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SaaSのPMFまでにやるべきでない9つのこと 2020

2018年9月にPEP(ペップ)というSaaSをローンチしました。この記事公開時点で1年3月が経過した訳ですが、ここまでT2D3の最初のT1を模索してきた中で「どのようにすれば間違いを犯さずにSaaSをPMFに持っていけるか」をまとめていきたいと思います。たぶん3期目くらいまで通用する話だと思います。

私はこれまでSaaS以外も含め15くらい新規事業→撤退を経験し、「戦略とはやらないことを決めること」だと思っているので、今回は開発、営業、マーケ、採用、全体戦略の5要素で、特にやるべきでないことをまとめたいと思います。

①開発の本レーンに乗らない固有受託はしない

SaaSをはじめるときは、PMFを見極めるために特定の企業のPoCなどに乗っからせてもらい、リリース前に予算をもらいながらプロダクトを磨くのが理想です。
PEPも初期のクライアントニーズに合わせてプロダクト開発をし、「自分たちがつくりたい機能」より「顧客に必要とされる機能」を重視して開発していきました。
しかしローンチ後は、顧客ニーズの最大公約数をとらなければグロースしません。
特定の企業のニーズにあわせて固有機能を開発すれば、その分の受託予算はもらえるので売上はあがります。
しかし本線に影響が出るものは受けるべきではありません
もしその開発が本来マイルストーンにあるものであれば受ける手はあると思います。そこの見極めをプロダクトオーナーはしっかりできないと、チームも混乱します。

②売れるためだけの機能を作らない

「どんな機能があれば良いか」を常に考えるのがプロダクトオーナーですが、
・特定企業(or業界)の独自ニーズ 
・競合の登場によるコモディティ化への不安 
・現場を知らない経営陣の助言
などでブレてしまい「売れるための機能」を重視してしまうことがあります。
短期的な効果があっても、初期の段階でそこばかり注力すると、既存顧客を無視することになり、チャーンが増えます。
初期は、1のうち0.5は既存顧客を守る機能開発に注力した方がよいかなと思っています。

③営業をメンバー任せにしない

初期の営業は責任者(≒経営者)がひたすらに回るべきだと思います。
組織の立ち上がり次第かもしれませんが、ローンチから2年は最低、トップ営業マン=プロダクトオーナーで、3年目以降もエンプラ案件や新しい機能を活用した案件は常に前線にいないと一瞬で感覚が失われます。
(ちなみに私はあと数年トップ営業をやるつもりです。)
他に売れるメンバーがいるいないは関係なく、
“今”の市場感を掴むためには営業としてターゲット顧客を回るのが最速かつ最善です。

④未実績の代理店を開拓しない

本格的なローンチをした後は、新規顧客獲得に躍起になるものですが、代理店開拓は慎重に行った方がよいと思います。
代理店契約を締結したとしても実績が出なければただのコストです。
また、運よく売れたとしても代理店の説明不足などにより、顧客から拡大解釈されていて、CSや開発側が混乱するリスクもあります。
なので、SaaSとして成果が見えるまでは直販がおススメです。
代理店プログラムなどは、早い段階でサポートしてくれたパートナーを優先して取り組めると良いかなと思います。

⑤体制が整わない中でマーケに投資しない

SNS広告、タクシー広告、展示会、カンファレンス、MAなど手段は多様化し、昔に比べればリード獲得はとても簡単になったので、事業責任者としてはありがたい話です。
しかし、一方手段が複雑化している分、SaaSのマーケができる人材が圧倒的に不足しています。
専門的な知見やスキルが求められるマーケを無駄に素人が行っても成果が半減(それどころか逆効果になることも)するので、マーケの体制が整うまではミニマルなオフラインイベントなど、自分たちでできる範囲のことに注力するのがおススメです。
(PEPもこれまでLP1枚で、ペイドの広告は一切やっていません。ようやく来年からちゃんとサイトもつくります)

