弁を避けるように、現状行っている支援を挙げています。

雇用調整助成金 → フリーランスの多数は受けられません。

実質無利子/無担保融資の引き上げ → 借金は借金です。

J-LODlive補助金(コンテンツ云々と話している支援です) → 元手がないと申請できません。

ARTS for the future(250億円と話している支援です) → 元手がないと申請できません。

萩生田大臣は、新たな公演への支援を行うための予算 (J-LODlive/ARTS for the future)を国費から出していると言っていますが、収束の見通しが立たず緊急事態宣言を出しておきながら、新たな公演をやれというのは、ダブルスタンダードではないでしょうか。
シンプルに、減収に対する補償をお願いしたいです。


以上が、文化芸術に対する文部科学大臣の国会答弁でした。

答弁であらためて分かったのは、行政の危機感の無さであり、柔軟性の低さ、制度の解像度の低さでした。

なぜ困っている人をただ救うことができないのか。

最後に、文化芸術に関する的確な質疑を行なって頂いた小池晃議員に感謝致します。

ほんとうにその通りだと思います。

実態に即した支援になるように、引き続き動いていきたいと思います。

音楽、映画、演劇の3者で共同で行っております、文化芸術への公助を求める活動 WeNeedCulture にて、署名・アンケートが1月28日から始まりました。
2度目の緊急事態宣言を受け、アート・カルチャー・エンターテインメントの窮状を菅義偉内閣総理大臣、麻生太郎財務大臣に届けます。
音楽・映画・演劇だけでなく、アートやエンターテインメント全般へ裾野を広げ呼びかけを致します。


【アート・カルチャー・エンターテインメントを愛するすべての方へ署名アンケートのお願い】


映画、音楽、舞台、ダンス、アート、伝統芸能..
コロナ禍で失われる前に、
自分の好きなもののために出来ることがあります。
この署名を広めてください。

署名・アンケートフォームURL
https://firebasehostingproxy.page.link/198886819888/forms.gle/kJzwMsPjXLPsE35F8


今回の署名は、当事者だけでなく、それぞれの分野のファンの方々に声をあげてほしいという取り組みになります。

すべてのアート・カルチャー・エンターテイメントを失くさないために、以下2点を政府に要望します。

⑴文化芸術団体及び文化芸術施設に対する、事業の減収の程度に応じた補填
⑵フリーランスに対する、より煩雑な手続きを伴わない給付金の支給

署名フォームの内容にご賛同頂けましたら、SNSでの呼びかけや直接のお声がけを頂けましたら嬉しいです。
アート・カルチャー・エンターテインメントを愛する100万人の声を集めたいです。

みなさんのアート・カルチャー・エンターテインメントに対する想いもぜひアンケートにご記入ください。署名と合わせて菅義偉内閣総理大臣、麻生太郎財務大臣に届けます。 #文化芸術は生きるために必要だ という皆さんの声を聞かせてください。

#失くすわけにはいかない
#WeNeedCulture

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