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子どもたちの幸福度低下がヤバい

3月20日って何の日か知っていますか?
ぼくも最近まで知らなかったんだけど、国連の定める

世界幸福デー

なんだそうだ。毎年、同月同日には「世界幸福レポート」というのが発表されるならわしになっているそうで、これは、多くの人が一度は耳にしたことがあるだろう。例の「国別幸福度ランキング」というやつである。発表されるたびに、日本の幸福度ランキングが

先進国で最低・・

みたいなことがメディアで取りざたされるのが、もはや年中行事として定着しつつある。春をつげる現代の風物詩といっても過言ではない。

ちなみに今年の報告書では日本は143か国中51位だった。首位はフィンランドで7年連続だそうだ。2位がデンマークで、以下、アイスランド、スウェーデンと続く・・まあ、だいたいあのあたりですね。あのあたりの国々の幸福度が高いわけだ。

ちなみに日本の次の52位は韓国なので、サッカーだけでなく、こんなところでも日韓戦をやっていることがわかる。ユーロ諸国のハイレベルな戦いは無視して、はげしいつばぜり合いを繰り広げている。

ウェルビーイングとは

ところで、幸福度は英語ではハッピネスではなくてウェルビーイングと呼ばれる。ウェルビーイングは、ハッピネスみたいなウキウキしたニュアンスの言葉ではなくて、生活が健全で安心みたいなニュアンスだ。

そして、日本には「公益財団法人well-being for planet earth」というのがあるらしいんですね。昨日まで知らなかったけど。そして、ここの代表理事をやっているのが予防医学者の石川善樹さんという人なんだそうだ。

先日、この石川さんの出ている動画を偶然見て、考えさせられてしまったので、今日はその内容を紹介します。一言でいうと

日本の子どもたちの幸福度の低下がマジでヤバい

ということです。

以下の情報は、もっぱら石川さんのレクチャーの受け売りです。ほとんどウラはとってません。なので信じるかどうかはあなた次第なのだが、石川さんの経歴はざっとこんな感じ。

1981年、広島県生まれ。 東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。 公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事。

ウェルビーイングについて日本を代表する人だといっていいのではないか。

きっかけ

なんでこの動画を見たのかちょこっとだけ書いておくと、ぼくは千日回峰行を満行した塩沼亮潤大阿闍梨を尊敬しているので、彼の出てくる動画を片っ端から見ていて、そうしたらこれにぶつかったのである。

これは「グロービス」という動画学習サイトが主催したビジネスパーソン向けのシンポジウムの分科会だそうで、テーマがウェルビーイングだった。そこにぼくのお目当ての塩沼さんが登壇していて、石川さんも出ていたのだった。

塩沼さんはもちろんとして、登壇者全員の話が良かったのだが、中でも石川さんの話が強烈だった。かれは、現在、わかっていることだけを「自分の意見ではなくてデータ」として淡々と教えてくれた。

なお、この動画は昨年の3月に撮られたものなので、1年と数か月前の情報である。これを読んでいる人の中にはもしかすると「子どもの幸福度?そんなこと知っているよ。常識だよ・・」と思う人もいるかもしれないけど、ぼくは知らなかったのでとても驚いたし、知らない人もいるんじゃないかと思って書いている。では、石川さんが語った内容をざっとまとめてみよう。

GDPとHDI

まず、世界各国の発展度合いを探る指標には主に2つあって、

GDP(国内総生産)
HDI(人間開発指数)

の2つなのだそうだ。GDPは言わずと知れたアレであり、生産者の立場から「どれだけの付加価値を生み出したか」を測るアレである。

対して、HDIはヒューマン・ディベロップメント・インデックスの略語で、生活者の立場から国民の豊かさや幸福度を測る指標なのだそうだ。簡単に言えばウェルビーイングを測る指標であり、国連では1990年から導入されていて、すでに30年の歴史がある。

大事なのは教育年数

このHDIは3つの要素からなっている。それが

健康(平均寿命)、教育(平均教育年数)、収入(≒GDP)

なんだそうである。そして、3つの中でもっとも重要なのは教育なのだそうだ。

石川さんいわく、教育の話をするとすぐに質の話になってしまうけど、教育の質は国ごとに大きな隔たりがあって、カンタンに比べられない。しかし、教育年数だけを単純比較すると、その国の平均教育年数が伸びれば伸びるほど平均寿命が延びるというわかりやすい相関関係にあるのだという。

