何に困り、何に声をあげているのか。現状の支援について。

先日、友人のミュージシャンが、
「コロナ禍でみんながどう困っているのかいまいち具体的に見えてこない。行政からの支援は必要だと思うが、すでに色々な支援策が出ているのではないか。一緒に声を上げたいが、どういった点で支援が足りないのか知りたい」と話してくれた。

確かに色々ありすぎて、申請者でないとわからないものが多いですよね。
報道だと何百億円とか数字が踊っているので、もうみんな大丈夫なんでしょと思う方もいるのは当然だと思います。

かなり長くなってしまいますが、自分の立場から、現状の支援についてまとめてみました。


まず、雇用調整助成金の特例措置。現状2月までなのですが、これが延長されなければ、多くの店が従業員を解雇せざるを得なくなります。あるいは毎月借金を抱えて火だるまになります。

雇用調整助成金とは、「新型コロナウイルス感染症の影響」により、「事業活動の縮小」を余儀なくされた場合に、事業主に対して、休業手当などの一部を助成するものです。

LIVE HAUSは、コロナ禍でスタッフに働いてもらうことが出来ない場合でも休業手当を出しているので、雇用調整助成金の特例措置が終わると、毎月100万円単位で借金が増えていきます。

先日、感染拡大の影響で売り上げが急減した中小企業や個人事業主に対し、実質無利子・無担保融資の上限を引き上げが発表されましたが、借金は借金です。
開業資金の借金、赤字補填のための追加融資で、すでに借金が膨らんでいるのが現実です。

家賃支援給付金や持続化給付金は、二回目の給付が必要です。

家賃支援給付金とは、
新型コロナウイルス感染症を契機とした昨年5月の緊急事態宣言の延長などにより、売上の減少に直面する事業の継続をささえるため、賃料の負担を軽減することを目的として、賃借人である事業者に対して給付金を給付する制度です。
6ヶ月分の賃料の1/3から2/3が助成されます(金額には上限があります)。

持続化給付金は、
感染症拡大により、営業自粛等により特に大きな影響を受ける個人事業主・中小法人に対して、事業全般に広く使える給付金です。
前年同月比で事業収入が50%以上減少した月のある人や法人が対象で、事業収入に応じて個人で最大100万円、法人で最大200万円が給付されます。
ただし、2020年4月以降にオープンしたお店は対象に含まれないことや、複数店舗を経営する場合、テナントの賃料が数百万円する場合などは200万円の給付では厳しいという側面があります。

家賃支援給付金と持続化給付金の申請は今年1月15日までで受付終了がアナウンスされていましたが、終了日当日に一ヶ月の受付延長が発表されました。
すべての支援に言えますが、情報の発表や更新がとにかく急で遅いです。

コロナの影響が出始めてからもう11ヶ月が経とうとしています。

受付の延長は当然ですが、持続化給付金にしろ家賃支援給付金にしろ、必要なのは、今年バージョンというか、次の給付です。不平等であったり、支援から溢れてしまうひとが出ないような、持続化給付金に代わる、より煩雑な手続きを伴わない給付金が必要です。

2度目の緊急事態宣言。
飲食店への時短営業要請。飲食を伴う都内のライブハウスは、時短要請に応じた場合1日6万円の協力金を受け取ることができます。
宣言発出下の1/8日から2/7日までの全期間の場合は186万円です。

原価のかからない6万円というのは絶妙な金額で、従業員を抱えていない飲食店で、賃料がそこまで高くない場合は良い内容かもしれません。
LIVE HAUSの場合は、一ヶ月の賃料と借金の返済、従業員の保険料等の支払いでびったりという感じです。

時短営業の要請は、見切り発車でスタートしたものだから設計が後手後手で、例えば、多くの従業員を抱え雇用を産んでいる大手外食チェーンなどの大企業は当初対象外にされていたり、問題が続出しています。
(これまで応じていない事業者や対象外としていた大企業へも、1/22から2/7まで新たに応じた場合は、協力金を支給することを決めました)

飲食店以外は、要請ではなく、自粛の呼びかけにとどまり、協力金は出ません。
20時以降の外出自粛を呼びかけるなら、夜まで営業している全ての業種に補償がないと、どう考えてもおかしくないですか。
ランナーで例えるならば、
鉛を付けて走らされて、記録が出なければ引退を迫られるようなものです。

行政は昼の外食も控えてほしいと言い出していますが、じゃあなんで時短営業の要請なんだって話で、そりゃサイゼリアの社長も怒りますよ。
ニュースでも、街に人が減っていませんと仕切りに報道していますが、
20時までの時短営業の要請や呼びかけを行っているのだから、それまで人が街にいるのは当然のように思います。
人手が減っていないと指摘するとしたら緊急事態宣言の中身に向けてであって、街へ出ている人を責めるのは違いますよね。

先日、SaveOurSpaceが省庁要請の際に提出した補足文章が以下です。

【緊急事態宣言発出におけるライブハウス/クラブ・アーティスト・関係者の現状に関してのご報告】

・ライブハウス/クラブは、施設の規模が様々であり、また、複数店舗を経営する事業者も多く存在します。このため、今回の一律の協力金では維持できない施設が多数存在します。

