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ごめんね、テッシー!

ぼくは若いころ、テレビに凶悪犯が映るたびに「この人の子どもがかわいそうだ」言うのが口癖だったらしい。自分ではあまり意識してなかったけど、母がそういっていた。

「イヤな思いをさせたんやなあ、ごめんなー」とあやまられてしまったんだけど、彼女が原因ではないのであやまられても困る(ちなみにだらしないオヤジだけど凶悪犯ではない)。

それはともかく、凶悪犯がメディアで話題になると、いまでもその家族のことが心配になる。宮崎勤元死刑囚の父親は自殺したそうだ。ムゴイことである。和歌山カレー事件の息子さんも、その後タイヘンな苦労をしたと聞く。

座間事件も、加害者本人は刑務所の塀に守られているけれども、その家族は無防備である。世間からたいへんな圧力を受けていることだろう。

被告本人についてのぼくの思いは一昨日のnoteに書いた(顔をおおう被告)。コトをしでかした本人は、移送される際に、数秒顔を隠せばそれで済むかもしれない。しかし家族に逃げ場はなく、ずっと針のむしろである。窓ガラスを割られたりするだろうし、脅迫電話が鳴りやまないかもしれない。たぶん、買い物にも出られないだろう。

それをおもえば(不謹慎かもしれないが)「よくある名字でよかったなー。白石とか宮崎とか」と思うのである。いずれ逃げるように引っ越すのだろうが、宮崎さんや白石さんなら、引っ越してきてもそれほど疑われないで済む。宮崎駿やら、宮崎美子やら、生協の白石さんやらいるのだから、宮崎一家や白石一家が引っ越してきてもそれほど不審には思われないだろう。

しかし、もし仮に凶悪犯の名字が「勅使河原(てしがわら)」だったらどうだろう?(世の勅使河原さんたちには申し訳ないが、ほかに珍しい名字が思い浮かばなかった)。

凶悪事件の直後に、勅使河原一家がとなりに引っ越して来たらどうです?疑いますよね?

さらに、犯人とは一切なんの関係もない勅使河原さんも世間にはそこそこいるわけだけど、そういう人たちも、めいわくする。病院の受付で「てしがわらさん」と呼ばれたらみんなが振り向いて「犯人の親戚かな?」と思われたりするわけである。

しかも、酒鬼薔薇聖斗みたいにやがて出所することもあるわけだ。彼が出所した後は、全国のあちこちで「ここに潜伏していた」という騒ぎが起こった。

さいわい酒鬼薔薇の本名はよくある名字だから、名字による二次被害はなかったと思う。しかし、万が一酒鬼薔薇聖斗の本名が「勅使河原」だった場合(全国の勅使河原さん、かさねがさねスイマセン)、全国で一人暮らししている同じ年かっこうの勅使河原さんは、いっせいに犯人扱いされて面倒なことになるだろう。

じつは、ススキノ探偵シリーズで知られる東直巳氏の小説に、そういうのがあるのだ。まったくの別人が、酒鬼薔薇とまちがわれて引っ越ししなければならなくなる。

ともかく、ぼくが今回の報道をみてまず思ったのは「白石だから、家族はなんとか逃げられればいいけどなあ…」である。

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