質うんぬん以前にとにかく年数なんだと。

そして、教育年数は、収入とも相互の因果関係がある(高収入な家庭の子どもは教育年数が長いし、教育年数が長いほど収入が上がる)。

なので幸福度に一番関係するのはまずは教育年数である。日本では大学進学率が低すぎ、修士博士人材が育っていない。それが過去30年の停滞を招いているというのが一般的な認識・・というふうに語っていた。

ぼく流に言い換えるなら、日本社会が徐々にマイルドヤンキー化しつつあるということになるんだけれども。石川さん的には、マクロ政策としては教育年数を伸ばすのが極めて重要なのだそうだ。

子どもたちがヤバい

ただし、大事なのはここからである。

日本の幸福度ランキングは低いけど、とはいえ、過去15年間、成人の幸福度はほとんど変化していないのだそうだ。

ところが、子ども達のウェルビーイング度は悪化の一途をたどっており、OECDでみると日本とイギリスが悪化を続けている。

そして、イギリスと日本では子供たちの幸福度低下の原因が異なっていて、イギリスは学校の問題で、日本は学校以外の問題だということまでわかっていると語っていた。

さらに日本においては、幸福度が著しく低下している未成年のグループが2つあって、それが

・女の子
・社会経済的に恵まれた子どもたち

なのだという。恵まれていない子どもじゃないくて、恵まれている子供のほうが低下している。たしかに、マイルドヤンキーは絆が強くて、しあわせそうですよね。

悪化の原因

女の子の幸福度の悪化がいちじるしいのは、コロナ渦で女子高生の自殺率が急増したごとく、現代の日本社会においては、女の子が自尊心や自己効力感を持てていないことに原因があると石川さんは指摘していた。

ただし、社会経済的に恵まれた子どもたちの幸福度がなぜ悪化しているのかははっきりしておらず、仮説が2つあるのだそうだ。

仮説1.めぐまれた子どもたちは学校の外での競争が激しい

人間は、協調関係に置かれると幸福度が上がり、競争関係に身を置くと幸福度が落ちるのだそうで、習い事とかお受験とかそういうのが原因ではないかという説。

仮説2.恵まれた環境に依存

すばらしい環境で育っていても、そこに依存してしまうと、ほかに行ったときに居心地が悪くなる場合があるのだそうで、あまりにも居心地のいい場所から他の場所に行ったときにウェルビーイング度が下がっているのではないかという説

この2つだという。

対策

対策としては、個人レベルでは「好奇心とおもてなし」に尽きるのだそうだ。損得抜きのおもてなしがあれば関係性は勝手に良くなるというのは、はグローバルに認められている事実なのだそうである。

日本はいろんな国と比較して、家族以外の人たちとの関係性が極めて薄く、困った時に手を差し伸べ合うところが弱い。だから、社会全体としてみた場合は居場所をたくさん作ることに尽きる。多様な価値観に触れると希望や自信が感じられやすくなる

と語っていた。詳しくは動画を見てください。

わたくしが原因です

最後に個人的な話をしておくと、つい先週のnoteにも書いたんだけど

困っている女子中学生を無視した話

あれがまさに日本の子どものウェルビーイングを下げているダメな大人の典型的な例だといえる。あれを書いたときにはまさかこんな羽目に陥るとは思っていなかったけど、書いてしまったものはしょうがないので

わたくしが原因です

というしかないが、ぼく自身は認知症の親の世話で手いっぱいで、子どもたちのことまで考えが及んでいなかった。

とはいえ、高齢者のことで手いっぱいになっているのは日本全体がそうであり、ウチの近所でも3日に1回は行方不明の高齢者を探す市役所のPAが流れている。

そして、これからますます高齢者中心の社会になっていかざるを得ないのは明らかなのだが、石川さんも言ってたけど、

大人が希望を持っていなければ割を食うのは子ども

である。子どもたちがどんどん割を食っているという点については、とりあえず問題意識としては持っておかなければマズいと思ったので書いてみました。そのうえで、個人的にどうするか?というと、結論は先週と同じになるのですが、フーテンの寅次郎をめざしてがんばります!

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