⑥カルチャーフィットのみの中途採用をしない

採用はプロダクトを伸ばすにあたって最も重要です。
新規事業のPLで採用計画を組んだことがある方には痛いほど分かることかと思いますが、採用できたらMRRが¥〇〇あがる、というのは仮説に仮説を重ねることなのでとても難しいもの。
だからこそ焦ってしまい、結果組織が壊れるということが散見されます。
よく、組織では「スキルフィット<カルチャーフィット」と言いますよね。起業して11年経って、これは本当にそう思います。
ただ、カルチャーフィットしているけどスキルフィットしないメンバーを新規のSaaSにいきなりアサインしてしまうと、立ち上がりがかなり苦しくなります(教育したくてもできない)。カルチャーフィットは前提ではありますが、シビアにスキルフィットする人材を見極めることが大事(特に中途)。
ちなみに新卒に関しては、新規のSaaS事業に数名アサインするのはとてもアリだと思っている派です。PEPにアサインされた新卒メンバーもとても活躍しています。

⑦スピードにあわないメンバーを採用しない

⑥の話に紐づきますが、スキルとはまた別の軸で「スピード感についてこれる」ということが大事です。
初期のSaaSはPMFするまでは特に朝令暮改の連続です。
「こないだこう言ってたのに、話変わってるのなんでなん?」ということにいちいち納得感を持ちたいという人はちょっと合わないかもしれません。
それが普通だと思えるくらいのマネジメントはプロダクトオーナーには求められるし、そうなれないメンバーは採用しないことをおススメします。
一気に市場を駆け抜けないといけないので、メンバー間で説明コストを発生させない状況づくりは鉄則だと思います。

⑧センターピンが決まらない中でプライシングを決めない

これはとても重要でした。2019年最も学んだことかもしれません。
SaaSというのは様々な要素がかみ合わないと成立しないところがとても面白いのですが、一番の肝はプライシングだと思います。
事業のセンターピン=根幹の価値が決まり、その根幹の価値に顧客がお金を払う状態を作れないと持続的な事業は作れません。

例えば
・特定のタイミングでしか使わないサービスだから更新タイミングで解約されやすい
・提案先の企業規模や利用ユーザー数によって営業手法が変わる
・セールスが契約→CSによるサポートやオンボーディングの連携がしづらい

などの状況なのであれば、そもそも顧客は何に対してお金を払いたいのか?を検討して、プライシングを再検討するとガラッと変わるかもしれません。
顧客がお金を払いたい部分が決まらない中では、プライシングはニュートラルに変えられるようにしておくのもひとつの手かと思います。
(Webサイトでは「お問い合わせください!」にしておくなど)

⑨無理なビジョン設計をしない

ビジョンはとても重要なことは言うまでもありませんが、だからこそ慎重に考えるべきだと思っています。
義のなき信念は無に等しい。大事なのは義です。
世の中にはプロダクトアウトで始まるものと、マーケットインで始まるものがあり、ギブリーは比較的前者の製品を多くリリースしてきました。(私も過去たくさんリリースしましたが、多くが失敗しています)
PEPはマーケットインで、ビジョンは後発的に磨きをかけるスタンスで臨んでいます。
無理にビジョン設計をして、後で前提が変わると誰もついてこなくなります(ここは朝令暮改であってはならない)。
今は「ニーズがあることしかしないし、ニーズがあることから優先してつくる」という一貫した姿勢なので戦略通りに展開していれば一定伸びるとは思います。
ただ、それをアウトスタンディングなところまで持っていくためには、ビジョンが重要なので、2020年はここも磨きをかけたいと思っています。

最後に

PEPは1年半ですが、今とっても熱いフェーズです。フィールドセールス、カスタマーサポート、カスタマーサクセス、マーケティングのメンバー~責任者を採用しているので、よければぜひTwitterでDMいただくか、Wantedlyなどでご応募ください!まずは気軽にお話しできたら嬉しいです~!!

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