・ライブハウスの公演時間は19:00から23:00まで、クラブに至っては20時以降のオープンがほとんどであり、今回の緊急事態宣言に関して、時短要請に留まるとはいえ、実質としては休業せざるを得ない状況にあります。

・ライブハウス/クラブの一日は、施設スタッフのみならず、実演家、音響/照明技師などのフリーランスが存在してはじめて営業ができます。時短要請により施設が公演中止や延期を決定した場合、公演予定であった実演家、音響/照明技師などのフリーランスは、その日の仕事を失うことになります。しかも、実演家、音響/照明技師などフリーランスへの補償はないのが現状です。

・ライブハウス/クラブは、営業するためには、各公演を制作するための期間を必要とします。開催の候補日を検討し、公演のテーマを考え、アーティストへ出演を依頼し、公演の告知を行い、公演日を迎えます。このような状況があるため、緊急事態宣言の発出に伴い一旦キャンセルされた公演について、再度日程調整を行うことは容易ではありません。また、緊急事態宣言が終了しても、改めて公演を組み直すのは難しく、すぐに営業を再開することはできません。

以上

官僚やほとんどの政治家は、こういった各業種ごとの違いを理解していません。
こちらから伝えていかないと、いっこうに埋まらない溝みたいなもので、
相手には私たちの存在がしっかり見えていないのです。

LIVE HAUSも平日は休業、土日は20時までに繰り上げて公演を行えたらと頑張っていたのですが、土日もほとんどのイベントがキャンセルになってしまいました。
ムードとして、やるハードルが高い、というのが問題の本質です。
大前提として、「飲食店が」「ライブハウスが」と名指しで議論に挙げられるだけで客足が遠のく。補償ももちろんそうですが、一番苦しいのはそこなんです。

ライブハウスは前回の緊急事態宣言の際に、無観客配信を進めましたが、配信の売上は通常時の1割にしかならない場合もあり、スタッフの稼働もあるので、やるだけで赤字になったりします。



そもそも、時短営業の要請、20時以降の外出自粛の呼びかけというもの自体が問題を複雑化していて、手厚い補償をしてロックダウンしたほうが、よほど混乱を生まないのではと感じています。

「直接的な補償はしない」
というのが政府の大方針で、どの省庁へ要請に行っても、まずはじめに補償は出来ないと言われます。経産省や文化庁の政策やGo Toにしても、新たな取り組みや人の流れを作ることを支援している。
それはコロナ収束後に行うべき支援であって、決定的にズレている。今は直接的補償が必要。

文化庁の新たな支援策”arts for the future”も、
経産省の”J-LODlive補助金”も、
新たな取り組み・新たな公演を行うことへの支援を目的としていて、
感染が拡大し、緊急事態宣言を出して外出の自粛を呼びかけているなかで、何か新しいことをやらないと支援出来ないというのは、ダブルスタンダード過ぎませんか。

演劇・映画・音楽の3者で動いているWeNeedCultureのみんなともよく話すのですが、国は、公演や上映を、やれと言っているのか、やらないでと言っているのか、全く分からない。
仮に、助成金の申請をした公演の予定日が3度目の緊急事態宣言下となり公演が打てなければ、制度が破綻しますよね。
たとえキャンセルの補填が出来るとしても、申請をする労力と公演を作る努力と時間は戻ってきません。
文化庁や経産省の助成金は後払いなので、元手がなく立て替えが出来ないところは申請すらできません。
金銭的体力がない人や場所は淘汰されても仕方がないと言われているのと変わりません。

キャンセルの助成で言うと、
先日、経産省から新たな支援策が発表されました。既存施策の「J-LODlive補助金」の補正予算によって、緊急事態宣言で延期・中止したイベントのキャンセル費用が補助されることになります。100%の補助となるそうなのですが、
緊急事態宣言発出期間の公演だけでなく、コロナ禍すべての期間で開催できなかったイベントについても対象に加えて頂きたい。

また、J-LODliveは、イベントを開催する際の助成は50%補助が上限で、中止の助成は100%補助という、むちゃくちゃな矛盾を抱えてしまい、主催者やアーティストを悩ませる要因になりそうです。

また、コンテンツグローバル需要創出促進事業費としての建て付け上の問題として、
採択の要件に、
”中止・延期になったイベントに関連する内容のPR動画を制作し、配信プラットフォームに配信して海外に動画を配信する“
という、全く意味のわからない要件があり、
本当にお役所的というか、無理くり感が凄い。
中止になったイベントのPR動画って何でしょうか?
海外に何故それを配信するのか。

官僚や政治家と話す中で分かったことは、
すべては、財務省の首を縦に振らせるためであり、そのために不可解な制度設計がそこかしこで起きている。
私たちの要望と食い違っていく元凶は、元締めの財務省と補償をしたくない政府の大方針にあると思います。

この国はなぜ困っている人をただ救うことができないのか。

本当の地獄はこれからかもしれない。


移ろいながらも、自分たちの日々を取り戻していきたい。

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