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令和ロマンがM-1で笑わせる意義

「M-1大好きです!来年も出ます!」
「来年も、出るみたいです」

2023年12月24日。

第19代目の王者に輝いた令和ロマンは、
優勝した瞬間に、
再優勝の宣言をした。

これには、誰もが耳を疑った。

彼らは涙も流さず、抱き合いもせず、ただ、もう一度この舞台に帰ってくると叫んだのだ。

優勝したらM-1を卒業し、王者として漫才を続けていくのが当たり前だと思っていたが、彼らにとっては、挑戦者として「再優勝」を目指すことのほうが当たり前なのかもしれない。

なぜなら、彼らは「漫才師」だからである。


令和ロマンは、ファーストラウンドでトップバッターとなった。笑神籤が彼らを呼んだ瞬間、ボケの髙比良くるまは「会場の空気をつくること」が自分たちの仕事だと感じたそうだ。

全員がウケる超神大会にしてやろうとと思った彼らは、用意していた4つのネタからよりお客さんに話しかけるものを選び、つかみにも時間をかけた。

この意識が、まずおかしい。

芸人同士の壁が緩み、旧M-1ほどのピリピリは無くなってきているとはいえども、それでもまだ、M-1は勝ちにこだわる大会のはずだ。

それなのに、彼らは
M-1で「勝つこと」
よりも
M-1のお客さんを「笑わせること」
を第一に考えていたように思える。


1. さや香   659点

2. ヤーレンズ 656点

3. 令和ロマン 648点

これは、上位3組のファーストラウンドの得点である。
髙比良くるまは、トップバッターでウケて超神大会にしてやろうと思ったが、結果的に彼らがウケすぎたおかげで、その後令和ロマンを超えるコンビが2組しか出なかった。トップバッターにはやはり"様子見"の点数をつけざるを得なかったためか、全体的に例年より点数が低い大会となった。

確かに、過去2大会と比べると、
2022年の最高得点は、さや香の667点

2021年の最高得点は、オズワルドの665点

(ちなみに、現在の歴代最高得点は、ミルクボーイの681点である)

とこのようであり、今大会の最高得点である659点がここ最近の中では低めだったことが言える。

そんな中むかえた最終決戦。
それについても、くるまはこう語った。

「(2023年の大会は)良くない回だったと言われたくないと頭をよぎって絶対にウケなきゃと思った」

そして、ともに最終決戦に挑む2組に、この言葉を残して再びトップバッター(1番)で舞台に上がった。

「俺らが1番で絶対ウケるんで」

これは、ライバルへの敵対心ではなかった。

後半の盛り上がりに欠けて少し重くなったようにも感じたM-1の会場を、自分たちの手で盛り上げるために、

ただ、目の前のお客さんを笑わせるために、

彼らは最終決戦に現れた。

だからこそ、髙比良くるまのこのような発言は、
彼らが

「M-1で優勝すること」よりも

「M-1という『舞台』で漫才をすること」

に価値を見出していたように思わせるのだ。


お客さんにウケたい。


令和ロマンは、これからも「漫才師」としてきっとこの情熱を燃やし続けるのだろう。

そして、あの黄金の舞台の素晴らしさを生で体感した彼らが、そこに立つ喜びを再び味わおうとするのは、必然なのだろう。

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