見出し画像

こういうひとが報われない社会は終わっている

ERとICUは似たようなもんだと思い込んでいたけど、かなりちがうみたいだ。簡単にいえば、ERは外来のきわどい人に、ICUは入院中のきわどい人に対応するのだとヤフー知恵袋に書いてあった。まあ、きわどい点は同じだけど。

昨晩NHKスペシャルで「看護師たちの限界線〜密着 新型コロナ集中治療室〜」というのを見た。新型コロナ病棟のICUを担当している看護師の方々が心身ともに限界にきているという内容で、5か月間にわたって密着取材したものだ。

取材先は、東京女子医大である。2007年に家族がここで手術を受けて入院していたので、ぼくは毎日通っていた。新宿で大江戸線に乗りかえて、若松河田駅で下車すると医大は目の前にみえる。その風景がテレビに映ってなつかしい。

朝と夕方と二度通ったので、会社に遅刻してよく睨まれていた。そういえば、ぼくは、だれかが入院するとかならず朝夕2回通うくせがある。2倍かよえば状態が良くなるのではないかというオカルト的なのぞみがうっすらとあるのだが、現実には、ぼくが何度通おうが関係ない。

点滴で動ける範囲でよくそとにでていた。エレベーターをおりたところがERの搬送口にあたり、そこでぶらぶらと会話することが多かった。

すると、ある日の午後、救急車がつぎつぎにとびこんできたのである。渋谷の温泉施設でガス爆発があったのだとあとで聞いた。女子医大にはたしか4人運ばれてきたそうで、そのうち何人かはなくなったらしい。

都心でなにかが起これば、一気に負担がかかる場所の一つがここなのだなあと実感した出来事だった。

いま新型ウイルスのパンデミックで女子医大にもグッと負担がかかっている。Covid病棟に、その中でもICUにとくに負担がかかっている。

1kgのガスマスクを着用し、全身防御で中に入れば5時間出てこれないそうだ。おむつをしている看護師さんもいる。仕事が終われば、コンビニ弁当を買ってビジネスホテルに帰り、ひたすら往復の日々。

それでボーナスは半分に減ったという(ここはボーナスゼロ騒動もありましたね)。番組では、かのじょのこころが折れ、退職を決意するまでの様子を追う。

政府は20万円の慰労金を支給したそうだが、もうちょっとなんとかならないものかなあ。全国の医療従事者でもあそこまで追い詰められているのは少数だろう。六本木の小料理屋で密談している余裕があるなら、せめてカネくらいどちゃっと刷ってあげてほしい。彼女にはビットコインを買っている余裕などないのである。

こういうひとが報われない社会は終わっている。社会とは国会議員のことではなくて、もちろんぼくもふくまれる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?