惑星大直列のナゾ
たぶん「あるある」だと思うんだけど、たとえば、あなたが狭い道を歩いていたとしよう。クルマが2台通れないくらいの道だ。そこをむこうからも歩行者がやってくる。さらにそのむこうからクルマもやってくる。
ことばで説明するのがむずかしいので図解するとこんな感じだ。
| 車――車 |
| ↓ |
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| 人|
| ↓ |
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|↑ |
|私 |
下手なアスキーアートみたいになってしまったけど気にせず続けよう。このばあい、まずは下図のようにクルマがむこうの歩行者を追い抜くのが正解。
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| 車――車 人|
| ↓ ↓ |
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|↑ |
|私 |
それから、ぼくを追い抜いてもらいたいわけだ。こんな風に↓。
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| 人|
| ↓ |
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| ↑ |
| 私車――車|
| ↓ |
しかし、現実には99%の確率で次のようになってしまうのである。
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|↑ |
|私 車――車 人|
| ↓ ↓ |
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クソ狭いところで、3者がピタッと横一列で並んでしまう。この現象を個人的には「惑星大直列現象」と呼んでいる。ぼくも、クルマも、相手側の歩行者も、だれもこの展開を望んでいない。しかし、なぜかこうなるのである。ひどい場合は、自転車が加わって4者の惑星大直列が完成することもある。
ぼくじしんは歩いていて、「あっ・・放っておくと数秒後に惑星大直列がやってくるな」とわかることがある。そのばあいは、なんとかしてこの未来を変えようと努力する。
わざとゆっくり歩いてみたり、速足であるいたりしてタイミングをずらそうと試みる。たぶん、向こう側の歩行者もクルマも、おなじようにタイミングをズラそうとがんばってくれているはずだ。みんなで
地球の未来を変えよう
と試みるのである。だが99%以上の確率で失敗に終わる。なぜか3者の努力が相殺されて、ビタッと横一列にならぶ。
廊下ですれ違おうとして、「右ー>左ー>右」と相手に合わせてステップを踏んでしまうことがありますよね。あれとおんなじだ。がんばってもダメなのである。
これで思い出したことがある。題して「プロ野球のナゾ」。
野球というのは、ピッチャーがボールを投げて、それをバッターが打つ遊びだけど、そもそも「ボールを投げる」という動作と、「棒でしばく」という動作は根本的には無関係なのである。
200年位前のアメリカで、「だれかがボールを投げて、それを別のだれかが打ったらおもしろいな」と気づいたらしい。そのときに、なげる動作としばく動作が組み合わされただけであり、投げることとしばくことは、ノルディック複合の「ジャンプ」と「クロスカントリー」みたいに本質的には無関係なのだ。
ノルディック複合は、このジャンプとクロスカントリーのバランスが崩れた時代があった。日本人がジャンプの技術を伸ばして確実に勝てるようになってしまった。そうすると、ジャンプの得点を軽くするルール改正が行われた。
その是非はともかくとして、関係ないものを組み合わせたばあい、こういうことが起こるのがあたりまえだと思う。クロスカントリーのタイムは頭打ちなのに、ジャンプの技術だけがどんどん伸びていくというようなことは起こって当たり前だ。
しかし、野球の投げる技術と打つ技術の「バランス」はこの200年間おどろくほど変わっていない。
打つほうはどんどん筋肉をつけて体が大きくなり、理論も進歩したが、投げるほうも、140キロ、150キロ、いまでは160キロがあたりまえみたいになってきている。
どこかで投打のバランスが崩れて「球が速くなりすぎても、もはやだれにも打てない」とか、「どんな球を投げてもぜんぶヒットになる」というようなことが起こってもよさそうなもんだ。
なのに、あいかわらず2割から3割の勝負をやっている。ピッチャーがいいコースに投げ込んだらどんなバッターでも打てないし、甘く入ったら確実に打たれる。5cmくらいのところで駆け引きしているのは、ずーっとおなじだ。
ピッチャーとバッターがたがいに相手を上回ろうとしてがんばればがんばるほど、惑星大直列みたいにピタッと合わせて進化してしまうのだろうか。じつに不思議。
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