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夢追う主婦の人生の楽しみ方『せんせ』

大人になったら何になりたいですか?
この質問は幼稚園や保育園くらいから始まる。
親は、生まれたての赤ちゃんに
『大きくなったら〇〇になるの?』と、
愛情と勝手な期待を持って子どもに話しかける。

子供たちは、このような経験を通して、自然に働く事に憧れをいだき、淡い夢を仕事に対して意識し始めるのかも知れない。



私自身も子どもの頃から、年齢と共になりたい職業が変わっていった。

お花屋さんから始まり、学校の先生、塾の先生、客室乗務員、幼稚園の先生が私の夢だった。
しかし
アパレル営業事務、回転寿司、運輸局臨時職員、検品、銀行事務、物流etc...

夢と現実は違うようで、
私は見事に全く違う職業に就いていた。

私が経験したのはほんの一部だ。
世界中の仕事を探したら、どれほどの仕事があるだろうか。世界中、星の数ほどの仕事の中から、今の職業を選んでいるとしたら、もうそれだけでも立派なもの。私からしたら・・・。
何か運命的なものを感じてしまうのは何故なのだろう。
それでも夢はいつまでも追いかけていきたい。




先日、街の商店街にある居酒屋に夫と行った。
『いらっしゃいませ』
大将の威勢の良い声が飛び込んできた。
『ここ空いてますか』
夫と大将の心地よい言葉のキャッチボール、まさに阿吽の呼吸だ。
そして私達は、特等席のカウンターに案内され大将の前に静かに座った。


まずはグラスを合わせて乾杯。ここのビールは、何故か喉が鳴る。お店の定番料理をいただいた。
夫はお店の大将から『せんせ』と呼ばれていたので、すぐに常連さんだと分かった。
夫はしばらくして隣の恵比寿様のような顔をした80代の男性と話を始めた。その方は夫とそこで知り合った常連さんだった。
そして、隣の人もその隣の人も同じく知り合いだった。
知り合いばかりなので、お店にどれくらいの頻度できているのか夫に聞いたら、

『しょっちゅう来てる』と。

私はすごく納得した。
私はそんな和気あいあいとした雰囲気とその居酒屋やが好きだ。
きっと夫はもっと好きだろう。間違いない。

そしてふと前に目をやると大将が一生懸命料理を作っている。
年齢は70代から80代くらいだろうか。
マスクをしているから顔全体は分からないが、目元だけでも優しくて温かくて、話し方も穏やか。
『鯛のあら煮作って』
と指示を飛ばす姿もかっこいい。
時々忘れる所もご愛嬌で可愛い。
そういう大将がいてお店の雰囲気もどこか家庭的で、尚且つ美味しい料理を提供するお店だから人が集まる。
私はここの居酒屋の大将がひたむきに作る姿をみて人って一生懸命な姿ってかっこいいなって改めて思ったと同時に、
夫が『せんせ』と呼ばれる理由が知りたくなった。


そうこうしてる内に、私の中で言葉で言い表せないような何かが動き出して、15年前くらい前に友達が
『本を書いてみたら?』と
言ってくれた事をふと思い出した。
その言葉はずっと私の心の中にあった。

夫の居酒屋ネームが『せんせ』ならば、
私も『せんせ』と呼ばれたい、私も『せんせ』になりたいと、新たな夢が浮かび上がってきた。
夫に対向意識を燃やしているのだろうか、いや違う、子どもの頃からの『先生』になりたい夢を叶えたい気持ちが急浮上しているに違いない。

私は今50歳、人生100年時代ならばすでに折り返し地点に立っている。もしあと数十年生きられるなら、これからも希望を持ち続けて、また新たな夢に向かって前進したい。


友達の言葉が私の可能性を広げてくれて、夫が好きな居酒屋で『せんせ』と呼ばれている事を知って、私の対向意識ならぬ何かが動いて、
それが繋がって、今ここに書いている。

ただ何故『せんせ』と呼ばれているかは今だに不明のままだ。

ふと、夫が子供の頃学校の先生になりたいと言っていたのを思い出した。
夫は、その夢をこの人生の酒場で叶えていた。



#創作大賞2024 #エッセイ部門 #夢追う主婦 #せんせ

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