書評 #63|ヒポクラテスの誓い
論理的であろうとすることは、物事をあるべき形に律することとも言えるのではないだろうか。それは尊い行いのように感じられる。清らかであり、険しくも長い一本の道を練り歩く求道者の姿が思い浮かぶ。
中山七里の『ヒポクラテスの誓い』はそんな情景を連想させる。寒風に当たり、身が引き締まるかのように澄んだ佇まい。真実を探るために、法医学者の光崎藤次郎が歩みを止めることはない。その一挙手一投足に無駄はなく、どこまでも美しい。活字から浮かぶ余韻は芸術的とすら感じる。
光崎は常人離れし