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2024年3月の記事一覧

書評 #90|火星ダーク・バラード

 ディストピアと化した火星。遺伝子操作によって生み出された新人類、プログレッシブがその象徴だ。火星の開拓。人類の進化。その希求の根幹に善意はあったのか。私利私欲によって失せたのか。完全にはなれない人間。不完全な人間がシステムを作り、システムを嫌う人間が新たなシステムを作る連鎖。その構図は村上龍の「愛と幻想のファシズム」を想起させる。  システムに抗う力としての自我や暴力。恋の物語も織り交ぜながら、人と人とが交わることによって生み出される力も「超共感性」と呼ばれる特殊な能力に