とりかうおか
文:よしおか あゆみ /絵:いがらし さき
海か。
コンクリートで、海と陸の境界を綺麗にストンと切り分けられた足元を見る。
山から転げ落ちて幾星霜、たどり着いたのが無機質な埋立地の倉庫街とは、ずいぶん色気がないものだ。
間もなく顔を出すであろう太陽の先駆けの光が、赤く空を覆っている。
そしてそれは、そう遠くない対岸のビル群を背後から煌々と照らし、まるで黒い積み木を積み上げたようになっていた。
間近で見るとあんなにも雑多なのに、
こうして見ると少しかわいい。
朝が早すぎるのか、それともここがそうなのか、空には一羽も鳥は飛んでいない。足元の海にも…こんなところに魚はいないだろう。
でも自分は、この先に進まなければならない。
行けるのが空か海かの選択ならば、次になるのは鳥か魚か、どちらかになるのだろう。
二択は初めてだな、と、すこし口元が綻んだ。
気を引き締め直し、後ろ足を蹴って宙へ跳ね上がる。
このまま羽ばたけば鳥、海に落ちれば魚。
とりかうおか
きっとこれが最期の旅。
あなたの清き一投が明日の五十嵐を生かします💁♀️