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2022年12月の記事一覧

書評 #62|悪徳の輪舞曲

 序盤から物語の根幹を成すと思われる展開が読者の度肝を抜く。その光景は強烈な印象を残す。それはどこからどう見ても真実としか思えないからだ。真実は果たして真実なのか。中山七里の『悪徳の輪舞曲』は「想像を超えることを期待する旅」と言えるのかもしれない。  その旅の道先案内人は御子柴礼司。人を殺めた過去を持つ弁護士だ。物語の構成要素として殺人を扱うことは珍しくないが、その加害者が読者の視点に立つことに物珍しさと同時に違和感を感じる。熱い氷を食べているような不思議な感覚だ。しかし、