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夢はガラスに

ここ最近のあるところに、おじいさんが住んでいました。ある時おじいさんはゲームセンターへ行きました。プリクラの機械から出てくるおじいさん。クレーンゲームが目に止まりました。

おじいさんがクレーンゲームの間を歩いていると、リラックマと出会いました。おじいさんはおりの中のリラックマを見るなり、一目散に逃げ出しました。熊が嫌いなおじいさんにとっては、プーさんだろうがくまモンだろうが、熊は熊なのです。

逃げ切ったおじいさん。ペンギンに出会いました。大好きな鳥を目の前に、クレーンのケースに手と顔をくっつけて、目をキラキラさせているおじいさん。しかしおじいさんは思い出します。家で飼っているメダカのことを。おじいさんはメダカが食べられるのを心配して、ペンギンを諦めました。

ガラスの靴を見つけました。子どもの頃の夢がシンデレラになることだったおじいさんは、飛び上がって喜びました。ゲームに挑戦することにしました。財布の中身を確認します。1823円。両替をしてスタートです。

1回目。ボタンを押してクレーンを横に動かしました。だいぶズレました。縦に動かしました。だいぶズレました。箱にかすりもせずにクレーンが元の位置に戻ります。おじいさん残念がっています。楽しそうです。

2回目。横に動かしました。今度はうまくいきました。縦に動かしました。少し前方にズレてしまいました。ちょっとだけ持ち上がりましたが、すぐに落ちてしまいました。おじいさん残念がっています。まだまだ楽しそうです。

その後も挑戦しますがなかなか取れません。おじいさんだんだん貧乏ゆすりが激しくなってきました。もうガラスの靴が欲しくて欲しくてたまらなくなってきています。先ほどベビーカーを見た時には、かぼちゃの馬車に見えたくらいです。

「ビビディ・バビディ・ブー」おじいさんついに発狂してしまいました。クレーンのケースを少し強めに叩いてしまっています。

急に箱が持ち上がるようになりました。アームの力が強くなったようです。おじいさんは呪文の効果があったと思い、手を叩いて喜んでいます。さっきのベビーカーが本当にかぼちゃの馬車で、押していたのは魔法使いだったのではないかとさえ思いはじめています。

穴付近まで箱を動かすことができましたが、所持金が残り1回分となってしまいました。本当は大好きなマリモカートをやって帰ろうとしていたおじいさんでしたが、ここまできたらあとには引けません。なくなく諦め、お金を入れました。

最後の挑戦。縦に動かしました。狙いの位置に動かせました。一旦停止して深呼吸します。その時、後ろから、「ジャックポット!!」と聞こえてきました。メダルゲームです。七色の光を放ちながら、メダルが大量に降ってきています。メダルの舞踏会が始まってしまいました。

舞踏会が終わりそうにないので、再開しようとしましたが、何か引っかかることがあります。……思い出しました。プリクラの写真を持って帰り忘れています。取りに行こうかどうしようか迷うおじいさん。……すると、クレーンが下に降りてきました。時間切れです。アームが開き、閉じ、クレーンがドヤ顔で元の位置に戻っていきます。

12時になりました。お腹もすいたので、おじいさんはしぶしぶ帰ることにしました。プリクラの写真を手に取ります。お目々ぱっちりで、満面の笑みを浮かべているおじいさんを、懐かしく思うおじいさんなのでした。

めでたしめでたし。

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