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【講師インタビュー③】中高という拘束、大学という自由〜永山系さんの場合〜

今回は、講師の永山系さん(仮名)にお話を伺いました!
「学校にいること」にずっと苦しい思いをされてきた永山さん。大学・大学院を経て、「学問が視点を供給してくれた」と話す永山さんは、その言葉通り、「学校」という場を非常に独特な視点から捉えています。今苦しい思いをしている方の新しい光となるような、そんな話をしてくれました。

永山系(ながやま・けい)
東京大学工学部を卒業、東京大学大学院在学中
指導科目:英語・数学

1.「学校というもの」が、ずっと苦しかった

──永山さんは、中高と強いストレスを抱えていました。「僕を友達だと思っている人はいても、僕が主観的に友達だと思う人がいなかった」と話す永山さん。

「学校がしんどかった直接の理由は、中三から高一まで友達が全然いなかったことです。僕のことを友達だと思っている人はいたんだと思います。でも、僕自身が主観的に「友達がいる」と思える人はいなかった。

その上、他人の視線を意識してしまうんです。他人が見ている、「友達がいない」と思われたくない、そしてそんな風に意識していると思われたくない、……そうやって無限に続いていく。同年代の人がたくさんいる場所でこうなってしまうと、本当に地獄です」

──そんな永山さんは、「学校」そのものの仕組みが与えるストレスについて話します。

「今から振り返ると、学校という存在そのものにストレスを感じていたんでしょうね。校則はほぼなかったんですが、学校ってそれでも異常な空間だと思うんですよ。あんなに同年代の人を集めて、年次で区切って集団生活をさせてるって、歴史的にも異常な場所です。

それに、僕たちは学校に通っているとき、毎朝同じ時間に起きて、同じ時間に座って、同じ時間に帰って……ってことをするじゃないですか。ある種の人にとってはこれがすごくつらいんです。でもこれって別に明文化されているわけでもないし、友達同士で確認し合うわけでもない。

つまり、みんな「明文化されていない約束を守る」ことを前提としていて、そのことで集団の一員になる、違反すると集団の一員から外れる……そういう場所なんですよね、学校。

本当は学校なんていかなくても全然いい、教室なんてしんどい空間にいかなくていい。そのはずなのに、いってしまってしんどい。そういうストレスの溜まり方をしましたし、学校はそうさせてしまう場所だと思います」


2.予備校そして大学、どんどん自由になる世界

──「でも、予備校に入って楽になりましたよ」と永山さんは話します。さらに、「大学に入って、もっともっと楽になった」とも。

「人生ってこんなに楽になるんですね。僕、中高にいたときはずっと胃が焼けるように痛かったんですけど、大学入って『胃は痛くないものなんだ』って知りました。

楽になった理由は、ひとつは積み重なった6年間から逃れられるからです。地理的に通う場所が変わったことも大きいですね、僕は中高は関西でしたから……なんていうんだろう、土地って記憶が伴うじゃないですか、馴染みの道を通ったらいろいろ思い出しちゃうとか、そういう感じで。

それと、自由になるんですよね。予備校では、毎日決まった場所に座らなくてもいい。大学に入ったらもっと自由になりました、授業を「とる」「切る」が決められるわけですから。正直語学の授業なんて全然出席してませんでしたが、出席しなくても単位が取れるように工夫すればそれでいいんです、大学は。

人間関係が固定化されていたところを逃れて、地理的にも移動して、制度的にも別の制度の中に入っていく。自由度がどんどん上がっていく。自由であることは大変なことなんだけど、その自由に救われています」

──それから永山さんはもう一度、中高時代を振り返ります。「ただ、得られるものはあったんですよ。今振り返ってわかることですけどね」と語ってくれました。

「中高の頃、めちゃくちゃ気にかけてくれた友達がいたんです。その友達がいたからなんとかなりました。彼にはすごく感謝しています。

それに気がついたのは、彼が日常的に過ごす相手じゃなくなったからだと思います。今こうやって中高について語れるのも、一度そこから切り離されたからですね」

──「学問は、個人的な救いになるんです」と、永山さんは語ります。

「学問のすごいところは、視点を供給してくれるところです。今こうやって中高の話をできるのは、昔読んだ制度論や社会学、都市論の話のおかげです。個人的な救いになるっていうのは、学問の大事なところだと思うなぁ」

3.家庭教師として生徒さんと関わるときに大切にしていること

──そんな永山さんは、「相対化、を大事にしています」と話してくださいました。

「今までの話の延長なんですけど、『何をやってもいいはずなのに、いつの間にか拘束されてしまっている』っていう状況って、あると思うんです。自由だと思っていても拘束されていたり、本当は自由なのに拘束されていると思ってしまったり。

それを相対化するのって、子供にはまだ難しい。大人がそれを利用しているという面も、正直あると思います。だから、それをとにかく相対化したいですね。それは本当に君の意見なのか、それとも周りがそう思っているからそう思っているのか?とか」

──もう一つ、学問を大事にする永山さんだからこそのコメントもいただきました。

「ちょっと年上の人がいると何が嬉しいかって、『検索キーワード』を教えてもらえることだと思うんですよね。自分が気づいていなかった関連分野をふっと教えてもらえたり、興味がないことでもなんとなく聞いているうちに興味が出てきたりとか。視野が広がるんです。

だから、ちょっと先にいる人の理解とか価値を伝えるって、すごい大事だと思うんです。僕はそういう存在になりたい」

4.今、不登校で苦しんでいるあなたへ

「ひとつめのメッセージは、何をしてもいいよ、ということです。物理的には何をしてもいいんですよ。不登校やってもいい。

僕たちは自由。他のあり方がありうるんです。他のあり方があるっていうことを意識すると、僕たちに自由があるってことが観念できます。だから、相対化していきましょう。それを助けるのが僕らですから。

ふたつめ。今の自分の延長線上で自分の未来を捉えると、暗い気持ちになっちゃうことってありませんか。今の自分は、ただ、今の自分なんです。宿命でもなんでもない。これからどうなるかは、今とは全く関係がない。

あれだけ中高、いろいろと大変だった僕の人生は、今、楽しくなる一方なんです。もちろん、すぐこの言葉を受け入れるのは大変だと思うけど、そういうときに例えば文学とか映像作品とかを読むと、自分を相対化できるかなって思います。創作にはそういう力がありますよね。

あとは……そうだな、一人暮らしはいいですよ、ってことくらいかな!」


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