手〈fetishism31の為に〉〈2,手〉

春風〈しゅんぷう〉を手が泳ぎ、花束は残酷になる。

彩豊かな微睡の幾つかを、

甘く官能的に編んで行く指は、

触れた途端に痺れて固くなる。


何を思い出しているのだろう?この手は?

怒りでも安らぎでも恍惚でもなく、

それは明瞭に形状を目指して

何かをそっと掴もうとしている。


しかし、それが何かを捉えるより先に

ナニカは淡く溶け出していて、

手は虚しそうに春風を泳いだのだった、

生ぬるい光の中を泳いだのだった。

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