村田沙耶香『地球星人』を読んで感じた、2つの恐怖
村田沙耶香『地球星人』は、怖かった。
あっという間に読み終わっていた。
私は読んでいる間、どんな顔をしていたのだろう、と思う。
ポハピピンポボピア星人目線で地球星人を一方的に見ている部分と、ポハピピンポボピア星人の3人の世界がどんどん閉じていく部分が、とにかく怖かった。
普通じゃない主人公の目線で世の中を疑似体験する。
多様性がなくなっていく中、ある特殊な価値観の比率が大きくなって世界が閉じていく。
ドブラマグラ
高校生の時に『ドグラ・マグラ』を読んだ。
主人公が「なんでここにいるんだろう」といろいろ考えている最初のところで読むのを止めた。
食事を持ってきた女性の手をつかみ、
「・・・・・僕は・・・・・僕の名前は・・・・・何というのですか。・・・僕は狂人でも・・・・・何でもない・・・・・」
と言ったあたりで、パタッと本を閉じた。
これは、読み進めてはいけない本だと本能で感じ取った気がする。
冷たい熱帯魚
『愛のむきだし』でファンになった、園子温監督の新しい作品が出たということで、『冷たい熱帯魚』を7年くらい前に観た。
主人公は、強烈な思想や哲学で魅力的な人物で、周りはそれに絡め取られていく。
偏った価値観が大きくなり、世界がどんどん狭くなっていく。そして、自分たちとは別の外側の人たちを裁いていく(捌いていく?)。
登場人物たちの世界が狭くなっていく時、私もその世界に惹き込まれる。
2つの恐怖
村田沙耶香『地球星人』は、この2つがたっぷりとあった。
私は何に恐怖しているのだろうかと考える。
普通じゃない感覚で世界を見たり、閉じていく世界の危ない価値観で世の中を見ること。
これらが、心地よく思っている自分がいること。共感している自分がいること。
これに恐怖しているのではないかと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?