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存在が忘れられたモノ

タレントさんが事務所ともめて芸名を使えなくなるというのはときどき聞く。本名を使えなくなることすらある。外からはうかがい知れない事情があって仕方がなかったのだろうが、それで得をする人はいないだろう。

ゲームや映画でもこういうことはよくある。
つい先日、マイクロソフトのXboxというゲーム機に昔のゲームが70作品追加された。名作を未来に残そうという良い企画である

しかし今回の70作で終わりなのだそうだ。「ライセンス、法的問題、テクノロジーの制約により過去のゲームを復活させるのはこれで限界」と記されている。

まだ埋もれているタイトルは多い。
たとえば007シリーズが一つも復活していないが、権利の問題でむりなのだろう。

映画も同じで、すぐれた作品で埋もれているものはけっこうある。たとえばイタリアのフランチェスコ・ロージ監督の作品はほとんど埋もれている。

『真実の瞬間』、『コーザ・ノストラ』『予告された殺人の記録』『遙かなる帰郷』などなど、いずれもデジタル化されていない。ぼくは『真実の瞬間』のLDをたまたま持っているんだけど、今は中古ですら流通していない。アマゾンにもパンフレットが1枚出品されているだけだ。

カラーなので実際はこうである。

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でもどこにもないんだよな~。いい作品なので信じられない。CSの「ザ・シネマ」というところで1回放送されているらしく、Filmarksという映画専門のSNSに以下の投稿があった。

メモとして。ザ・シネマで2017年5月12日放送。ザ・シネマは、ここ最近びっくりするような掘り出し物映画を放送してくれるな。(Filmarks

「びっくりするような掘り出し物」ということは骨とう品のように埋もれていたわけで、そしてびっくりするくらいよかったのだろう。そりゃそうだよ。

ぼくはコレクションしたいわけでも秘匿したいわけでもないので、デジタル化してYouTubeにでも上げたいのだがそうもいかない。アップしてもどうせ数百人が見るだけだから利益にはならないし、忘れられるよりは見られたほうがいいと思うので以前はやっていた。でも、いまは念のため削除している。プライムビデオなどに追加されればいいけど、そもそも存在が忘れられてしまったらどうにもならない。

『遥かなる帰郷』というロージ作品も埋もれているが、以下の解説がわかりやすい。

アウシュヴィッツから奇跡的に生還したプリーモ・レーヴィが、故郷イタリアヘと戻るまでの8カ月間の旅を書き記した『休戦』の映画化である。この原作は、『夜と霧』『アンネの日記』と並ぶ記録文学のベストセラーとなり、1987年、映画化が企画された時、レーヴィは“人生の暗黒の部分に一筋の光を当てられた”と喜んだが、1週間後に自殺。このことによって1度は映画化を断念した(中略)巨匠フランチェスコ・ロージが、渾身の思いを込めて完成させた魂の叙事詩である。(Cross of Iron - 戦争映画専門サイト

見た人は「一度見たほうがいい」と言う。ぼくは『真実の瞬間』を見たあとで探し回ったのだが「記録文学のベストセラー」というわりにはLDにもなってない。レンタル落ちしたVHSがメルカリに出品されていたのでなんとか手に入れた。

原作者と同じくらい不遇の作品で、いつかあたりまえにみられるようになるといいなあ。

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