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『復讐の協奏曲』でも、主人公の御子柴礼司は奔走する。その姿はさながら探偵のようだ。 魔の手は意外な人物へと手を伸ばす。仲間という感情的な言葉が使われることはないが、部下でもある日下部洋子のために身を削る。シリーズにおいて一定の心理的距離が存在した保護者と被保護者。その壁が壊され、距離が縮まったことによって過去の作品とは異なる趣を湛えている。それは冷血漢が見せる人間味と成長の証でもあり、作品に深みをもたらす。 本作は独立しているが、同時にシリーズを貫く一つの事件を起点
どこまでも論理的。その舌鋒も鋭利な刃物のようだ。御子柴礼司。彼に相対する組織や人々は敵を討伐するかのごとく、法廷に関連したあらゆる場所で攻勢を仕掛ける。その憤怒や憎しみを時に受け流し、歯に衣着せぬ言葉で跳ね返していく姿は実に痛快だ。 『恩讐の鎮魂曲』は中山七里の他作品と同様、作品という名の器にさまざまなテーマが含まれている。御子柴礼司本人が代弁する罪人の更生と贖罪。介護現場が抱える不条理。それらが織り成す複雑な人間模様が重厚な舞台を作り上げる。 その舞台を闊歩する御