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忘れられない方々:俳句幼稚園企画

人生訓刻まれし庭金木犀
秋湿り独りの部屋のタバコの香
古文書の辿る指先律の風

じんせいくんきざまれしにわきんもくせい
あきしめりひとりのへやのたばこのか
こもんじょのたどるゆびさきりちのかぜ

ラベンダーさんが、俳句幼稚園でまたまた素敵な企画を立てて下さったので参加します。忘れられないあの人、この人。介護関係の職について20年余り、たくさんの利用者さん、ご家族と出会い、関りを持ってきました。
振り返ると利用者さんからいただいたものがたくさんあって、お一人お一人の人生の輝きにお供できるのが本当にありがたいことでした。忘れられない方がたくさんいます。
心に残る3名の方を思い出して詠んでみました。

1句目:本当に駆け出しの頃。訪問介護のヘルパーとして担当した方。猫をかわいがり、お庭の草花や木を大切にしていた方。介護保険制度開始したばかりのなんでもありな時代、今は時効だけれど、お庭の草取りなども業務となっていた。彼女の家に大きな木犀がありその匂いに包まれながらたくさんのお話を伺った。「人が生きるのにね、一番大事なことは人を見る目を養うことなのよ」なるほどな~って今でも思う。

2句目:地域で有名な問題児的な利用者さんのこと。わがままな困ったちゃんと呼ぶ人もいた。一人暮らしのお部屋は北向きで暗くてジメジメした雰囲気だった。ヘビースモーカーで玄関開けるともうタバコの匂いがしていた。ほとんど寝たきりなのに、どうしてこんなに強気でいられるのか?って思ったりもした。ケアマネを使い倒して、ヘルパー事業所も全滅するくらいに、次から次にダメ出ししてくる方。
ケアマネ2年目くらいのとき、何となく順番が回ってきた感じで担当になって、入所されるまで数年間支援して、私が在宅最後のケアマネとなった。
もう少し優しい言葉をかけてあげたかったと思ったりするけれど、新人ケアマネの真っ向勝負な感じが、ご本人には新鮮だったかもしれない。本人の強がりや寂しさ、今ならもっと理解できるのに。

3句目:ご本人は教育者でも学者でもなく、町工場を経営していたのだけれど古文書の解読を学び、晩年のライフワークにしていた。月々のモニタリングの度、地域のお殿様の話や古文書に記された訴訟のことや、昔の人の暮らしぶり等教えてくださった。博識で穏やかな語り口のこの方は、毎月A42枚程度の随筆を認めデイサービスに持っていったりしていた。90歳近くで電子辞書を使いこなし、何歳になっても学び続ける姿勢が素晴らしいと思った。

全ての方の人生が、等しくかけがえのない尊いものだと思う。一つとして同じ生き方はない。関わらせていただいた利用者さん、忘れがたい人ばかりだ。