マガジンのカバー画像

フットボール 観戦記

53
運営しているクリエイター

2021年4月の記事一覧

Jリーグ 観戦記|青空が照らす|2021年J1第10節 川崎F vs 広島

 風の音が耳を触る。晴れ渡る空。その下で、生きたサッカーを体感できる。その幸せを映すかのように、空は青く輝く。  類似のアプローチ。人数を一方へと集める。そこから逆サイドへの展開。しかし、精度には開きがある。地上戦の川崎。空中戦の広島。そんな光景が繰り広げられる。  浅野はジェジエウに。ジュニオール・サントスは谷口に。田中には青山が寄せる。そんな中でも、両サイドバック、中盤、スリートップを関与させ、川崎は前線への道筋を作り出す。  スペースは個性に光を与える。後方から前

Jリーグ 観戦記|雨の先に|2021年J1第19節 川崎F vs 福岡

 空から降り注ぐ水滴は昨年の夏を想起させる。雨に濡れ、艶が浮き出る等々力。雨粒は光を受けてカーテンのような紋様を夜空に作り出す。  多摩川クラシコ後の一戦。勝手な印象だ。しかし、一拍の呼吸を置くような、どこか弛緩した雰囲気をこの一戦から感じ取る。トラックの上で炭酸のように弾ける雨。その冷たさは、その思いを加速させた。  風が頬に触れ、雨粒が身体の表面を濡らす。それは試合と僕の意識との間にいくばくかのフィルターを作り出す。川崎は福岡を追い詰め、遠野のゴールによって先制する。

Jリーグ 観戦記|鳥栖への賞賛とその意味|2021年J1第8節 川崎F vs 鳥栖

 多摩川にかかる夕日。等々力陸上競技場の前に盛られた丘。その上で鳴らされるトランペット。その音色は春の訪れを感じさせる。  雲のない、淡き青。それは平和で幸福に満ちた等々力の気配を包装紙のように上空から包んでくれる。青から黒への変異。空にもフロンターレの色を見つけた。  左右のウィングに配された小林と長谷川。チームの軸は変えず、新たに起用された選手たちはチームに刺激を加える。川崎の選手層は厚い。しかし、その厚さは臨機応変の狙いや先を見据えた戦略によって、勝利に還元されてい