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男優先だった母親

母親に彼氏がいるという現状に、前向きになれなかったにゃりぺよ。
イライラを発散するように、高校では勉強と部活に打ち込みました。

あるとき、にゃりぺよは市で開催された演劇の大会に出ることになりました。
うれしいことに、この大会は母親が見に来てくれることになったのです。

にゃりぺよは部活仲間が考えてくれた台本を必死に覚えました。
母親が舞台を見たら、褒めてくれるかもしれないと思ったからです。

そして迎えた大会当日。
大会には幼稚園児から中学生、高校生、劇団を立ち上げた大人までエントリーしていました。

本番前、にゃりぺよが気持ちを落ち着かせようと会場内をぶらついていると…。
20代前半の男が、突然「にゃりぺよちゃん?」と声をかけてきました。

知らない人でしたが、直感的にわかりました。
男は「こんにちは、初めましてだけど、僕にゃりぺよちゃんのお母さんとお友達で…」と言うのです。

母親の2人目の彼氏は、にゃりぺよとそう歳の変わらない男でした。
こいつと顔を合わせたことにより、にゃりぺよは母親が大会に来た意味を知ります。

母親にとってにゃりぺよの頑張っていることは、男のついででしかなかったのです。

にゃりぺよが硬直していると、部活仲間が「誰?」と男を不審者扱いし、にゃりぺよを引っ張っていってくれました。
にゃりぺよは怒りでおかしくなりそうでしたが、深呼吸して舞台に臨みます。

舞台に立ったにゃりぺよは、ライトを浴びながら客席を見ました。
そこには確かに母親とさっきの男がくっついていたので、にゃりぺよはより遠くの時計を見て演技を続けることにしました。

自分たちの出番が終わって、にゃりぺよは結果発表まで控え室を出ませんでした。
母親にも会いたくないし、あの男にも会いたくありませんでした。

結果発表では、文句なしでにゃりぺよの高校が優勝しました。
にゃりぺよは塞ぎ込んでいたので他の参加者の舞台を見られませんでしたが、得票数はにゃりぺよたちがぶっちぎりでした。

大盛り上がりのにゃりぺよたちは、控え室外で打ち上げについて話すことに。
そのとき、男が再び近づいてきました。

「優勝おめでとう、演技上手だったね!僕らの劇団は毛色が違うからまあまあな結果だったけど…脚本家もあんまりよくないしね…にゃりぺよちゃんは、高校生なのにすごいね!」と言った男。

にゃりぺよは男の出ている舞台を見ていません。
でも、何言い訳してんだよと思いました。

単に実力の差。
にゃりぺよたちはお前みたいにデートにうつつを抜かしていない。
全国目指してるから、勉強のとき以外は必死に稽古に打ち込んだ。
お前が二股女と一緒にいるとき、にゃりぺよは頑張ってたんだよ。
お前より結果がよくて当然だろ。
人の母親を盗っていきやがって。

いろんな感情がこみあげる中、にゃりぺよは我慢しようと思いました。
すると男が「僕らの芝居はどうだったかな?」と、聞いてきました。

何ヘラヘラしてんだよ。
にゃりぺよは最低です。

「すごく下手でした、芝居やめたほうがいいですよ」
そう言って男の顔を見ず、にゃりぺよはその場を立ち去りました。

あのときはすいませんでした。
あのときは、にゃりぺよと母親の時間を奪ったのは、母親の彼氏たちだと信じて疑わなかった。

時間を作らなかったのは、にゃりぺよに興味がない母親だと受け入れられていたら、あんなこと言わなかったかもしれません。
でももう他人を恨むしかないから、今でも母親があなたと再婚したら親子の縁を切ろうと思っています。

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