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何が運がいいかは意外にわからない

つい先日「SVBショック」というのがあったけど、あれにはびっくりしましたね。

SVBショックとは、アメリカのシリコンバレー銀行(略してSVB)がとりつけ騒ぎで経営破綻したことがきっかけで起こった一連の金融ショックである。

バンクにラン

なお、「とりつけ騒ぎ」は、英語でバンク・ラン(Bank Run)と呼ばれる。「バンクにラン」だから、

銀行へ走れ!

という意味なのでわかりやすい。そういうわけで、とりつけ騒ぎとは、

あの銀行潰れるらしいよ!その前に貯金下ろさなくっちゃ!

といううわさが広まって、みんなが一斉にバンクにランして起こる。銀行は日ごろ預金者全員分の現ナマを用意しているわけじゃないので、結果として、銀行のお金が足りなくなってつぶれてしまう。

今回のSVBショックも、発端はSNSでの噂だったのだそうだ。それで不安をあおられた預金者が一斉にバンクにランしたせいで、破綻しないでいい銀行が破綻してしまった。

破綻の内幕

こんな風に書くとバンクにランした人たちがまるでタンスにゴンみたいな愚か者のように思ってしまいがちだが、そんなかんたんなことではなかったとわかる。

今回破綻した銀行はシリコンバレーという名前の通り、IT系スタートアップ企業の資金が集まっていた。

預金者は、シリコンバレーの夢を追いかけて苦労をかさねて資金調達した人たちばかりで、「その資金がなくなったら人生終わりだ!」という必死の思いで銀行にランしており、庶民がほいほいとトイレットペーパーを買いあさるような無責任な集団心理にかられたわけではない。

4人の起業家の事情を取材したポッドキャスト番組があったので、それを聞いてみたところ、みな死に物狂いだったようだ。

不幸中の幸い?

それはともかく、今回の銀行危機はただでさえ弱っている世界の金融にかなりのストレスをかけることになったが、いまにしてみれば、これは不幸中の幸いだったのではないかという意見がちらほらと出始めている。

この記事によれば、リーマンショック以降、こういうことが繰り返されないように大きな金融機関の規制強化は進んでいたが、中小の銀行はむしろトランプ政権下で規制緩和へむかっていたのだという。

こうした中小銀行が保有する資産の大半は米国債のような優良債権なのだそうだが、昨今の急激な利上げに伴って国債価格が下落し、それが含み損になっていたという。

今回の騒ぎがおこったおかげで、そのリスクが顕在化し、早めに手を打つことができたけど、もしあのとりつけ騒ぎが起こらず、中小の銀行が巨額の含み損を抱えたまま、さらに利上げがすすみ、そのリスクが一斉に顕在化していたら、リーマンクラスの危機が起こっていた可能性がある(今からでも起こる可能性はあるけど)。

コロナと戦争で世界が弱り切っているところにリーマン級のショックが来たら、リーマンどころではない騒ぎになっていたかもしれないのである。

そう考えると、世界はぎりぎりのところで助かったとも言えるわけだ。このニュースを聞いたときには「また金融ショックか。いいかげんにしてくれ」という感じでうんざりしていたんだけど、今にして思えば運が良かったのかもしれないので、何が運がいいかというのはわからないものである。

こんな感じで人類はまだまだ運が良さそうな気もするので、来たるべきさまざまな災厄に対しても、こんな感じでギリギリ防げればいいなあと、無責任に思っている。

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